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テクニカルレポート
2015.08.06
JTAGテストによる基板検査
コスト削減と品質向上に役立つ10のヒント(前編)
アンドールシステムサポート(株)

 

●重要となったテスト容易化設計DFT

 ICの発展により、テスト容易化設計DFT(Design For Test)は、製品を検査する段階におけるターゲット機能の制御性と観測性を向上するために重要性が増してきている。当初、検証は設計を検証するためのデバッグと製造上の不具合の検出を混同していた。設計の複雑さが増しても、それらを分離して取り組めばこれらのタスクはより扱いやすくなる。必要なことは設計のデバッグより前に、プロトタイプの製造不良を検出してクリアする方法である。製品の複雑さが増すので、量産時の早期段階で不具合を検出して修理することが重要となる。そのため、多くの工場ではいくつかのステップに分けて、複数のテスト手法を使用している。

 多くのテスト手法は、一般的に図3に示される製造工程となる。製造工程の中で、アセンブリと光学検査の後、インサーキットテストなどのストラクチュアルテストがファンクションテストの前に実行される。ストラクチュアルテストでは、はんだのオープン、ブリッジ、異部品の実装などを検出でき、一般的にストラクチュアルテストは迅速に準備できる。また、自動化されたソフトウェアにより、検出された不具合は基板上にテストポイントが十分にあれば、非常に迅速に故障診断ができる。

図3 製造現場における検査フローと検出できる欠陥と不良

4.ヒント③ インサーキットテストが抱える課題

  長年にわたり広く使用されてきたストラクチュアルテスト手法は、インサーキットテストであり、ファンクションテストの制限を補足するために開発された。インサーキットテストでは電気的信号が被検査基板にドライブされ、その結果がピン冶具のプローブにより読み取られる。それぞれの部品に対して、製造上の不具合を検出するためのテストベクタを用意することにより、部品レベルの故障診断が可能となる。このテスト手法は、DIPパッケージ部品とスルーホールがある非検査基板に対して非常に適していた。

●BGAパッケージに対応できない

  現在の生産ラインでは、狭ピッチでピン数が多い部品(QFP、CSP、FCAなど)が増え、テストアクセスは厳しく制限されるようになり、図4のようにBGAパッケージでは部品実装後にはプロービングできないため、テストに対応できない基板が増えている。

図4 インサーキットテストとBGAパッケージ部品のテスト

●非検査基板の信頼性低下とテストの信頼性

  インサーキットテスト手法では、最初にピン冶具が内部の回路ノードに対して機械的にロジカルにアクセスする。このロジックの侵入はバックドライブと呼ばれるが、この使用方法はデバイス固有の仕様を外れるため、被検査基板の品質、信頼性において悪影響を及ぼす可能性がある。

 インサーキットテストで使用するピン治具は、プローブの接触が完全ではないなどデメリットがある。現在はボードサイズがシュリンクされ、冶具のピンが弱くなり、テスト結果が信頼性に欠け、直接量産コストに響いてしまう。特に工場が冶具において、フラックスのビルドアップが発生する可能性のあるクリーンでないプロセスを採用している時は、信頼性の低下が著しい(表1)。

表1 インサーキットテストの特徴と課題

●インサーキットテストの優位性と将来性

  インサーキットテストのメリットであるテスト開発のスピードと故障診断機能により、ファンクションを実施する前にできるだけ多くの不具合を見つけることが望まれる。しかし、ストラクチュアルテストで不具合の原因を迅速に判断するためには、基板上に十分なテストポイントが必要となる。現在のように基板設計と部品実装の複雑さが増し、高いレベルの検査カバレッジを達成するために、新しいストラクチュアルテストを検討している企業が多くみられる。

 インサーキットテスタは、5,000ノード以上の能力をもつテスタでテスト範囲を補っている企業もあるが、ピン冶具はますます高価になり、高密度化が進む中で信頼性の問題も出ている。生産現場ではインサーキットテストの優位性があるにもかかわらず、基板の生産技術者はテストカバレッジが年々減少していることを実感している。

5.ヒント④ ファンクションテストが抱える課題

 ファンクションテストは、各企業、各製品ごと作る独自のテスト手法である。エレクトロニクス産業の初期の時代では、多くのシステムは単純な構成で部品点数も少なかった。そのため、テストプログラムを簡単に短期間で開発でき、システムの機能テストを実施することができた。

●検査範囲、合否判定が設計者に依存する

  今日でも多くの企業では、このようなシステム全体のファンクションテストを実施している。しかし、現在ではシステムが複雑になり、ファンクションテストの開発には長期間を必要とする。テストプログラムによる故障解析は、設計者に依存する独自のテスト手法であるため、検査範囲や合否判定基準は設計者に依存する部分が多く残る。また、ファンクションテストでは、故障診断が非常に難しく、故障している部品やピン番号を特定するには、設計者の情報と技術スキルが必要となる。

 このような理由により、簡易的なファンクションテストを基板レベルで実施するケースがある。検査範囲の細分化によって、テスト準備と故障診断を実行しやすくなる。しかし、今日の急激なICの集積度増加により、基板レベルのファンクションテストにおいても、システムレベルで遭遇する課題に直面している(図5)。

図5 基板の高密度化により複雑化するファンクションテスト

 

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