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テクニカルレポート
2026.07.22
実装品質を高めるセレクティブはんだ付け技術
― 背景から原理、課題解決、最新機能までをわかりやすく整理する ―
(株)弘輝テック

⑦導入事例にみるセレクティブの運用価値

セレクティブはんだ付けの導入は、品質・コスト・生産性の課題に対して極めて高い投資対効果(ROI)をもたらす。以下に、劇的な効果を発揮した4つの代表的な導入事例を紹介する。

 

(1) 車載基板における絶対的な品質安定化

1.導入前(Before)の課題

車載電子機器には高温・連続振動・15年の超長期寿命といった厳格な環境耐性が求められる。しかし、パワー系ECUなどに多い高熱容量部品に対し、従来のフロー工法では濡れ不足やブリッジが多発。手はんだ修正も作業者による品質のばらつきが大きく、高信頼性要求における最大のリスクとなっていた。

2. 選定・導入理由

ピンごとに接触時間、噴流波高、はんだ温度を個別最適化でき、周辺SMDへの不要な熱ストレスを遮断しつつ、ターゲットのリード部へ必要な熱量を集中的に投入できるため。

3.導入成果(After)

ブリッジ不良が1/10以下に激減し、スルーホール内の濡れ上がり不足はゼロを達成。冷熱サイクルや振動試験での不良が大幅に低減した。副次的効果として、手はんだ工程の削減により関連工数を30〜50%削減。品質確保のための必須工法として定着している。

 

(2) 大型産業機器基板における「熱容量差」の克服

 1.導入前(Before)の課題

電源・産機制御基板は、銅箔(GNDプレーン)が厚く端子も大きいため熱が逃げやすい。フロー工法では基板全体を過加熱してもスルーホールが濡れ上がらず、周辺部品がオーバーヒートするジレンマがあった。手はんだも加熱時間が長すぎ、基板炭化やランド剥離のリスクを伴っていた。

2.選定・導入理由

部品・部位単位での「接触時間設定」に加え、高熱容量部品に特化した「局所プリヒート機能」および「はんだ噴流量の動的制御」が極めて有効に作用するため。

3. 導入成果(After)

大型コネクタや厚銅端子のスルーホール濡れ上がり不足がほぼ皆無となった。条件出し(プロファイル構築)が容易になり、手はんだ作業時間は約1/3に短縮。ライン全体の直行率と歩留まりが劇的に改善した。

 

(3) 手はんだ工程の自動化による「技能継承・人手不足」の解消

1.導入前(Before)の課題

深刻な人手不足と熟練作業者の退職による「手はんだ技能の継承問題」が顕在化。手はんだは個人のスキルに依存するため作業時間が読めず、生産計画の立案や長期的な品質保証、さらには再教育や検査に関わるコストの増大が重荷となっていた。

2. 選定・導入理由

投入熱量、はんだ供給量、ピールバック速度などの全パラメータをデジタルプログラム化し、再現性を100%担保した「手はんだの完全代替自動化セル」を構築できるため。

3. 導入成果(After)

従来、人の手に頼っていたDIP(挿入)部品実装工程の80〜90%を自動化。作業者のスキルに関わらず、最高レベルの品質と一定のタクトタイムでの生産が可能となり、生産計画の精度が飛躍的に向上した。

 

(4) 高密度混載基板における実装歩留まりの限界突破

1.導入前(Before)の課題

回路の高密度化に伴い、DIP部品とSMDの距離が極めて狭小化。従来のフロー工法では保護マスク(パレット)を物理的に設計することが不可能だった。また、はんだこての侵入すら困難な「隣接する高背部品間の微細ピッチ部」の手はんだは、ブリッジを多発させる要因であった。

2.選定・導入理由

極小径ノズルによる1ピン単位のアプローチに加え、ノズルの長軸化によって高背部品の隙間へも干渉せずに狙い撃ちができるため。

3.導入成果(After)

ブリッジ不良が1/5〜1/10に低減。周辺SMDの再溶融リスクを排除し、ライン歩留まりは90%から99%以上へと大幅に向上した。物理的なマスク治具が不要(治具レス)なため、品種切り替え時の段取り時間はゼロ化している。

 

⑧まとめ: 未来と導入のポイント

セレクティブはんだ付けは、今後の10年で大きく姿を変えていく。装置はより高度に連携し、状況に応じて自律的に動作を調整する方向へ進むだろう。基板構造の多様化に合わせ、熱の扱い方や加熱プロセスはさらに柔軟性を増す。メンテナンスに関しても、作業者の負担を減らす仕組みが標準化されていくと考えられる。条件設定は従来の試行錯誤から、データを活用した効率的な方法へ移行する。装置同士の情報共有が進み、ライン全体で品質を維持する仕組みが一般化する。トレーサビリティやデータ管理の重要性は一段と高まり、運用面の要求も変化する。こうした流れの中で、セレクティブはんだ付けは“より扱いやすく、より安定した工法”へと成熟していく。導入にあたっては、将来の拡張性やデータ活用のしやすさが重要な視点となるだろう。

 

<参考文献>

1. エレクトロニクス実装技術 2024年 8月号 Vol.40  No.8

セレクティブフローにIH式予熱を新規搭載:(株)弘輝テック(第6章:新予熱方式)

2. (一社)日本電子回路工業会(JPCA)『プリント回路技術用語辞典』, 日本電子回路工業会 

3. 菅沼 克昭 監修:『次世代パワー半導体実装の要素技術と信頼性』, シーエムシー出版, 2016. 

4. (一社)エレクトロニクス実装学会(JIEP)ロードマップ委員会 編:『エレクトロニクス実装技術ロードマップ』, エレクトロニクス実装学会 

会社名
(株)弘輝テック
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