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テクニカルレポート
2026.07.22
実装品質を高めるセレクティブはんだ付け技術
― 背景から原理、課題解決、最新機能までをわかりやすく整理する ―
(株)弘輝テック

③セレクティブが解決する実装課題

高密度化・熱容量差・品質安定化・自動化の4つを軸に表1に整理した。

表1 セレクティブはんだ付けが解決する実装課題

 

④プロセスの基本ステップと条件設定

(1) セレクティブはんだ付けの基本プロセスフロー

高品質な局所接合を行うため、プロセスは以下のように厳密にシーケンス化されている。

・フラックス塗布(局所付着)

必要ポイントのみにピンポイント塗布し、SMDエリアへの飛散を防ぐ。

・プリヒート

赤外線などで基板・部品を温め、溶剤の揮発とフラックスの活性化を行う。

・噴流接触(はんだ付け)

溶融はんだの噴流にリードを接触させ、スルーホール内へ濡れ上がらせる。

・離脱(ピールバック)

はんだ槽または基板を移動させ、余分なはんだをちぎり切るように引き離す。

 

(2) 噴流接触と離脱(ピールバック)のダイナミクス

実装品質(ブリッジ・つらら防止、濡れ上がり)を左右する最大の鍵は、「接触時間」と「離脱動作」である。

1. 接触時間の最適化

実装品質(ブリッジ・つらら防止、濡れ上がり)を左右する最大の鍵は、「接触時間」と「離脱動作」である。

・接触時間が短すぎる場合

スルーホール内壁やリードへの熱伝達が不足し、「濡れ上がり不足(充填率低下)」を招く。また、はんだの凝集力が勝り、引き剥がし時にブリッジやつららが発生しやすくなる。

・接触時間が長すぎる場合

フラックスが熱分解(失活)して再酸化を招き、却って濡れ性が低下する。さらにランド(銅箔)が溶け出す「銅食われ」や周辺部品の熱破壊リスクが増大する。

2.離脱(ピールバック)の角度と速度

ノズルから基板を引き離す動作は、表面張力によって余分なはんだをノズル側へ引き戻すために重要である。

・傾斜離脱の効果

傾斜離脱は、狭ピッチ端子におけるブリッジ発生を抑制する理想的な方法である。基板やノズルに一定の傾斜角度(一般に3°〜7°)を持たせて斜めに引き剥がすことで、表面張力と自重のバランスが最適化され、はんだのキレが向上し、ブリッジが劇的に改善する。さらに、自重の影響を抜きにしても、傾斜方向へ表面張力を逃がすことができる点が傾斜離脱の本質である。

しかしながら、全面フロー槽では基板全体を一律に傾斜させる必要があり、コネクタなどの部品配置によっては傾斜を適用できないという制約がある。

当社のセレクティブ方式は、このような配置上の制約下でも離脱が可能な機能を備えており、ノズルの離脱動作を任意の斜め方向に設定できる。これにより、基板ごとの傾斜離脱と同等の効果を、部品単位で最適に再現するノズル離脱制御を実現している。

・離脱速度の調整

速度が速すぎると、はんだの粘性によりピン間にブリッジが引きちぎられずに残る。適切な「徐冷・徐動」の速度に同調させることで、理想的なフィレットを形成できる。

 

(3) 最初に押さえるべき「5大要素」

1.フラックス塗布量(多すぎず、少なすぎずの適量化)

少なすぎれば濡れ不足やブリッジを直発する。逆に多すぎると、予熱で揮発しきれなかった溶剤成分が溶融はんだ接触時に急激に気化(突沸)し、大量のはんだボール(飛散)やスルーホール内のボイド(空隙)を発生させる。

2.プリヒート条件(熱容量差への追従)

パワー系部品や多層基板(GNDプレーン)は熱が逃げやすく、加熱不足(アンダーヒート)に陥りやすい。はんだ接触時の熱ドロップを防ぐため、はんだ付け直前の基板表面温度をターゲット(例:100℃)に到達させるプロファイル設計が必要である。

3.噴流波高とノズル間距離(ギャップ)の一定維持

はんだの波高と基板面との距離(Z軸ギャップ)の管理は、接触面積を一定にするために必須である。ポンプの回転数のばらつきや槽内の液面低下(ドロス発生など)で噴流高さが変動すると、接触深さが変わり、未はんだや過剰はんだの原因となる。

4.部品・部位ごとの接触時間の個別設定

均一処理のフローと異なり、ピンごとに時間を個別設定できる。細い信号ピンは1.0秒、太い電源ターミナルや大容量コネクタは3.0〜5.0秒など、部品の熱容量や基板のサーマルリリーフ(熱逃げ防止設計)の有無を考慮した最適値の割り当てが成功の近道である。

5.ノズルの清浄度と濡れ性の維持

噴流ノズルは、外壁に均一にはんだが「濡れる」ことで安定した一方向オーバーフロー波形を作る。酸化物(ドロス)などの付着により不濡れが生じると、噴流が脈動・傾斜し、狙ったピンに正確に当たらなくなるため、定期的な自動・手動クリーニングが不可欠である。

 

⑤設備メンテナンスと安定稼働へのアプローチ

セレクティブはんだ付けにおいて、噴流の安定性や温度制御の精度は装置のメンテナンス状態に大きく依存する。本章では、安定稼働に不可欠な保全項目を整理するとともに、近年の装置技術による自動化・省力化について解説する。

 

(1) ノズルのメンテナンスと濡れ性管理

円筒形ノズルは、噴流を均一にオーバーフローさせるため、はんだと濡れる特殊な素材・表面処理が施されている。しかし、フラックス炭化物や酸化物(ドロス)が付着して濡れ性が低下すると、噴流が傾くなどの乱れが生じ、未はんだやブリッジに直結する。

・主な保全内容

専用のクリーナー液を用いた化学的なノズル表面の酸化物除去、内径部の詰まり確認、摩耗(侵食)点検。

・点検の兆候

噴流立ち上がりのタイムラグ、波高や形状の変動。

 

(2) 槽内清掃とドロス(酸化物)除去

溶融はんだが大気やフラックス残渣と接触して発生するドロスは、はんだ槽内の流動性を低下させ、ノズル詰まりや異常摩耗を引き起こす。

・主な保全内容

定期的な槽内およびポンプケーシング内のドロス掻き出し。

・点検の兆候

インペラ(羽根車)式ポンプにおいて、一定の波高を維持するために必要な「モータ回転数」が上昇してきた場合は、ポンプケーシング内や回転軸へのドロス噛み込みのサインであり、早期のオーバーホールが必要となる。

 

(3) フラクサ(塗布ノズル)の詰まり防止

スプレーやドロップジェット方式のノズルは微細な開口部を持つため、フラックスの乾燥固着や微粒子詰まりに非常にデリケートである。

・主な保全内容

ノズル先端の定期清掃、溶剤(アルコールなど)による内部洗浄、塗布形状(スプレーパターンの幅やドットの直進性)の定期確認。特にスプレー式は、Oリングなど摺動部やニードルの摩耗の点検。

 

(4) 噴流ポンプ・ヒータの稼働点検

安定した熱量供給と確実な動力を維持するための心臓部の点検である。

・ポンプ駆動部

モータ軸の振れやベアリングの異音の有無、インペラの摩耗チェック。

・ヒータブロック

断線予兆の検知や、熱電対のズレによる実温度と管理温度の乖離がないかの確認。

 

(5) 装置技術で実現する「予防保全」の自動化

手離れの良さと安定稼働を両立するため、最新装置では保全を「装置自身が自動で行う機能」が標準化されつつある。

・自動ノズルクリーニング&クリーナー液塗布

一定サイクルごとにノズルへクリーナー液をブラシで自動塗布し、ノズルの濡れ性を最適に保つ。

会社名
(株)弘輝テック
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