はじめに
今回、原稿執筆のお話をいただいて、当社が行っている様々な取り組みの中から何を紹介すべきか悩んだ結果、大規模メモリや高速グラフィック処理など、適用できるアプリケーションの出現により、国内海外問わず量産へ向けての研究開発が急ピッチに加速しているTSV(Through Silicon Via)を用いた3DIC関連で、2009年に国家プロジェクトへ採用されて開発した、3次元実装に向けた新しい考え方の属性『モジュール』と、システムの高機能化に伴いデバイスごとの解析では現象を把握できなくなっており様々なデバイスをモジュールとして統合して一元管理できるツールが重要になってきている事から、チップ・パッケージ・ボード相互設計のプラットフォームに向けた当社の取り組みを紹介する。
なお、我々(株)ファーストは、CAD(Computer Aided Design)/CAM(Computer Aided Manufacturing)ツールの開発・販売を通じて、24年間エレクトロニクス産業に貢献し続けている企業である。
図1 融合型オールインワン・ツール『START』
図2 開発の変遷
融合型オールインワン・ツール
我々の開発している『START』(図1)は、プリント配線板・フレキシブル基板・パッケージ・フラットパネルディスプレイ・マスク製造など、幅広い業界で求められる設計要素をシングルシートで、かつワンパッケージのソフトで対応でき、決められた手順に沿ったCADとしての使用だけでなく、データベース(SSF:START Stack Format)の公開により、独自技術や設計ノウハウを追加応用できるため汎用性が高いという特徴をもった融合型オールインワン・ツールである。特に、データの応用性を重視したツールであるため、プロを自負した技術者に高く評価されている。
また1991年に、プリント配線板のCADとしてリリース以来、OS(Operating System)の変更、CAM要素の追加、リニューアルに相当するデータベースの変更を幾度か行い、昨今の先端技術である3次元実装モジュールへ対応するなど、リリース開始から21年の歴史をもっている。当社は、『ソフトウェアは人と同じで、経験や知識の塊である』という理念のもと、リソースを途中で分断し新たな製品としてリリースするという事を行わず、常にワンパッケージで現在に至っている(図2)。
今までの3次元実装
図3 レイヤ構成と誘電体形状
チップの積層や内層に部品を配置するなど、製造や実装の技術が急速に進歩している。それらのデータを、3次元だからといって機構設計で使用されている3次元CADを用いてデータ作成を行うのは、配線作業の効率や製造用データの出力を考慮すると望ましくない。電気系CADはその点が特化されているが、3次元の要素をもっていない。したがって、現状は個々の技術者の工夫により電気系CADの能力を駆使し、データ作成を行っている。そこで技術の進歩に対応するため、2次元のデータベース構造にレイヤの積み上げ順番と厚み情報を加えた、2.5次元の方向で各社開発が進んでいる。
当社の『START』も同様の方向で開発を進めているが、独特の考え方を取り入れているので、そのいくつかを紹介する。
まずレイヤの構成を作成するにあたり、単純に導体→誘電体の並び順だけでなく、接着層やレジスト層、キャビティ構造の対応に向け誘電体の形状を詳細に定義するなど、複雑なレイヤ構成を組むことが可能である(図3)。
- 会社名
- (株)ファースト
- 所在地
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