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テクニカルレポート
2016.07.07
『地球環境』を守るための施策を探る
NPO法人 日本環境技術推進機構 横浜支部

 

写真1:地球環境を守る必要性を喚起した書籍、レイチェル・カーソン『沈黙の春』(新潮文庫版)

地球環境を守る必要性

  生物学者レイチェル・カーソンは、春になっても鳥の鳴き声が聞こえなくなった現状をみて、その原因はDDTなどの農薬や化学薬品にあるのではないかと疑い、今から50年前の1962年に『沈黙の春』という本を出版した(写真1)。この書籍は人々にDDTなどの農薬によって地球環境が蝕ばまれ、傷ついていることを気付かせるものであった。大量生産される化学物質を気にもせず使って、しかも多量に散布される農薬や化学肥料によって、周辺の環境に影響を及ぼしていることに気付かずにいた。散布される農薬もその効能は100%ではなく、多くの農薬が河川に流れ、環境を汚していたのみならず、土地も弱り、農作物にも影響を及ぼした。

 春になっても鳥の鳴き声が聞こえてこなくなったのはなぜなのか、という素朴な疑問は、大きな警鐘を鳴らすものであった。まさにこの書籍は人々に良い環境を維持するにはどうしたら良いかということを示し、あるべき方向に持っていくことが必要との考えとなった1)。

 1960年代から始まった環境問題の指摘は、1970年代になって地球規模の問題となり、1972年にスウェーデンのストックホルムに113カ国が参集しての政府間の環境関係の国際会議となった。

 これが国連人間環境会議 (別名:ストックホルム会議)で、『かけがえのない地球(Only One Earth)』という会議テーマで議論された。地球は一つしかなく、そのかけがえのない地球を今後、どうするかといった観点から議論された会議となった。そして、人類共通の課題となってきた地球環境問題について、

 ①26項目の原則からなる『人間環境宣言』
 ②109の勧告からなる『環境国際行動計画』

などが検討された。環境問題が地球規模で検討されといってもよいかと思う。

 モアイ像で有名な、かつて森林で囲まれたイースター島は、人口増に伴って燃料にするために木を伐採して、挙句の果てには島から脱出するための船を作る木材もなかったとも言われる。そして争いとなり、破綻する結果となった。

 今後の地球は2048年には90億人の人口となることが予測され、エネルギー、食料などの供給問題を抱え込みイースター島のようにならないように“かけがえのない地球”を大事にしなければならない。そのためにも地球環境を守っていく必要がある。

地球環境を守るための有害物質管理

  ストックホルム会議から20年後の1992年になるとブラジルのリオ・デ・ジャネイロで『環境と開発に関する国連会議』が開催され、この時に、

 ①温暖化防止のための気候変動枠組条約の署名
 ②生物多様性条約の署名
 ③環境と開発に関するリオ宣言
 ④アジェンダ21
 ⑤森林原則声明

などが合意された。

 1990年代になると年々、増加する廃棄電気・電子機器の処理問題があがってEU内で議論されるようになった。その解決手段として電気・電子機器の廃棄に関する指令(WEEE指令)の策定であった。WEEE指令として1998年に草案が策定され議論された。廃棄する電気・電子機器をいかにしてリサイクルするかであった。リサイクルするプラスチック、部品などに有害物質が含有していると問題であるということから6物質(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニル(PBB)、ポリ臭化ジィフェニルエーテル(PBDE))の使用制限となった。これがWEEE指令から切り離されたRoHS指令である。

 一方、リオ・デ・ジャネイロ会議の10年後の2002年8月には、『持続可能な開発に関する世界首脳会議(WSSD)』(ヨハネスブルグ・サミット)を開催し、この会議(別名 リオ+10)で化学品の悪影響を2020年までに最小化をすることや化学物質管理のための戦略的行動計画(SAICM)などを策定した。

 2005年8月にはWEEE指令が、2006年7月にはRoHS指令が、それぞれ施行され、EU加盟国(当時は25カ国、現在、27カ国)で実施された。このRoHS指令は多くの国に影響を及ぼすまでになり、化学物質管理のデファクトスタンダード的な扱いになった。

 その後、電気・電子機器のみに対象とするのではなく、全分野で、全ての物質を対象とする物質の管理を主体とするREACH規則が施行されるようになった。特に高懸念物質が0.1%以上含有した場合には情報を開示しなければならないとする物質管理を重視した内容となった。『リオ+10』で決定した化学品の悪影響を2020年までに最小化する大きな目標があるがゆえに、REACH規則は2018年を最終年度として対策をとっているといえる。

 さて、1992年にリオ・デ・ジャネイロで開催された『環境と開発に関する国連会議』は別名『地球サミット』ともいわれるもので、この会議から今年で20年が経過することになる。

 2012年6月に、同じくリオ・デ・ジャネイロにて、持続可能な開発会議(リオ+20)が開催される予定で、『グリーンエコノミー』と『持続可能な開発ための制度的枠組み』をテーマとして議論されることになっている。ここでどのような内容が検討され、どのような環境対応の結論となっていくかが大きな関心事でもある。

環境法規制で地球環境を守る

  地球環境を守るには、法律で規制することが重要との認識となり、主に欧州からその必要性が叫ばれ、アドバルーンがあがり、次第に世界的に認知されるようになった。ここでEUと中国の最近の環境法規制の主な動きについて紹介する1) 2)。

1.EUの改正RoHS指令

 EUのRoHS指令は、2006年7月1日から施行され、4年ごとに改正される仕組みとなっており、改正RoHS指令が検討された。

 この『改正RoHS指令』は対象物質を多くすることや対象範囲を増やすことが改定の趣旨であったために『拡大RoHS指令』とも言われている。なお、欧米ではこの改正RoHSに関しては『RoHS2』とも呼称されている。

 現行のRoHS指令は6物質(『鉛』『水銀』『カドミウム』『六価クロム』『ポリ臭素化ビフェニル(PBB)』『ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)』)が規制の対象となっているが、この6物質以外の規制物質の追加案が検討され、多くの物質が候補としてあげられた3)。 最終的には、4物質(HBCD、DHEP、BBP、DBP)が候補となり、2008年12月3日に改正案が公表された4)。

 また、RoHS指令の対象とするカテゴリーに関しては、医療機器のカテゴリー8と監視・制御機器のカテゴリー9は、今まではRoHS指令の対象ではなく、除外されていた(電気・電子機器の廃棄指令のWEEE指令は全カテゴリーが対象となっていたので混同しないように注意が必要)。

 2008年12月に公表された改正案としてカテゴリー8(医療機器)とカテゴリー9(監視・制御機器)について対象とするRoHS指令の拡大案が公表され、さらにEUのRoHS指令では、マークの表示義務はないが、検討された改正RoHS指令では、CEマークを貼付することが提案された。

 

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