⑥ハイブリッド検査で検査ファーストを完成させる
JTAGテストは万能ではない。抵抗・コンデンサの定数測定、電源・アナログ回路の検査、BGAはんだ接合内のボイド検出などは不得手であり、ICT、AOI、X線検査、HALT試験などを組み合わせた「ハイブリッド検査」で補完するのが基本である。
最近の産業機器やIoT機器の実装基板は、BGA部品を中心としたデジタル回路と、チップ部品や電源ICを中心としたアナログ回路で構成されており、製品により両者の比率は大きく異なる(図7)。

図7 ハイブリッド検査における検査範囲の分担例
検査ファーストとは、これらの検査手段の守備範囲を設計初期に明確化し、カバレッジを抜け漏れなく重ね合わせるテストアーキテクチャを作り込むことにほかならない。
6.1 JTAGテスト × フライングプローブテスタ
デジタル回路の検査に強いがアナログ回路を苦手とするTAGテストと、アナログ回路に強いがBGA下部のはんだ接合部を苦手とするフライングプローブテスタは、まさに最高の相互補完関係にある。
欧米ではすでに両者を組み合わせたハイブリッドテスト装置が一般的な検査手法の1つとなっており、国内でも導入が進みつつある。フライングプローブテスタが実行する検査項目の1つとしてJTAGテストを自動実行する構成にすれば、単一の装置と単一の合否判定で、BGA実装基板全体の電気的実装保証が可能になる。
検査治具を必要とせず、試作から量産、保守、市場不具合品の故障解析まで、基板のライフサイクル全域にメリットが波及する。詳細は、本誌2023年7月号を参照していただきたい。
6.2 JTAGテスト × 3次元X線検査
X線CT検査は、BGAやCSPのはんだ接合部のボイド、微細クラックを非破壊で可視化・定量化できる強力な手法である。
一方、撮影時間が長く全数検査には不向きであり、長時間の撮影はFPGA/メモリへのX線被ばくも課題となる。
ここで、前段でJTAGテストを全数実行してオープン/ショート/ボンディングワイヤ断線を短時間で検出し、後段でJTAGがNG判定した箇所や統計的に不良頻度が高いピンに絞ってX線CTを行う、という二段構えの検査工程を組むと効果的である。
JTAGテストでは電気的に導通しているがボイドを抱えた「NG予備軍」を、CTで定量的に拾い上げる役割分担が明確になり、検査時間と品質のバランスが最適化される。詳細は、本誌2019年6月号を参照していただきたい。
6.3 JTAGテスト × 環境試験・高加速度試験
JTAGテストは環境試験装置とも組み合わせ可能な数少ない電気検査手法である。
高加速度試験 HALT試験装置に製品基板を搭載し、振動と温度サイクルを与えながら連続的にJTAGテストを実行すれば、実動作下で発生する瞬断や接触不良をリアルタイムに検出できる。
実証実験した結果では、30分ほどでBGAのクラックが発生して、製品の弱点を見つけることができた。HALT/HASSとJTAGテストの組み合わせは、品質保証用のデイジーチェーン部品を用いた検査基板を作る必要がなく、製品基板そのもので、はんだ接合部の信頼性評価を行えるため、設計・量産の両段階で価値が高い。詳細は、本誌2020年9月号を参照していただきたい。
⑦まとめ
BGA、CSP、部品内蔵基板、チップレットが当たり前となった現在、高密度実装に対して物理プローブだけで実装保証を行うことが困難になった。
検査をプロセスの最後に付け足すのではなく、検査手段を先に決めて設計を構築する「検査ファースト」こそが、高密度実装時代における品質、コスト、スピード、そしてCRAに代表されるセキュリティ適合の4つの要求を同時に満たす有力な選択肢となる。
その中核にある検査手法がJTAGテスト(バウンダリスキャン)であり、電気的等価性の原則に基づいてテスト容易化設計を進めれば、実装不良の検出能力は飛躍的に向上する。
検査は、単に不良品を見つける手段ではない。ロスコストを削減し、製造ラインへのフィードバックを通じて「不良を作らないモノづくり」を実現する、「検査=利益を生み出すプロセス」である。
エレクトロニクス実装の現場に求められるのは、検査のための設計という発想を組織の当たり前にし、設計・生産技術・検査の三者が同じ指標を共有することである。そのための最初の一歩として、次期新機種の設計レビューから、JTAGテストを活用した「検査ファースト」の設計ルールを必須の設計レビューとして加えていただきたい。検査ファーストは、明日からでも始められる現実的な改革である。
- 会社名
- アンドールシステムサポート(株)
- 所在地
- 神奈川県川崎市幸区堀川町66-2

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