図11 LEDランプ分解写真
ICで発生した熱は、なんらかの放熱経路を経て空気や機器筐体まで逃がしてやらなければならない。放熱経路の各所には熱抵抗があるが、それらを合計したトータル熱抵抗に比例してICチップの温度が上がる。LED照明の場合、チップの発熱量は1個1W程度であるが、これをダウンライト(電球型ランプ)の場合は数個、蛍光灯タイプの場合は百個以上、プリント配線板に並べて実装する。LED照明では発生した熱は最終的にはヒートシンクから大気中に放熱される。LEDランプの外面はほとんどヒートシンクで占められている(図11)。放熱経路のトータル熱抵抗中もっとも大きいのがLEDを搭載するプリント配線板の熱抵抗なのである。そこでプリント配線板には通常のプリント配線板にくらべて格段に熱抵抗の小さいものが要求される。それが放熱基板である。
LED照明用放熱基板には、通常の樹脂基板、メタルベース(またはメタルコア)基板やセラミック基板が用いられる。熱伝導性、対候性など特性面ではセラミック基板がもっともすぐれているが、加工性が悪い、コストが高いという欠点がある。プリント配線板用材料として一般的なFR-4(ガラス布エポキシ樹脂基板)やCEM-3(ガラス不織布エポキシ樹脂基板)は加工性もよく低コストであるが熱伝導性がよくないため、FR-4やCEM-3の標準材料は放熱基板としては不適とされている。そこで、加工性もよく、熱伝導性の高い基板としてメタルベース(またはメタルコア)基板が広く採用されている。メタルベース基板は通常のプリント板の下面に放熱用の金属板(アルミ板など)を貼った基板、メタルコア基板はプリント板の内部に金属板を入れた基板である(図12)。メタルベース・メタルコアプリント板は熱伝導率の高い金属板を通して放熱するので、セラミック基板並みに低い熱抵抗で放熱することができる。ただし、メタルベース、メタルコア用金属シートとプリント配線板の導体とは電気的に絶縁しなければならない。通常の絶縁層仕様ではこの熱抵抗が大きくなりすぎるため、樹脂層の厚さをぎりぎり薄くする(通常0.08?0.1mm、薄いもので0.02mm)、樹脂層に熱伝導率の高いフィラー(充填用微粒子)を入れて熱抵抗を下げるなどの対策が採られる。樹脂層をここまで薄くする場合は絶縁信頼性の確保が重要となろう。熱伝導性フィラーとしては熱伝導率が、けた違いに高い窒化アルミが主として使われる。
汎用材のFR-4やCEM-3で熱抵抗を下げる方法として、サーマルビアを介してプリント配線板のベタ層に放熱する手法(図12)も広く利用される。フィラー入り樹脂を用いて熱伝導率を2倍以上に高めたFR-4材、CEM-3材も市販されている。
図12 メタルベース・メタルコアプリント板とサーマルビア
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