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テクニカルレポート
2023.04.19
プリント配線板技術:世界の電子回路工業会/協会の現状
特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構
青木 正光

①はじめに

産業界ごとに工業会や協会が存在する。電子回路関係の工業会は、日本では「一般社団法人 日本電子回路工業会」(JPCA)が存在する。今回は、世界に存在する電子回路に関する工業会/協会の現状について国別・地区別に紹介する。

 

②日本

日本の電子回路工業会については少し詳細に解説することにし、日本の電子回路工業界の歩みについても紹介する。

1. JPCAとは

JPCAは、初期のころは日本プリント回路工業会と呼称しており、英語名はJapan Printed Circuit Associationとなり、おのおのの頭文字をとって“JPCA”の名前で広く知られている。

任意団体として1962年に設立されたが、当時使用されていた「印刷配線板」(Printed Wiring Board)や「プリント配線板」(Printed Wiring Board)の用語を使わないで基板に部品などが実装された「プリント回路」(Printed Circuit)の用語を使って「日本プリント回路工業会」の名前にしている点である。つまり、設立当初から業界を広く捉えて活動を開始している。

2005年には、工業会の名称を「日本電子回路工業会」と改め、英語名は“Japan Electronics Packaging and Circuits Association”となり、守備範囲を広げていき、略号は同じ“JPCA”を使用し、今日に至っている。

 

2. JPCAの沿革

1962年6月に会員38社が集まり、任意団体「日本プリント回路工業会」として発足した。発足後、研修会、セミナー、JPCA Showの開催、団体規格や国際規格の制定、各種統計整備、動向調査の実施などの諸事業を推進してきた。

1977年11月に中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業の作成主体となるため通商産業省大臣(現・経済産業大臣)より社団法人設立許可を受けた。2005年7月には経済産業大臣から名称変更が認可され、「社団法人 日本電子回路工業会」となり、2013年4月には、「一般社団法人 日本電子回路工業会」となった。

なお、団体名称である電子回路は、2007(平成19)年11月に公示された「日本標準産業分類」では、中分類28「電子部品・デバイス・電子回路製造業」、小分類「284電子回路製造業」、細分類「2841電子回路基板製造業、2842電子回路実装基板製造業」として位置付けられ、名実ともに日本を代表する産業となっている。JPCAの主な略史を示すと表1のようになる。

表1 JPCA年表

 

3. 電子回路関連団体

JPCAは、電子回路関連団体である「電子回路企業年金基金」「電子回路健康保険組合」及び「一般社団法人エレクトロニクス実装学会」と連携を密にし、電子回路産業全体の地位向上に寄与している。

1986年にJPCAが「プリント回路学会(JIPC=Japan Institute of Printed Circuit)」を設立し、1998年「社団法人 ハイブリッドマイクロエレクトロニクス協会(SHM=Society for Hybrid Microelectronics)」と合併し、改称、現在の一般社団法人エレクトロニクス実装学会(JIEP=Japan Institute of Electronics Packaging)が誕生した。

エレクトロニクス実装技術は、電気・電子、情報処理、機械、化学、電気化学、信頼性工学など多岐にわたる技術領域から成り立っている。このような専門領域及び学術領域を融合し「新しい価値の創造」を目指すため自由闊達に研究内容を発表・ディスカッションしあえる場を提供している。

 

4. 日本の電子回路基板業界の歩み

家電製品の登場により、多くの配線板が必要となり、いかにして効率良く配線するかが課題となってきた。当時、配線は写真1に示すように「ジャングル配線」ともいわれ、部品と部品とを電線でつなぐ方式で、配線が多いため誤配線が多発した時代であった。

写真1 ジャングル配線

 

そこで登場したのが銅張積層板を使って銅箔をエッチング加工して回路形成する「印刷配線板」であった。

なお、方式は異なるが、古くは1936年に宮田喜之助がメタリコン吹き付け配線法の特許(特許第119384号)を出願し、この方式で生産した配線板は4球ラジオに使用された。これが日本で一番古い配線板の実用例である。

初期の頃は、「銅張積層板」は「銅貼積層板」と呼称されていた。銅を基材に貼り付けるという意味では、「銅貼積層板」が的を射た表現ではないかと思う。1958年に発行された東芝レビューに掲載された論文には、「プリン卜配線(1)<東芝銅貼テコライト積層板を中心にして>」、同年、第5回大河内賞の技術賞において「プリント配線用銅貼張積層板の研究と実施」の題名で東京芝浦電気が受賞している。いずれも「銅貼」の用語が使用されている。

  なぜ、「銅貼積層板」が「銅張積層板」になったかというと、1963年に策定された印刷回路用銅張積層板JIS C-6931

の原案を出す時に誤って「銅貼」を「銅張」としたために、以降、銅張積層板の呼称になったという。面白い裏話である。

  日本初のトランジスターラジオを商品化したのは、東京通信工業(現 ソニー)で1955年であった。そして、このラジオに「印刷配線板」が採用された。

「印刷配線板」は、その後、「プリント配線板」と呼称され、最近では「電子回路基板」と呼称されるようになった。

1950年から70年間に登場した「電子回路基板」の主な技術/市場動向を体系化すると表2-1、表2-2のようになる。1950年代は紙フェノール銅張積層板が、1960年代にはガラスエポキシ銅張積層板などが登場し、それ以降は、ガラスエポキシ銅張積層板を使った多層プリント配線板へと進展し、部品内蔵プリント配線板なども登場し進化していった。 1)

表2-1 日本の電子回路基板業界の歩み

 

表2-2 日本の電子回路基板業界の歩み

 

  次に日本以外の工業会/協会は米国、欧州、インド、中国、台湾、香港、韓国、タイなどに存在する。それらの概要を次に紹介する。

会社名
特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構
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