1970年代の後半になるとコンピュータが導入され、デザイン・試作部門で用いられたCADのことを『デザインCAD(Design CAD)』と称した。当時の一般的な自動車デザインの主要工程を図5に示す。
図5 従来のデザイン工程
まず、クレイモデルの測定データをデザインCADに渡す。次に、3次元グラフィックス上で、デザイナーの意図したモデル形状作成を行うため、キャラクタライン、面創成、フェアリング(形を整えること)を重ねる。そして、デザイン部門の3次元ソリッドCAD/CAE/CAM/CAT/Networkシステムでモデル作成したデータを基にして、同時5軸制御のNC工作機械で1分の1クレイモデルを作成する。
5.デザイン情報のデジタル化
デザイナーのもつ感性や経験値によるアナログ情報を、CADを用いてデジタル情報にすることにより、クレイモデルレスも実現でき、後工程の作業能率や精度はきわめて向上する(デジタルマニュファクチャリング)。
デザイン部門で作成したモデル形状データは、次工程の製品設計、金型加工、製品検査など……どの部門であっても使えるようなデータであることが望ましい。これを『データの一元化』または『PLMデータベース(Product Lifecycle Management Data Base)』という。
現在では,3次元CADによるデザインが積極的に行われている。例えば、スタイリングデザインからエクステリアボディーまでの各部品の基本形状作成の際の面データのスムージング作業(ハイライトおよび曲率変化を滑らかにする。デザイナの美的要求の1つ)では、人間の持つ感性基準(アナログ量)から、数値基準(デジタル量)に置き換えられて作業が行われるようになった。
デジタル情報を基準としたデザインCADによるプロセスを概観すると、図6に示すようになる。
図6 デザイン開発におけるデジタルマニュファクチャリング化(トヨタ自動車提供)
図6の横軸は時間を示し、コンセプト段階、アイデアの具現化と立体化の段階と進む。縦軸は作業を示し,CAS,CAD,CAMの各工程の階段を下るように進む。
ここで注目しておきたいことは、デザイン内部で、デザインに関する複数の作業が並列化され、分散作業が進められることで、全体の効率が非常に良くなることである。
例えば、並列作業の際、デザインと設計部門との間で食い違いやミスがないように、関係者合同でミーティングが行われる。すなわち、これが先述のコンカレントエンジニアリングである。
- 会社名
- 武藤技術研究所、豊橋技術科学大学
- 所在地
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