また以下のように構成され、かつそれらが連携している。
(1)DMU(Digital Mock Up,デジタルモックアップ)
(2)CAS(Computer Aided car Styling)
(3)V-comm(Visual&Virtual communicationの略、図4破線):コンピュータ設計・製造支援システム
図4 新車開発の全工程を短縮するためのコンカレントエンジニアリング
(4)CASE(Computer Aided Simultaneous Engineering):部品設計と金型設計の同時並行進行
このように、デザインのスタートからフィニッシュまで一貫したデジタル情報を駆使し、CAE(Computer Aided Engineering)化を実践する。
またデザイン部門内だけでの話し合いではなく、PLMデータベースを経由して後工程の設計部門や海外のデザイン部門とのグローバルで密接なコミュニケーションも行う。
現在すでに、クレイモデル製作による『現実モデル時代』から、クレイモデルレスのバーチャル(仮想現実)の『デジタル情報時代』に移行している。
今日の自動車開発では、企画後18カ月の開発期間が必要だとされる。これを12カ月、6カ月と短縮するために、上述のような施策がトヨタ自動車では積極的に行われている。
3.本稿における解説の流れ
『CAD』は、『Computer Aided Design』の略で、コンピュータ支援による設計技術のことである。元来、CADという言葉はマサチューセッツ工科大学(MIT)のS.コーンズ(S.Coons)が1963年に著した論文で使ったのが最初とされる。CADと一口にいっても、デザイン(意匠)関連、製品設計、金型設計、設計解析関係と意味が広い。
本稿で述べる3次元ソリッドCAD/CAE/CAM/CAT/Networkシステムは、従来の『CAD/CAM』ではなく、自動車の製作時のプロセスとその特徴を新たに合理的にしたものである。
また以下のような工程の流れになる。
①デザイン(意匠)工程のCAD(前編・後編):
この工程は現在、グローバル戦略の観点から大幅な見直しが図られている。
1.スタイリング工程(CAS)
アイデア、イメージスケッチ工程のことで、アイデア、イメージを手書き及びCADでスケッチにする(前編)
2.CAD工程
スタイルCADに入力し、ワイヤフレームモデル、フェアリングを作成する。また、カラーCADで、色彩を決めていく(後編)
3.CAM工程
モックアップ工程のことで、モックアップにてクレイモ デルを造形する(後編)
②設計工程のCAD:大別すると、製品設計と金型設計。自 動車製作の場合は、ボディ設計とプレス設計
(後編)
③解析工程のCAE:パネルのそりやひずみなどをあらかじ めシミュレーションする(後編)
④製作工程のCAM:金型を加工/組み付けをする(後編)
⑤自動計測工程のCAT(Computer Aided Testing):3次元測定機などによる測定で、金型の精度チェックと試 作したパネルの評価や検査を行う(後編)
4.デザイン(意匠)とCAD
ここでは、以下について簡単に説明していく。
①デザイン工程における技術の概要
②実際のデザイン(意匠)工程
③デザインの曲面評価法
1970年代前半、コンピュータの導入以前では、新企画の自動車のイメージスケッチからクレイモデルを創成し、これをレイアウトマシンで測定して、ボディ外形線図を作成していた。
プレス金型用モデルは、クレイモデルを基準にして作成した。これらのモデルは、デザイナーと金型設計者の指示によって直接修正されていたため、プレス金型の形状データは、修正後のモデルを測定してから作成することが余儀なくされた。
CADがない時代の作業では、デザイナーが線図を手書きし、それを基にクレイモデルを作成していた。すべてアナログ値なので、当然、データには個人差があり、標準化などもしにくかった。つまり、モデルの製作期間やコスト、人員に大変な『無駄、無理、むら』があったわけだ。
- 会社名
- 武藤技術研究所、豊橋技術科学大学
- 所在地
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