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テクニカルレポート
2014.12.05
トヨタ自動車デザイン部におけるデジタルマニュファクチャリング ②
豊橋技術科学大学・武藤研究所

  近年は、曲面の曲率変化を評価するためのハイライト処理、シェーデング・イメージ、断面線、反射線、シルエット線などの解析機能が自由にできるソフトウェアが市販されている。図111)にVWで開発されたソフトの一例を示す。モデルは先代のBMW318のボンネットである。このソフトは、その後ICEM-SURF社が1990年に販売していたが、2007年にDassault system社に買収され、CATIA V5に組み込まれた。

図11 ハイライト処理後の曲面評価ソフト(ICEM-SURF社)

図12 トヨタ自動車(株)独自開発の ハイライトチェック・ソフトによる表示例

  ここで用いられている曲線は6次のBézier曲線であるので、局所変形が可能で、曲率の変化はシェーディングをかけて確認できる。また、サーフェイスを修正すると自動的に更新される。

 図121)はトヨタ自動車(株)で開発されたソフトの一例で、ハイライトチェックを示す。このハイライト・チェックにより面質の評価が可能である。モデルはスープラである。フロントグリルからボンネット、そしてフロントガラスに投影されたハイライトがボディの3次元自由曲面を明瞭に表され、このクルマのエクステリア形状がどのようになっているかが良く理解できる。このように、微妙な曲面で仕上げられていることがおわかりいただけるだろう。

 図131)は、図12に示したボンネット、フロント・パネル・フェンダL部、ドアL部のそれぞれの断面線の曲率分布を示す。その三者の各部品間の滑らかさが判定と制作されたカラーのデータベースは、すべて後工程に利用できる体系化がされている点は、スピード化が求められる製作現場の良き見本である。

図13 レイトレーシングを実現したカラーCADソフト(トヨタ自動車(株)提供)

図14 レイトレーシングを実現したカラーCADソフト(トヨタ自動車(株)提供)

 このように、デザイン部門における分散型のEWS(コンピュータ)導入により、デザイナーの意図通りの車両形状をグラフィックス画面上で操作できる。

 フェンダ部に同図に示した凹凸があるのは、ブリュースタというダイナミックさを表現したものである。同様にドアL部下方にも凹凸があるのは、リアにあるエア・インテークに繋げるためである。このように、断面線の曲率分布などで滑らかさを確認しながら、エクステリアルボディが作り込まれる。

 また、図141)はトヨタ自動車(株)で開発されたカラーCADソフトの一例で、レイトレーシング法である。

 これは、PCなどにある通常のCGソフトにあるカラー・マッピング、テクスチャ・マッピング、リフレクション・マッピングではなく、測彩色学的な計算(モデルに反射、透過、屈折して人の目に入る光線(レイ:Ray)をグラフィックス上の画素単位で逆に辿る(トレーシング:tracing)計算)を高速処理したもので、背景や外光のボディの映り込みを非常にリアルに再現できる。

<引 用 文 献>

1)武藤一夫、図解CAD/CAM入門、大河出版、2012

2)武藤一夫、進化し続けるトヨタのデジタル生産システムのすべて、技術評論社、2007

 

 

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豊橋技術科学大学・武藤研究所
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