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テクニカルレポート
2014.12.05
トヨタ自動車デザイン部におけるデジタルマニュファクチャリング ②
豊橋技術科学大学・武藤研究所

3.審査用プレゼンテーション

図7 アルテッツアの審査用プレゼンテーション

  そして、審査会の時の、当時の奥田社長から一般道路上で実際に走っているところのCGの提示が求められて出来たのが図72)の審査用プレゼンテーションである。

 アルテッサはセダンのすぐれた機能性と、同時にスポーティカーの楽しさ、美しさもまた大切にする。アルテッツァのパッケージングには、理想のスポーツセダンを追い求める確固とした意志があります。思うがままに操る楽しさをあらためて気付かせてくれるFRの走行性能と、満足できる室内スペース、フォルムの美しさ。これらのハイレベルなバランス。そこには、確かなコンセプトに基づいてつくられたクルマから生まれる、真のドライビングプレジャーがあります。

 図82)に示すのは、デジタルマニュファクチャリングによるクレイモデルレスの概要である。実物大のモデルのヴァーチャル再現とチャックができるようになることで、クレイモデルレスが実現する。

図8 デジタルマニュファクチャリングによるクレイモデルレスの推進

  現在のトヨタでは、レクサスや高級車以外の新規モデルはクレイモデルレス化が推進されている。従来のクレイモデル作成によるリードタイムの短縮率は従来の3分の2に達しているという。

 いかに早く、高品質に作るかということは、3次元ソリッドCAD/CAE/CAM/CAT/Networkシステムをいかに一気通貫させるかにかかっている。そのためには、人材教育もまた、現場に課せられた大きな問題となる。従って、知識・経験データを一元的に共有利用できる仕組みが不可欠となる。この仕組みのことを『ナレッジ・ベースド・モデリング(Knowledge based Modeling)』という。すなわちこの仕組みでは、デザインプロセスのルールを組み込むことができる。

4.デザインの曲面評価法

  また、曲面の滑らかさを評価する一つの方法として、図91)に示すようにハイライト断面線の曲率分布とがある。いずれもCADのグラフィックス画面上で曲面の評価が容易に行われる。断面線の曲率分布は、1つの断面線をある区間で線分化し、その線分から生成している法線及び接線ベクトルに注目し、この法線および接線ベクトルの曲率(方向)と強さ(長さ)による評価法がある。これが滑らかであれば曲面も滑らかとされる。

図9 高品質曲面の評価基準(トヨタ自動車(株)提供)

図10 レイトレーシングを実現したカラーCADソフト(トヨタ自動車(株)提供)

  ハイライトは、特別に天井や壁に複数の蛍光灯を平行に配置して、フェアリング(断面線の曲率分布などで滑らかさを作り込まれた曲線を構成線として作成)された曲面をもつモデル表面上に映し出される平行線の形状の変化具合や滑らかさを評価する手法の一つで、図101)に示すように曲面上の傾きが同じ位置を曲線として結んだもので、曲面に蛍光灯のような平行交線が映り出されたものであり、曲面の曲率が大きいとハイライトは収束し(縞間隔が短くなり)、逆の場合は発散する。また、面のうねりが評価できる。

 

 

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