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テクニカルレポート
2017.03.17
はんだ実装業界と環境問題
産業機器用実装基板の洗浄復活
ソルダーソリューション(株)

 

2.ダイオキシン対策(ハロゲンフリーフラックスの採用)

ダイオキシンという物質は実は存在せず、正式にはダイオキシン類と表現すべきであり、図2に示すポリ塩化ジベンゾ−p−ジオキシン(PCDD 75種の異性体)、ポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF1 35種の異性体)、コプラナーポリ塩化ビフェニル(co−PCB)の1、4−ジオキシンの総称である。この内、2,3,7,8、−四塩化ジベンゾパラダイオキシン(TCDD)はもっとも毒性が強く、青酸カリの1万倍の毒性があるといわれている。しかし、ダイオキシン類の中には、毒性の弱いものもあり、2,3,7,8、−四塩化ジベンゾパラダイオキシンの毒性の強さを1とした時のおのおのの異性体の毒性の強さを毒性等価係数(TEQ)で表している。

図2 ダイオキシン類

ダイオキシンはそれ自身を利用する目的で製造することはなく、農薬などの製造時に不純物として生じる。ベトナム戦争で米軍が散布した、枯れ葉剤中に不純物としてダイオキシンが含まれていたことは有名である。一方、都市ごみや産業廃棄物の焼却施設で比較的低温で塩素系プラスチックを燃焼した際にも生じる。国内でも、ごみ焼却場の周辺でダイオキシンが検出され大きな社会問題となったことがある。このような背景を踏まえ、米国のIPC(電子回路工業協会)やJEDEC(電子機器技術評議会)はハロゲン物質の削減計画案を発表し、ハロゲンフリー化が加速した。

実装基板の無洗浄化で活性力の強い無機ハロゲンイオンから活性力の弱い有機酸、アミン系に変更した実装業界では、ハロゲンフリーフラックスは活性力がさらに低下することになった。すなわち、脂肪族アミンハロゲン塩(RNH2・HX:反応性が高く良好なはんだ付けが得られる)や有機ハロゲン化合物(RXn:保存安定性が良好、残渣の信頼性が高い)も削減の対象となった。その結果、フラックスの活性力はさらに低下し、はんだのぬれ性不良が原因となる不具合の増加を引き起こしている。

3.RoHS規制対策(鉛フリーはんだ合金の採用)

表2 鉛フリーはんだ合金の物性

欧州においてRoHS指令として有害物質の輸入を禁止する措置に至ったその背景については、あまり知られていない。ある年のクリスマス商戦用に、日本から欧州に輸出された商品が欧州の税関でストップになった。原因は電源コードにCdが使用されていたことである。この事実を知った税関が荷揚げをストップしたのである。元来、環境問題について厳しい立場をとっていた欧州では、家電製品や自動車の廃棄に伴う有害物質の汚染・拡散について懸念しており、欧州議会では有害物質の規制を協議し、2006年7月にRoHS指令として施行された。この時、規制の対象となったのが、水銀、カドミウム、六価クロム、鉛、臭素系難燃剤2種類(ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDE)、ベンザブロムシクロドデカン(HBCD)の6物質である。RoHS指令はSn-Pb共晶はんだを使用して家電・通信機器・産業機器などを製造してきた業界に衝撃を与えた。

大手家電メーカーは(旧)通商産業省や工業会を中心に鉛を含まないはんだ『鉛フリーはんだ』の開発を開始した。その成果として提案されたのが、日本国内で主流となっているSn−3.0Ag−0.5Cuのはんだ用合金である。しかし、鉛フリーはんだの多くは従来のSn-Pb系共晶はんだと比較してSnの含有量が90%以上と多くなっているため、物性的には、表2に示すような特徴が出ている。その中でも、特にすず酸化物は金属すずに還元されにくいため、ぬれ性の低下を引き起こす結果となっている。 以上のように、実装業界にとって、はんだ合金の環境対策ははんだのぬれ性の低下をもたらすことになったのである。

 

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