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テクニカルレポート
2016.12.27
海外拠点で生産した 実装品における信頼性の確保
流出不良が増加している現状とその対策
STCソルダリング テクノロジ センター

 

はじめに

~取り巻く環境が信頼性の見方を変える~

 近年、アメリカ経済の落ち込みや欧州での金融不安を背景に、これまでにない円高市場を余儀なくされ、国内での生産から海外での生産に切り替える企業が多くなっている。

 また、地震や津波といった自然災害やタイの洪水の影響により、電子部品そのものの安定した供給が困難となっており、海外製の電子部品を使用する製品も少なくないのが現状となりつつある。

 このように、これまで我々が選択してきた量産体制から大きな変貌を遂げようとしている中、相変わらず各種製品の開発サイクルとそのスピードは加速の一途を辿り、量産までに充分な時間と工数を掛けることができない状況が続いている。こうした状況は今後も続くことと思われる。

 確かに海外生産では人件費等の固定費が、海外製の電子部品では単価が低く抑えられることは事実であり、現在の国内を取り巻く環境ではそうせざるを得ない面や、コストメリットを確保するうえでは間違った選択とはいえない。

 しかし、こうした背景に伴い、客先・市場故障品が増加しているのはご存知であろうか?

 当社の元にもここ数ヶ月、海外生産品における故障解析の依頼や海外生産現場の改善依頼・工場の監査、海外生産及び海外製電子部品を使用した信頼性評価の指導の依頼が急増している。生産品目の海外移行や代替え部品による急激な変化によって、品質・信頼性の確保が困難になっていることと、遠方による意思の疎通、国民性の違い等が要因の一つであることが予想される。

 そこで、今回から不定期シリーズとして、鉛フリーはんだ接合部の信頼性確保について、事例を紹介しながらその重要なポイントを報告する。

外観判定基準について

  環境問題から鉛を含まないはんだ、いわゆる『鉛フリーはんだ』材料及びそれを用いた実装技術の開発や、はんだ合金を使用しない導電性接着剤(エポキシ系樹脂に銀粉などの金属を分散させたものが主)を用いた実装技術の開発が世界的規模で進められていることは、すでに周知の事実であり、その合金候補はSn-Ag-Cu系を中心にほぼ固まっている。

 鉛フリーはんだ合金の研究開発は以前から進められており、多くの特性データが発表され、実用化も進んでいるが、はんだ接合部の外観評価基準についての公的基準の整備は遅れているのが現状である。日本における電子機器のはんだ接合部基準の経緯は、『MIL-STD-2000 はんだ付け電気及び電子アセンブリに対する標準的要求事項』または『ANSI/J-STD-001』(※IPC-A-610 Acceptability of Electronic Assemblies)などが適用または準用され、各メーカーはこれらをベースに社内基準を作成し、製品に適用してきた。

 しかしMIL-STD-2000は廃版となり、現在 電気・電子機器業界では、IEC規格(※International Electrotechnical Commission) IEC61191-1~4を公的基準として引用する方向にある。この規格の中身はMIL-STD-2000の内容を引き継いでいる。

 現在、日本国内ではJEITA(社団法人電子情報技術産業協会)がこのIEC規格に鉛フリーはんだを適用対象に追加し、JIS化に向けて準備を進めている。また、JWES(社団法人日本溶接協会)は、マイクロソルダリング技術認定・検定制度を発足(平成15年7月)させており、はんだ接合部の判定基準にIEC規格61191-1~4:クラスCを採用して試験を行っている。

 鉛フリーはんだは機械的性質が良好であり、63Sn37Pb共晶はんだの1.5倍から2倍の引張強度をもつなどの特徴があるが、Cuへのぬれ性が悪く、ぬれ広がり率では63Sn37Pb共晶はんだが90%を超えるのに対し、70~80%前後になるなどの特徴をあわせもつ。

 こうした中、電子制御機器の高機能化、小型化、薄型化要求により、搭載される電子部品点数は増大し、高密度実装のためのリードレス部品(BGA:Ball Grid Array、CSP:Chip Scale Packageなど)の採用、小型部品対応のためのランド間隔の狭ピッチ化などに伴い、はんだ接合部は小さくなる状況にある。このような傾向からはんだ接合部の信頼性向上はますます重要となっている。


●IEC規格とそのレベル

 1)IEC61191-1プリント板実装  第1部:通則(表面実装及び関連する実装技術を用 いた電気/電子機器用はんだ付け実装)

 2)IEC61191-2プリント板実装   2部:部門規格(表面実装はんだ付け)

 3)IEC61191-2プリント板実装  第3部:部門規格(挿入実装はんだ付け)

 4)IEC61191-2プリント板実装  第4部:部門規格(端子はんだ付け実装)

 この規格は、電気/電子機器が意図された最終用途により分類されることを認めており、生産性、機能的な性能要求事項及び検証(検査/試験)頻度における差異を考慮し、三つの一般的最終製品レベルが制定されている。レベル間には製品が重複する可能性があり、組み立て品の購入者はその製品が属するレベルを決定する責任がある。契約において要求するレベルを指定すると共に、必要に応じて特性に対する例外または付加要求事項を指示する。

●レベルA:一般電気製品(民生用)  消費者製品、ある種のコンピュータとその周辺機器および主要要件が完成組立品の機能である用途に適するハードウェア。

●レベルB:業務用電気製品(産業用)  通信機器、高性能な業務用機器および高性能且つ長寿命が必要で、必須ではないが中断のないサービスが望まれる機器。一般的に最終製品使用環境は障害を起こさないように管理されている。

●レベルC:高性能電気製品(特殊用)

 連続した処理能力または要求時に即応した処理能力が必須である全ての機器。生命維持システムや危機管理システムのように、設備故障時間は許されず 製品使用環境は非常に苛酷であり、機器は必要な時に必ず機能しなければならない。

 IEC規格は、Sn-Pb共晶はんだを対象に制定されているが、これに鉛フリーはんだ合金を含める方向でJIS化される検討が進められており、基本的な接合基準の変更はないものと考えられている。その場合、特に各項目の寸法規格などは変更することなく従来どおりとしている。大きく変更される事項としては、はんだの表面光沢が予定されており、IEC規格のJIS化案を引用すると以下の通りである。

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 5.1項 はんだ JIS Z XXXX に準拠する鉛フリーはんだ並びにJIS Z 3282に準拠するSn60Pb40、Sn62Pb36Ag2及びSn63Pb37の組成のはんだ(はんだの形は任意)を使用する。この規格の他の全ての条件が満足され、購入者と製造者の間で同意されれば、製品に要求されるサービス寿命、性能及び信頼性を提供する他の合金を使ってもよい。例えば、ある製造者はSn60Pb38Bi2を使う事により、光学的な検査が容易なツヤ消し面になる事を知った。

 10.2.4項 はんだ接合は、はんだが表面に対して90度以下の角度を成し、濡れと密着が充分なものを合格とする。ただし はんだの分量が多くランドの端を超えるような場合は90度を超えてもよい。一般的に はんだの接合表面は滑らかであるとする。サテン仕上げの光沢は合格とする。

 通常使用される はんだ合金の構成、リード線の表面処理、プリント板の表面処理、特殊はんだ付け等により、はんだ表面の光沢がなくなったりグレーになったり、粒ができたりする事がある。これらのはんだ接合は合格とする。

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 このようにIEC規格そのものは、実装現場での良否判定基準に比べ、ゆるいものとなっている。したがって実装現場では、これより厳しい社内基準を設け、運用する事で高信頼性を維持すると共に品質保証に努めている。JIS化案の『サテン仕上げの光沢』は ひとつの基準と考え、社内における判断基準を別途作成することが重要である。

 

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STCソルダリング テクノロジ センター
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