無電解Ni-P/Auフラッシュにおける粒界腐食の問題
粒界腐食とは、結晶粒の境界部に選択的に生じる侵食(腐食)現象をいう。一般に構成元素の特定のものが、結晶粒界に沿って濃縮または稀薄化して成分不均一になる現象である。金属原子は結晶粒子内で規則的に整然と並んでいるが、隣接した結晶粒子間では原子配列の方向が違うため、その結晶粒子の界面すなわち粒界域の原子は、どちらの結晶粒子とも整合を取ろうとする。すると、粒界では並びは乱れ、エネルギーは高くなる。粒界腐食は、こうした粒界の近傍を沿うように選択的にできる腐食である。
図1 衝撃によるBGA接合部クラック
図2 粒界腐食発生箇所の断面SEM画像
はんだ接合部においては、無電解Ni-P/Auフラッシュ基板では従来の63Sn37Pb共晶はんだでも、ぬれ不良などのはんだ不ぬれやはんだ弾きの発生が問題視されてきた。また鉛フリー化の導入時期とBGAやCSPなどの部品実装が増えてきた時期が重なる部分もあり、無電解Ni-P/Auでのはんだバンプの衝撃に対する接合信頼性の低下が問題化し、一部では鉛フリー化によって、こうした不ぬれや弾きが増加したこともあり、原因究明が急がれた(図1)。
日本や米国における研究結果により、Ni-Pめっき層が腐食している場合と、Sn-Ni合金層界面におけるPリッチ層の形成が要因の場合があり、基板メーカーや実装メーカーでは注意が必要であるとの認識が一般的になっている。
無電解Ni層のPが少ないと耐食性が劣るため、Niが腐食され、Pが表面に析出し、接合信頼性を低下させる要因となる。または腐食により局所的溶解が発生し、溶解箇所周辺はPリッチとなり、腐食の進行に伴いPリッチ層がひろがり、接合信頼性を低下させる要因となる。
逆に無電解Ni層のPが多いと、はんだ付けによるP濃縮が起こり、接合信頼性を低下させる要因となる。
この腐食、あるいは局所的溶解は平面からは網目状、断面からはスパイク状となる(図2)。
NI-P/Auフラッシュ基板への実装において、すべての接合部位で粒界腐食の発生をゼロにすることは、かなり困難であるといわざるを得ないが、日本国内においては粒界腐食による市場故障事例はかなり減ってきたといえるため、致命的な問題は回避できていると考える。
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