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テクニカルレポート
2018.11.16
「水素社会構築」の現場を見る
特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構

 

3. 「水素社会構築」に向けてのインフラ整備状況

 

 「家庭用燃料電池コージェネレーションシステム」を発電する給湯器として『エネファーム』(ENE・FARM)の名前で2009年から家庭に入り込み、すでに累積普及台数は20万台に達している。知らぬ間に「水素社会の構築」が家庭で実施されていたのである。

 また、トヨタが2014年12月に、ホンダが2016年3月に、それぞれ燃料電池車を市販したことによって一躍、「水素社会の構築」の重要性が世の中に広く知れ渡った。表1に示すように新エネルギー車の一つとされる燃料電池車が量産化され、その車の燃料として”水素”が使われる。そのため、燃料補給の水素ステーションの導入が重要となってきた。

 

 

1. 水素ステーション

 水素ステーションは、水素製造装置 (オンサイト型の場合)+水素貯蔵設備+圧縮機+蓄圧機+ディスペンサー+プレクール+弁・継手などで構成される。水素漏れを検知するセンサーなども重要な部品となってきた。水素ステーションには図1に示すように「オンサイト型」と「オフサイト型」がある。

 

 水素ステーションの整備として2016年3月末までに関東、中部、名古屋、福岡の4大都市に100カ所の水素ステーションを整備することで計画され、2016年3月末現在で81基が設置された。

 そして2018年3月末で他国に先駆けて100カ所の設置となり、目標に対して2年遅れで達成した。

 ちなみに米国31カ所、ドイツ44カ所の設置となっているのと比較すれば、日本の設置台数は他国より多く、「水素社会の構築」に向けて一歩、リードしていることがうかがえる。

 商用水素ステーションを2020年度までに160カ所程度、2025年度までに320カ所、2030年までに900カ所の設置目標を掲げている。2018年7月現在、計画中も含めると111カ所となっており、2020年の目標まで約50カ所を残すのみとなってきた。

 水素ステーションは、JXTGエネルギー(ENEOS)、岩谷産業、日本エア・リキード、東京ガス、ニモヒス、出光興産、清流パワーエナジー、静岡ガス、中部ガス、豊通エア・リキードハイドロジェンエナジー、東邦ガス、みえ水素ステーション、大阪ガス、広島トヨタトレーディング、広島トヨペット、高松帝酸、四国太陽日酸、西部ガス、江藤酸素など19社が設置している。その中で代表的な例として関東地区で身近に見ることのできる水素ステーションを示すと表2のようになる(※2)

 

 水素ステーションは単独で設置される場合はまれで、表3に示すようにガソリンスタンド、ショールーム、コンビニエンスストア、ガス製造拠点などとの併設型が多く、必要な時に車で水素を運搬する移動式の水素ステーションもある。

 関東のみならず九州の福岡県の北九州や糸島なども訪問して「水素社会の構築」の実態を調査した。ここでは、関東地区での代表的なタイプ別の事例を写真でもって紹介しよう。

 

(1) ガソリンスタンド併設型水素ステーション(ENEOSのDr. Drive上飯田店)

 もっとも多い例の水素ステーションとなる。ガソリンなどの給油所は多い時には約6万カ所も存在したが、今や3.1万カ所まで減少している。給油所の新しい付加価値として水素ステーションも併設する形が出てきた(写真1)。

 

 

(2) ショールーム併設型水素ステーション(イワタニ芝公園)

 TOYOTA MIRAIショールームを併設し、2014年12月に発売された燃料電池自動車「MIRAI」を展示し、映像などを使って車両や水素などの特徴などを紹介する水素ステーションとなっている(※5)(写真2)。この水素ステーションには東京タワーから歩いて行ける距離にある。

 

 

(3) コンビニエンスストア併設型水素ステーション(イワタニ水素ステーション東京池上)

 セブン‐イレブン大田区池上8丁目店との併設タイプの水素ステーションで第二京浜道路に面した位置にある。(写真3)コンビニエンスストアに買い物ついでに車に燃料を補給する場合に便利である。(※6)

 

 

(4) ガス製造拠点併設型(川崎水素ステーション)

 酸素、窒素、アルゴンなど製造するガス会社である川崎オキシトン川崎工場に隣接した日本エア・リキードの水素ステーションで、オフサイト方式の水素ステーションで、ガスに関しては豊富な知識を有しており、それを活かした水素ステーションとなる(写真4)

 

 この水素ステーションの近くのキングスカイフロントに東急REIホテル(写真5)があり、ホテル全体の約3割の電気と熱を純水素燃料電池(H2Rex/東芝)と水素(昭和電工で廃プラスチックで生産)で発電した電力で賄うホテルで「水素ホテル」で知られる。なお、純水素燃料電池システムは、ホテル入口の右側にガラス張りで見学ができるように配慮されている。

 

(5) 移動式水素ステーション

 移動可能なトラックの荷台に水素充填装置を積んで決まった場所に運び、水素の充填を受けることができる場所となる。移動しながらデリバリー方式で充填するのではない。移動式水素ステーションは、燃料電池自動車の導入初期である現状において、需要地のニーズに合わせて柔軟な対応が可能という特徴がある(※7)(写真6)。

 

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特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構
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