1. はじめに
資源に恵まれない日本は、電力源の燃料の大半を海外に依存し、資源確保で大きな課題を抱えている。国民生活と産業活動の血脈であるエネルギーを海外に依存する構造的脆弱性を抱え続けているといってもよい状況である。
海外から石炭、石油、天然ガスなどの鉱物性燃料を調達しており、2017年度で15.8兆円の調達金額に達している。多い時には、27.7兆円(2013?2014年)にもなっている。
木材・石炭などの「固体エネルギー」から石油などの「液体エネルギー」へと展開していき、今後は天然ガスや水素などの「気体エネルギー」が注目されるようになってきた。
化石燃料では、将来的には枯渇が懸念されると同時に燃焼すると二酸化炭素の排出問題があり、温室効果ガスの増加を招く可能性も指摘されているため「脱化石燃料」も重要な課題となってきている。
将来的は、海外依存から国内で自前技術でのエネルギーを調達することが可能となれば莫大な調達金額の流出がなくなる点にある。
2016年5月号の本誌の環境特集号において、「『水素社会』の到来」という題名で紹介したが(※1)、今回は、その後の進展状況を確認するために「水素社会構築」の現場を見て歩いた。その結果を報告する。
2. 「水素社会」がやってきた!
16世紀初頭には、硫酸(H2SO4)と鉄(Fe)の反応で「水素」(H2)が生じることが確認されており、それ以降、「水素」の軽い性質を応用して気球に使用され、飛行船へと応用展開された。
19世紀初頭には燃料電池の原理が発見されている。1929年になると、英国のICIが炭化水素の水蒸気改質技術を開発し、それ以降、様々な技術開発が進展し、100以上の「水素」を製造する方法が確立され、水素利用の応用展開が実施された。
徹底した省エネ、再エネの拡大、新たなエネルギーシステムの構築などがエネルギー革新戦略の中で検討されている。特にこれから新たなエネルギーシステムを構築するにあたって、「水素社会の構築」が見えてきた。
クリーンなエネルギーで水素と空気中の酸素と反応させて電気エネルギーを得ることができ、排出されるのは「水」であり、排ガスなどを気にすることのないクリーンエネルギーである。
2014年に策定された「エネルギー基本計画」の中で水素が中心的役割を担うと明記され、2018年のエネルギー基本計画でも「水素社会」の実現は、将来の二次エネルギーでは、熱、電気に加え、水素が中心的役割を担うことが期待されるとうたわれている(※2)。さらに、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」が2014年6月に策定され、2017年12月に「水素基本戦略」も策定された(※3)。また、さらに「水素社会がやってくる!」のキャッチフレーズはすでに「水素社会がやってきた!」に変わった。これは前進したことを示すことになる。
では具体的にどのように変わってきたか、ということを実感するために現場を訪れてみた。その結果を写真でもって紹介したい。
- 会社名
- 特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構
- 所在地
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