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テクニカルレポート
2026.06.25
高密度実装時代の「検査ファースト」のテスト戦略
― JTAGテストによる検査と設計の協調 ―
アンドールシステムサポート(株)
谷口 正純

①高密度化と検査の市場動向

電子機器の高機能化・小型化が加速するなか、実装基板の検査技術は、これまでにない変革期を迎えている。BGAの採用拡大による高密度化、チップレット、部品内蔵基板などの3次元化により、従来のインサーキットテスト(ICT)に代表される物理プローブ方式では、信号ピンへの物理的なアクセスそのものが困難となった。こうした背景のもと、高信頼性機器の実装業界では IEEE 1149.1 に準拠した JTAGバウンダリスキャンテストと、それを前提とする DFT(Design for Testability : テスト容易化設計)へのシフトが加速している。

市場調査各社のレポートによれば、JTAGバウンダリスキャン関連市場は 今後も安定した成長が予想されており、2025年以降は年平均6〜7%前後の成長率が見込まれている。特にアジア太平洋地域は最大市場の一つであり、電子機器製造の集積を背景に高い需要を維持している。需要を牽引しているのは、自動車エレクトロニクス、産業機器、航空宇宙、防衛、医療機器など、高信頼性を要求される分野である。このように「故障が許されない」分野では、テストカバレッジを設計段階から作り込む 検査ファーストのDFT思想が標準化されつつある。

 

②テスト容易化設計DFTの意識改革

注目すべきは、欧米のEMSがDFTとJTAGバウンダリスキャンテスト(以下、JTAGテスト)を「検査工程の効率化策」ではなく、「製品ライフサイクル全体のコストとリスクを左右する戦略的投資」と位置づけ始めている点である。JTAG Technologies社をはじめとするバウンダリスキャンテスタベンダー、半導体ベンダー、計測器ベンダーが相次いでDFT 設計ガイドラインや事例を発信していることからも、この流れが業界標準の考え方となっていることがうかがえる。実装基板の検査品質はもはや「製造ラインの後工程の問題」ではなく、回路設計・PCBレイアウト設計段階から組み込まれるべき要件へと変わりつつある。

こうした海外の市場動向と技術潮流を踏まえつつ、検査ファーストに基づくDFTとJTAGテストが基板検査の現場にもたらす価値、そして国内の実装業界が今後取り組むべき課題について整理していきたい。

エレクトロニクス機器の小型化、高密度化、高機能化はとどまるところを知らない。車載機器、産業機器、IoT機器、医療機器、データセンター向けのいずれの分野でも、BGA、CSP、狭ピッチQFNが主役となり、さらにチップレットと部品内蔵基板が先端実装の中核を占めるようになってきた。これらの実装構造は、電気性能と実装密度を飛躍的に向上させる一方で、検査の現場には「見えない、触れない」という大きな課題を突き付けている。外観検査装置(AOI)ではBGA配下や基板内層の接合部を観察できず、インサーキットテスト(ICT)やフライングプローブテスタでもプローブピンが届かない領域が拡大している(図1)。

図1 部品内蔵基板の断面構造例

 

このような構造的課題に対し、本誌2026年2月号おいて、EUサイバーレジリエンス法(CRA)対応の観点から「検査ファースト」の考え方を紹介した。検査ファーストとは、製品の性能とコストだけに目を向けるのではなく、「検査を重視する」という開発思想であり、設計、デバッグ、試作検査、品質保証、量産検査、保守のすべての製品ライフサイクルにおいて、テスト容易化設計(DFT : Design for Testability)を通じてJTAGテスト/バウンダリスキャンを活用できる状態を作り込むことを意味する。本稿ではそれを発展させ、高密度実装時代における「検査と設計」の協調という切り口から、JTAGテストを中核に据えた検査ファーストの設計指針と実践事例を解説する。

 

③なぜ、いま検査ファーストなのか

3.1 従来型「検査アフター」の限界

多くの現場で今なお主流となっているのは、回路設計・基板設計がほぼ確定した後に、生産技術部門が検査治具や検査プログラムを作り込む「検査アフター」型の開発である。テストパッドの追加は、設計者が部品配置と電気特性を最適化した後では、設計変更に伴う信号品質の評価、動作検証をやり直す必要があるため、多くの場合には後付けでテストパッドの追加は困難である。

さらに、BGAのデジタル信号や、高速差動信号が基板の内層のみで接続された配線には、そもそも物理プローブを当てる手段がない。結果として、ICTだけではテストカバレッジが少なく、不良品が次の工程に流出してしまうことになる。

試作段階で判明した「検査できない箇所」を救済するため、基板改版を行うケースがある。一般的に、1回の基板改版にかかる費用と評価のやり直しにかかる人件費を含め百万円規模のコストがかかり、立ち上げ期間も2〜4週間延びてしまう。設計完了後に検査を考える姿勢は、品質の問題にとどまらず、事業スピードと原価を同時に損なう構造的な課題となっている。

 

3.2 検査ファーストの3つのポイント

検査ファーストとは、製品企画・回路設計の段階から「どのように検査するか」を先に定義し、その検査手段に必要な回路要素と物理構造を設計に織り込む開発思想である。次の3つのポイントを考慮すると良い。

 

・ポイント1 : 検査手段を設計インプットとして扱う

検査項目、テストカバレッジ目標、検査装置を要件定義書に明記し、設計と同等の優先度で扱う。

 

・ポイント2 : 物理的なアクセスができない信号はJTAGテストで救済する

物理プローブが届かないネットは、JTAGテストで論理的に駆動・観測できるように検討する。

 

・ポイント3 : 検査結果を設計にフィードバックする

試作検査で得た結果と故障解析結果を、設計ガイドラインとDFT運用ルールに反映し、次機種の設計品質にフィードバックする。

 

これらは一見当たり前のように見えるが、実際に運用しようとすると、設計・生産技術・検査の各部門の業務慣行を横断的に変革する必要があり、組織的な取り組みが不可欠となる。

 

3.3 従来アプローチとの比較

検査ファーストが従来アプローチとどう異なるかを、観点別に整理したものを表1に示す。

表1 従来アプローチ(検査アフター)と検査ファーストの比較

会社名
アンドールシステムサポート(株)
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神奈川県川崎市幸区堀川町66-2