はじめに
エレクトロニクス業界に対して最初に環境対応の必要性を訴えたのは欧州であった。急増する電機・電子機器の廃棄問題から始まって、その対策として電気・電子機器の廃棄指令であるWEEE指令の策定につながり、リサイクルの重要性が欧州で議論された。
WEEE指令に先行する形で、自動車の廃車指令としてELV指令がすでに始動していた。欧州連合(EU)が問題にしたのは、年々増え続ける電気・電子機器や自動車の廃棄をどう処理するかであった。その対策として1990年代の後半頃にWEEE指令の草案が策定されて議論されたのである。そして、その廃棄問題の解決策として、少しでも回収してリユース、リサイクルなどを実施することを狙った廃棄指令が策定されるにいたった。
リサイクルするものに有害物質が入っているのは問題である、ということから、自動車では4物質(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム)を、電気・電子機器では6物質(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE)をそれぞれ対象として、使用を制限するようになった。6物質に関しては、法的な取り扱いの違いからWEEE指令から切り離されRoHS指令となり、WEEE指令は2005年8月23日から、RoHS指令は2006年7月1日から、それぞれ施行された。その後、RoHS指令も2011年7月1日に改正され、対象範囲が拡がった。RoHS指令は、電気・電子機器に含有する化学物質を管理するきっかけとなった指令でもある1)。
このような動きとは別に、温室効果ガスの排出量削減も地球規模の環境問題として捉える必要がある、として京都議定書が策定され、55カ国が署名し、2005年2月に同議定書が発効した。署名し、締約した国は81ヵ国になるが、アメリカは署名のみで締約していない国となっている。
この京都議定書に基づいて、81ヵ国が低炭素社会の構築に向けて対応し始めることになった。温暖化の原因の一つが二酸化炭素の増加であり、これが地球を温室効果のようにあたため、温暖化を進行させてしまうという観点から、温室効果ガスをこれ以上増やすことは地球環境に負荷をかける、として、低炭素社会構築を考えながら持続可能な社会の構築の重要性がうたわれるようになったのである。
しかしこのような取り組みの一方で温暖化は黒点の増加など何らかの影響で進展している。温暖化によって、海水などに溶け込んだ二酸化炭素が放出され、これが空気中の二酸化炭素を増加させている、という考え方もある2)。
このような社会情勢に呼応して、環境対応の重要性が訴えられ、いろいろな取り組みが実施されるようになり、それらを身近に見ることができるようにもなってきた。企業のみならず、消費者も環境問題にどう立ち向かうかが問われる時代になってきたともいえる。 消費者の価値観も変化してきており、特に環境問題を積極的に配慮する時代になってき たともいえる。
では一体、今、どのような環境対応が実施されているか、身近な事例を拾って、その実態に迫って見たいと思う。あわせて簡単な解説も紹介する。
【解説01】温室効果ガスとは?
温室ガスはGreenhouse Gasesの略で、地球温暖化の原因となるガスを指す。熱が地球の外に出て行くのを防ぐ性質のある大気中のガスを温室ガスと呼んでいる。温室効果ガスによって地球の平均気温は約15℃に保たれており、逆に温室効果ガスが存在しないと−18℃になるとの予測がある。二酸化炭素 (CO2)、メタン (CH4)、一酸化二窒素 (N2O)、代替フロンのハイドロフルオロカーボン (HFC)、代替フロンのフルオロカーボン (PFC)、六フッ化硫黄 (SF6)などが京都議定書で温室効果ガスとして規定された。
産業革命以降、温室効果ガスの大気中の濃度が人間活動により上昇し、『温室効果』が加速している点が問題視されている。
商品をみると…
写真1(左上)、写真2(右上)、写真3(下)
商品を購入すると、そこには実にいろいろなマークが添付されていることに気づかれるのではないだろうか。今までは製品の安全に関するマークが主であったのだが、最近では『環境』に関するマークも添付されるようにもなってきた。写真1がPC用のアダプタ、写真2はマウス、写真3がデジタルカメラで、それぞれマークが表示されている。これらに表示されているマークのうち、AがEUのWEEE指令で決められたWEEEマークである。2005年8月23日以降にEU加盟国に出荷される電気・電子機器には、このごみ箱のマークの添付が必要となった。
また、Bは中国版RoHSで規定されているマークであり、第一段階で実施しなければならないマークの表示義務である。EUが決めた6物質を閾値以上含有しているもので、中国に出荷される製品にはBのマークの添付が必要となる。マークの中の数字は有害物質が漏れ出ない保証年数を示すもので、写真の例では10年間漏れ出ないことを保証している。この保証年数は機器によって異なる。
【解説02:WEEE指令とは?】
1990年代に入り、欧州共同体、欧州委員会、加盟国の間で、使用済み電気・電子機器の取扱いについていろいろな審議が開始され、1994年には作業文書がまとめられ、検討作業が開始された。そして、1998年に指令ドラフトが作成され、「リサイクル」、「有害物質」、「環境設計」の3項目が検討された。初期の頃の指令ドラフトには、2004年が施行日で、全ての臭素系難燃剤が規制の対象とする案であった。種々、議論された上、2000年6月には、正式に委員会から提案され、WEEEとRoHSの二つの指令案となった。利害関係の衝突があり、欧州委員会には環境総局と企業総局がその他の総局と共にあり、本来、化学物質については企業総局であったが、RoHSについては、環境総局が取りまとめとなった経緯がある。WEEEはWaste from Electrical and Electronic Equipmentの略から由来している。
- 会社名
- 特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構 横浜支部
- 所在地
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