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テクニカルレポート
2016.07.07
『地球環境』を守るための施策を探る
NPO法人 日本環境技術推進機構 横浜支部

 

  これと同様の方式で、中国の四姑娘山連峰を望む標高3,800mに位置するヤクの番人小屋でも、白熱電灯、薄型テレビ、洗濯機などの電力はマイクロ水力発電で賄っており、比較的な簡単方法で得ている。驚くのは、沢に流れる水もそれほど多くもないにもかかわらず簡単に電気を得ていることである。このように、標高3,600mに位置するベースキャンプでもマイクロ水力発電によって照明用の電気を得ているのであるから、日本も未利用のエネルギーを積極的に活用することが必要ではないかと思う。

写真5 木質ペレットストーブ (こうちエコハウス)

写真6 木質バイオマスガス化熱電併給システム

写真7 木質チップ(葛巻町ホームページより)

表3 木質バイオマスガス化熱電併給システムの概要

2.森林資源の活用

 日本の森林率はフィンランド、スウェーデンに続くもので、世界で第3位に位置付けされる。豊富な森林資源があるにもかかわらず、目の前の資源が放置されて活用されていないという別の問題を日本は抱えている。

 たとえば、わざわざ海外から石油を購入して石油ストーブで暖をとるのではなく、地元にある木材を使って木質ペレットにしてペレットストーブで暖をとることも地域活性のために、あるいは放置された資源の有効活用として検討が必要ではないかと思う14)。 日本の中で森林率の高い高知県では、『こうちエコハウス』に木質ペレットストーブを展示して普及活動を実施している(写真5)。

 森林を整備することは重要なことで、整備の過程で発生する間伐材が山の中で放置されたままになり、その量も全体の8割になっていたという。実に『モッタイナイ』話である。この放置されていた間伐材を原料に、電気や熱としてエネルギーを回収、有効利用できるシステムがバイオマス発電である(写真6、7)。

 十分に利用されていない森林資源を活用することで、森林整備や環境の保全を図ることができ、森林が保全されると川を伝わって栄養分が河口に運ばれることによって漁場がよくなり、漁業が栄えるといった別の効果も出てくるのでまさに一石三鳥の取り組みである。『森は海の恋人』とも言われるほど重要な位置付けにある。

 バイオマスなど未活用エネルギー実証試験事業として葛巻町では、『森林の間伐施行に伴う木質バイオマスガス化熱電併給システム』として月島機械株式会社、(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構、葛巻町が協力して開始した。主な概要は以下の通りである(表3)15)。

 主な利点としては、森林整備の過程で発生する間伐材を有効利用でき、化石燃料を使用しないため温室効果ガスの発生が少なく地球温暖化防止に役立つという点である。電気と熱を利用できるためエネルギー効率が高いといった特徴を有する。

3.地下資源から地上資源へ

 地下資源に眠っていた資源は採掘されて、いろいろな製品に使用されるようになった。使用された製品の寿命がくると地上で廃棄され、いわゆる『都市鉱山』といわれる状態となる。鉱山で掘り起こして金属を採取するのではなく、多くのレアメタルなどが使用されている携帯電話、PCなどのデジタル機器をリサイクルして、含有するレアメタルやベースメタルなどを回収することが重要である。そのためには、経済的に回収できる技術の開発が必須である。地上で眠る『都市鉱山』といわれる資源に目を向ける必要があることはいうまでもない。

 都市鉱山となった廃棄電子機器からの効率良く経済的にレアアースを回収することが重要である。

 また、代替技術の一例としてハイブリッド車のモータや家電に使われるネオジウム磁石に匹敵する磁力が得られる『強磁性窒化鉄』の開発が試みられており、レアアースレス磁石の基礎技術が開発されている。このような代替技術の開発も急がねばならない16)。

 以上、地球環境を守る施策として、地球環境を守る必要性について言及し、地球環境を守るための有害物質管理、地球環境を守るための環境法規制、エネルギー問題とその対処方法、そして資源を活用しての地球を守る事例などを紹介した。少しでも環境問題について理解を深めて頂ければ幸いである。

 

<参 考 資 料>

1. “Mr. Ecologist新たな局面を迎えた環境規制”, 
JPCA News pp3?15 3月号(2012)
2. 青木正光, “工業材料の環境規制 ?傾向と考え方?” 
 Polyfile Vol. 48 No.570 pp56?pp61(2011)
3. http://www.europarl.europa.eu/meetdocs/2009_2014/documents/envi/pr/794/794155/794155en.pdf
4. http://www.umweltdaten.de/abfallwirtschaft-e/stellungnahme_zur_rohs_revision_english.pdf
5. http://jns.miit.gov.cn/n11293472/n11295091/n11477337/14103133.html
6. http://jns.miit.gov.cn/n11293472/n11295091/n11477337/14103327.html
7. http://jns.miit.gov.cn/n11293472/n11295091/n11477337/14103245.html
8. http://www.chinattl.com/ttlweb/Z/0b228101b118474ea1abcac2e4b7700a.pdf
9. http://www.crdb.jp/
10. http://echa.europa.eu/web/guest/candidate-list-table
11. http://www.jamp-info.com/
12.武井豊, “『葛巻』にみた『デンマーク』に学べ” エレクトロニクス実装技術 Vol.28 No.3 p37 (2012) 
13. “Mr. Ecologistの環境対策・リサイクル事例集”, JPCA News No.523 pp5?pp23 4月号 (2012)
14. 三浦秀一、古川正司 “エネルギーはそこにある” 木質ペレット推進協議会 pp1?pp59(2011)
15.http://www.town.kuzumaki.iwate.jp/article.php?story=20080920115543168
16.青木正光, “環境規制と環境調和型実装技術” エレクトロニクス実装学会誌 Vol.15 No.3 pp169?pp174 (2012)

 

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NPO法人 日本環境技術推進機構 横浜支部
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