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テクニカルレポート
2015.05.01
EMI対策と対策部品
前田真一の最新実装技術あれこれ塾
(株)日本サーキット|KEI Systems

 

3.シミュレーションの限界

  EMIに対する規則がなかなか定量化されない原因として、シミュレーションツールの問題があります。伝送線路解析ではある程度技術が確立されていて、終端の必要性や、配線の長さ制限、等長配線の誤差などが定量的にシミュレーションで求めることができます。このため、レイアウト設計に対して、定量的な配線ルールが設定できます。

 それに対してEMIに対してはその原因と影響を及ぼすファクタが多いため、正確なシミュレーションが困難なのが現状です。たとえば終端の取れていない配線はアンテナになりますが、配線の長さや形状によって、共振周波数が変化します。この配線が共振する周波数のノイズ源があるとこの配線は大きな放射ノイズを発生しますが、異なる周波数のノイズ源に対しては放射しません。また、このノイズ源は配線の近くにある信号とは限りません。ノイズ源が遠くにあったり、場合によっては他の基板にある場合もあります。これはいろいろな経路を通って電磁ノイズが伝播するからです。信号のノイズであれば、その信号自体と近隣の配線、電源・グランドラインなど、ノイズの伝播経路はある程度絞れます。

 しかし電磁ノイズではこれら電気的な経路だけでなく、空中や筐体、ケーブル、ヒートシンクや基板取付金具、基板形状、電源やグランドのプレーン形状など、あらゆるものが、ノイズの伝播経路になる可能性をもっています。

 非常に多くの経路とエレメント、周波数を解析するためには、スーパーコンピュータの能力と、機械的形状、材質、電気時形状、プレーンや配線のすべてを入力することが求められます。たとえ、コンピュータの能力が向上しても、設計のたびに時間をかけて膨大なデータを入力することは現実的ではありません。

 このため、EMIシミュレータでは、限られたアンテナや部品程度では電気的、機械的データを正確にモデル化できれば、ある程度信頼性のある解析を行うことが可能です。しかし、基板やシステムとなると、規模が大きすぎ、ある程度のノイズ源となる場所や部品、アンテナとなる配線やケーブル、部品などは見当を付けることができ、ノイズの分布なども解析することはできますが、絶対的な値までは信頼性のある解析はできません。

4.テスト後のEMI対策

  これまでのノウハウやシミュレーションである程度考えられる放射ノイズ源を特定し、設計で対策しても、最後には実機で測定し、規格に収まっていることを確認する必要があります。

 電磁放射ノイズは基板回路の電気的対策だけで行うものではありません。ケーブルやハーネスの引き回し、筐体シールディングの構造など、機器全体で行う必要があります。

 設計段階で、これらすべての対策で放射ノイズを規格に収める設計が行われます。しかし、シミュレータがまだ十分にすべての条件に対応できていないため、実機測定で思いかけずに大きなノイズが発生しているのを発見することは良くあります。

図7 部品を実装していない

  この場合にはノイズの発生源を確認し、ノイズを抑える対応を取る必要があります。しかし、製品の出荷が迫っていたり、時間をかけて原因を追究しても開発のこの段階では根本的な対応ができない場合など、原因がはっきりせずに対処療法で対応することも多くあります。対処的な対応では、取れる対策は限られたものとなります。この段階では、筐体や基板の再設計は一般的には困難です。単純に終端抵抗の値を変えるだけであれば、基板のレイアウトは変更が無いので対応できますが、基板のレイアウト変更や筐体の形状変更は不可能です。

 基板によっては、後での対策ができるように終端抵抗やダンピング抵抗が追加できるように部品パターンを予めレイアウトしているものもあります(図7)。

 しかし、これは、基板の無駄な領域の浪費ですし、部品を実装しない場合には信号の特性を劣化させます。

 筐体では、コネクタや筐体間の接続を密にして、シールド効果をあげるための導電性ガスケットやICやケーブルに貼り付けて、電界と磁界の両方を遮蔽できるようにした特殊なシートを貼り付けたりします(図8、図9)。

図8 コネクタ取り付け穴と筐体を接触させるガスケット

図9 ICに貼った電界・磁界遮蔽シート

  このように対象に貼り付けるシールドはニアフィールドであるため、電界と磁界を分けてシールドする必要があります。また、ICに貼る場合にはICの放熱も考える必要があります。このため、熱伝導性の良いシリコンに磁界シールド用のフェライト粉や導電体粉を混ぜて熱伝導、磁気シールド、電界シールドすべてを満たすような部品も、高価ですが、あります。

 対処量療法ではこのような高価な部品を使わざるを得ない場合も多々あります。

■マエダ シンイチ

KEI Systems、(株)日本サーキット。日米で、高速システムの開発/解析コンサルティングを手がける。

 

 

 

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(株)日本サーキット|KEI Systems
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