電磁放射ノイズには他のメカニズムによって発生するノイズもあります。たとえば、同時スイッチングノイズではICの動作によって、電源電圧が変動します。電源電圧が変動すると、ICの信号、すべてが変動します。この信号ノイズが放射ノイズを引き起こします(図10)。
また、プレーン(面配線)の形状に小さな部分や、切り欠きなどがあると、その部分が特定の周波数でプレーン共振と呼ばれる共振を起こします。
このように電源電圧変動が原因となって発生する放射ノイズをコモンモード・ノイズと呼びます。コモンモード・ノイズは一度に多くの信号を変化させるので、大きなノイズの原因となります。
同時スイッチングノイズだけでなく、信号の変化が電源やグランドプレーンにノイズを誘導して、これがまた、信号に伝わって、と、信号と電源/グランドのコラボレーションで発生するノイズもあります。たとえば、プレーンの切れ目の上の層を高速信号が横断した場合や、差動平衡配線が不平衡で配線された場合などです(図11)。
図10 電源が変動するとICの信号すべてが同時に変動する
図11 信号とプレーンの結合の乱れ
4.ノイズの発生と放射
図12 ダイポールアンテナ
電磁ノイズは、ノイズの発生源と、そのノイズを効率よく外部に放射するアンテナが協調して外部へ放出されます。
アンテナは大きく分けると電界を効率よく放射するものと、磁界を効率よく放射するものの2つのタイプがあります。電界を効率よく放出する代表的なアンテナはダイポールアンテナと呼ばれるものです(図12)。これに対して、ループアンテナと呼ばれる形状は磁界を効率よく放出します(図13)。
電界と磁界は、放出されて波長の2π分の1までの距離に到達すると電磁波へと性質を変えて伝播します。この電界や磁界の性質をもっている区間を近傍界(ニアフィールド=Near Field)、電磁波に変化した後を遠方界(Far Field)と呼びます(図14)。
電界、磁界、電磁波はそれぞれ性質が異なります。
電界を遮蔽するのが電界シールド、磁界を遮蔽するのが磁気シールド、電磁波を遮蔽するのが電磁シールドです。一般に発生源から離れた場所に放射ノイズが届くときには電磁波となっているため、電磁シールドが一般です。
放射ノイズを削減するためには、
①放射ノイズを発生しない
②ノイズを放出しない
③ノイズを装置から外に出さない
の3つの対策があります。これらの3つの手法を組み合わせて、もっとも効果的な総合的な手法を使います。ノイズを外に出さない遮蔽では、電界シールド、磁気シールド、電磁シールドを効果的に使い分ける必要があります。
図13 ループアンテナ
図14 近傍界と遠方界
- 会社名
- (株)日本サーキット|KEI Systems /
- 所在地
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