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テクニカルレポート
2015.10.02
資源循環型社会のためのものづくり『ソーシャル・マニュファクチャリング』
東京造形大学

 

3. 生活者の意識

 ソーシャル・マニュファクチャリング社会の実現は、生活者の主体的な参加が不可欠である。そこで、20?60代の男女の各100名として合計1000名に対して生活者の意識調査をインターネットを用いて行った。

 まず、どのような製品が適しているかを聞いてみたところ、『大量に消費されているもの』(43.6%)、『大きくてじゃまのもの』(30.3%)、『すぐに消費してしまうもの』(13.5%)という結果になった。具体的な製品例としては、複数回答結果として、『パッケージ』(57.9%)、『家具』(32.4%)、『家電製品』(31.9%)があげられた。

 このうち家電製品は、携帯ゲーム機、デジタルカメラなどの小型を対象にリサイクルの制度化の検討がすすめられている。小型の家電製品は、手軽に使用できる、場所をとらない、持ち運びが便利、という製品機能によるメリットをもつ半面、小型のために容易に廃棄できてしまうことや、使用しないがとりあえず保管してしまいがちである、行き先が不明になる、などの、資源循環においてはデメリットの側面をもち合わせている。

 そこで、電動歯ブラシ、電気シェーバ、携帯電話・スマートフォン、携帯音楽プレーヤ、携帯ゲーム機、デジタルカメラなど13品目の小型家電製品を対象に、リサイクルのためのソーシャル・マニュファクチャリングへの参加意識や製品開発への要求を中心に質問を行った。また、調査結果の比較分析を行うために製品の修理時においても同様の質問を行いた。

1.分解の経験

 日常生活において、趣味や仕事での、分解を含めたものづくりは、対象者のうち46.2%が行っており、そのうち、86.8%は日曜大工、カルチャースクールでの製作活動などの趣味に6.57時間/月を費やしているのが現状である。メーカーによる国内でのものづくりは減少傾向にあるが、生活者のものづくりは旺盛である。やはり日本人はものづくりが好きなのであろう。

 過去に家電製品を分解したことのある経験は、『ディスクPC』(22.0%)、『ノートPC』(16.2%)、『ドライヤ』(12.4%)、『リモコン』(10.7%)と続く結果になった。家電製品を分解した人は予想以上に多くいることを感じたが、その理由としてはいずれも『点検や故障を修理するために分解した』というものだった。少し変わったところでは、携帯電話・スマートフォンのように、『製品に興味があったので分解した』が上位にあげられ、興味深い結果となった。

2.参加の可能性

 図3(a)に示す通り、製品が分解しやすく工夫されていたら、自分で分解して故障している部品を交換するかという、いわゆる故障時の分解の質問については、携帯ゲーム機では、『分解しない』は63.1%だった。『分解する』は36.9%となったが、内訳として『30分以内でできるなら分解する』が8.7%、『10分以内でできるなら分解する』が8.0%だった。分解する理由としては、『新しいものを購入すると価格が高いから』(26.6%)があげられている。また、『分解しない』のうち、『新しいサービスがあれば分解する』は12.0%で、そのサービス内容は『インターネットや電話で手順サポート』(52.5%)で、これらと合わせると『分解する』は(48.9%)だった。こうしたことから、イケアなどのインターネットを用いたサポート方法は大いに参考になるといえるだろう。

図3 生活者の製品分解の可能性

 これに対して、図3(b)に示す通り、製品が分解しやすく工夫されていたら、自分で分解してリサイクルのための分別をするかという質問に対しては、『分解しない』は42.8%だった。『分解する』は57.2%となったが、『10分以内でできるなら分解する』が13.0%、『5分以内でできるなら分解する』が12.5%となった。理由としては、『分別してリサイクルすることが大切だから』(50.5%)があげられている。また同様に、『分解しない』のうち、『新しいサービスがあれば分解する』は8.9%で、その内容は『エコポイントがもらえる』58.4%で、これらと合わせると『分解する』は66.1%と高い値だった。これらの調査結果は、いずれの製品においても同様の傾向を示している。

 このことから、故障時においてはリサイクル時と比較して分解する比率は低いものの、経済的な要因から分解するための許容時間が長いことがわかる。お金の支出を抑えるためなら時間がかかっても行うということがわかる。一方、リサイクル時の視点から見ると、故障時に比べて分解する比率は約20ポイント高いものの、分解するための許容時間は、最大1/3短いことがわかる。リサイクルには総論賛成するが、手間はかけたくないのが本音といえ、今の実情を表した結果といえる。

3.製品開発への要求

 リサイクルのためのソーシャル・マニュファクチャリングの実現で必要なのは、やはり、メーカーによる生活者でも簡単に分解できる製品を開発することである。では、どんな要求があるのだろうか。分解しやすい設計は、専門的には『分解性設計』という。分解性設計には、部品の配置、単位、形態について考察するフレームデザインと、部品の形状、材質、取扱条件などを具現化するパーツデザイン、部品間の結合方法の選定するジョイントデザインがある。携帯ゲーム機の調査結果を例に各デザイン別の要求事項を見てみよう。

 図4に示す通り、フレームデザインに関連する要求事項は調査結果から、『ふたを開けたら分解する部品がすべて見える工夫』が21.5%もあげられ、いずれの対象製品においても同様の傾向だった。したがって、フレームデザインにおいては、分別レベルを前提とした部品の『開口側への配置』や『同一作業面への集約』が要求される。

図4 ソーシャル・マニュファクチャリング製品への要求

ジョイントデザインでは、『家にある工具で分解ができる工夫』が19.8%だった。また、自分で分解してリサイクルのために分別するとしたら、どの工具がよいかという質問では、『ドライバ』は86.7%と高い値だった。このため、ジョイントデザインにおいて結合方法は、スナップフィット、ねじ止めに限定されることが理解できる。

 パーツデザインにおける要求事項は、『分解する部品にマークが表示されていて分解の順番がわかる工夫』23.1%となり、他の対象製品においても同様の傾向であったことから、部品への分解手順や材料名などの情報の表記が求められる。

 使用済みの製品、いわゆるリサイクルをする前の廃棄物を海外に持ち出すことは、国際的な秩序はもとより規制の観点からも許されない。その意味で、安価な労働力を求めて空洞化した生産と異なり、リサイクルは決して国内からなくならない『ものづくり』である。ソーシャル・マニュファクチャリングは、資源循環の実現とともに、新しいかたちのものづくりの定着として期待できるであろう。


<参 考 文 献>

山際康之:組立性・分解性設計、講談社(2011)

 

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