4.電源電圧の安定
図4 ループ特性
また、LSIの動作速度やバスの転送速度が上がるに従い、電源は使用する場所の近くで作る必要が大きくなりました。これは、電源電圧変動にすばやく対応し、電源電圧変動を小さく抑えるためです。
同じ目的で、大きなLSIが共通して同じ電源電圧を使用する場合でも一つの大型電源を多くのICが共通で使用する方式から、おのおのICがおのおの専用の小型電源をもつ方式に変化してきました。
電源装置や電源回路は必ず出力電圧を監視していて、出力電圧を自動的に補正する機能をもっています。電源回路自身も、電源電圧変動を察知してから、電圧を修正するまでの時間を短くする必要があります。
この電源回路が負荷電圧を関知し、出力電圧を変化させ、負荷電圧を正常に回復させる時間を電源のループ特性と呼びます(図4)。
電源電圧の補正を早くするためには、電源回路のループ特性だけでなく電源回路と負荷の距離が問題となります。電源装置と負荷が離れていると、電源変動を捉えて電源回路に伝えるための時間が長くなります。また、電源装置が電圧を修正してもその修正が負荷に届くまでも時間がかかります。
このため、負荷であるICのできるだけ近くに電源回路を配置する必要があります。消費電力の大きなLSIではICごとに専用の電源回路をもち、おのおののLSIの近くに配置します(図5)。
図5 LSIごとに電源を持たせるとループを小さくできる
電源回路をICごとに分散してもつとおのおののICによる電源電圧の変動が他のICの電源電圧に影響を及ぼさないようにできます。
このようにICごとに電源回路をもち、おのおの独立させてICの近くに配置する設計をPOL(Point of Load)と呼びます。
5.パスコン
LSIの消費電力増大と信号の高速化はLSIの電源電圧変動を大きな問題点としました。
問題が大きくなった原因は以下の3つあります。
①LSIの消費電力増大と信号の高速化により、電源変動が大きくなった
②信号の高速化とLSIの電源電圧の低圧化により、電源電圧変動の影響が大きくなった
③信号の高速化により、対策が困難になった
この電圧が変動してから、電源電圧がもとに戻るまでの間、負荷であるLSIの電源電圧を変動させないようにバイパス・コンデンサを使います。電源電圧の変動を抑える方法はコンデンサを使用するのがもっとも効果的な方法です。
コンデンサが電源電圧の変動を抑える働きは、どちらも同じことなのですが、電荷の移動とインピーダンスの2通りで説明されます。
LSIの電源ピンとグランドピンの間にコンデンサを挿入します(図6)。電源電圧が安定している時には直流なので、コンデンサのインピーダンスは無限大で電流は流れません。このとき、コンデンサの内部には安定した電荷が蓄えられています(図7)。
図6 コンデンサの挿入
電源電圧が急激に変化すると、コンデンサは内部の電荷を放出して電源電圧の変化を阻止します(図8)。
インピーダンスでいえば、急激な電源電圧の移動は、非常に高い周波数で電源電圧が変動することです。高い周波数の変動に対してはコンデンサのインピーダンスは非常に低くなるので、電流が流れても電圧変動は小さなものとなります(図9)。
図7 コンデンサに電荷を蓄える
図8 コンデンサが電荷を放出
図9 インピーダンスが低いと電圧変動は小さい
ここで問題となるのはLです。Lは周波数が高くなるとインピーダンスが大きくなるので、配線やコンデンサ部品がL成分をもつと、電源電流の変化に対して大きな電圧降下を発生させます(図10)。
図10 インダクタはコンデンサとLSIの接続を遮断する
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