③リチウムイオン電池から全固体電池へ
全固体電池は現在の電解液を使用したリチウムイオン電池の電解液を固体電解質に置き換えた電池である。図3に示すようにリチウムイオン電池では正極層と負極層の間に絶縁層としてセパレーターが存在し、内部は電解液で満たされている。
一方で、全固体電池ではセパレーターと電解液が固体電解質に置き換わる。固体電解質は絶縁体であるセパレーターの役割とイオン伝導体の役割を兼ね備えている。全固体電池では基本的には固体電解質が難燃性であるため、可燃性電解液を使用したリチウムイオン電池と比べて安全性の高い電池設計が可能である。
④全固体電池の特徴
全固体電池のメリットを表2にまとめた。リチウムイオン電池の電解液は低温時に凍結し、電池が機能しなくなるという問題がある。
全固体電池では固体電解質を使用するため凍結のリスクが低減され、電解液の沸騰も起こらないことから高温側では100℃以上の温度域で使用が可能である。また、高電圧化は電池重量あたりのエネルギー密度に寄与する。
例えば、重量が走行可能距離に反映される車載用畜電池においては重量あたりのエネルギー密度は重要な要素であり、電圧が高い電池ほど望ましい。
電圧は正極と負極の電気化学的な電位差で決定される。リチウムイオン電池では高電圧により電解液が分解してしまうため高電圧化ができないが、固体電解質に置き換えることでより電圧の高い正極および負極材料の組み合わせを選択できる可能性がある。また、全固体電池は輸率が1であり超急速充電が可能とされている。これらの点からリチウムイオン電池に代わる高性能で安全性の高い次世代電池として期待されている。
■ 固体電解質
全固体電池で重要となる材料は固体電解質である。代表的な固体電解質は硫化物系、酸化物系、水素化物系、塩素化物系でありその特徴を表3に記載する。
酸化物系は成型性の難しさから大型化ができず小型のウェアラブルデバイス用として製品化されている。硫化物系はデメリットとしては吸湿による有毒な硫化水素ガスの発生が挙げられるが、イオン伝導率がもっとも高く、リチウムイオン電池と同等のオーダーである。また、その成形性のよさから大型化しやすく車載用途として期待されている。
- 会社名
- (株)ケミトックス
- 所在地
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