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テクニカルレポート
2023.04.24
環境関連技術:リチウムイオン電池の安全性評価と全固体電池の燃焼性実験
(株)ケミトックス
坂本 清彦、 橘田 太樹

①リチウムイオン電池の原理と特性

1990年代からリチウムイオン電池は二次電池(蓄電池)として大きく発展してきた。その大きな特徴であるエネルギー密度の高さと繰り返しの充放電への耐性から、スマートフォンなどの携帯用電子機器のバッテリをはじめ、BEV(バッテリ式電気自動車)やHEV(ハイブリッド式電気自動車)などの電気自動車の駆動用バッテリ、更には住宅やオフィス用の定置型蓄電池まで、活用される幅を広げてきた。

その原理は、図1に示すように、正極と負極の間をリチウムイオン(Li)が行き来することで充放電を行っている。この充放電において、酸化・還元といった化学反応をともなわないため、層間化合物の結晶構造に損傷がない。したがって、リチウムイオン電池は充放電の繰り返しに耐えられる二次電池となっている。

リチウムイオン電池では、正極と負極の間はリチウムイオンが移動しやすい電解液で満たされており、さらに、正極−負極間の絶縁性を保ちつつ、リチウムイオンの通り抜けが可能なセパレーターと呼ばれる樹脂膜が存在する。リチウムイオン電池の内部を満たす電解液は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートといった有機溶媒が主成分となっており、これが石油類と同様の火災危険性をもった危険物となっている。つまり、リチウムイオン電池は安全性リスクの高い二次電池なのである。

図1 リチウムイオン電池の充放電の原理

 

②リチウムイオン電池による火災と安全性評価

図2に代表的な円筒型リチウムイオン電池の内部の構造を示す。円筒型リチウムイオン電池では、安全性を確保するために内部の圧力を調整するためのベント機構を備えている。さらに、電池温度の上昇にともなって電気抵抗値が高くなって電流の流れを制限するPTC素子を内蔵した電池もある。

図2 円筒型リチウムイオン電池の内部構造

 

しかしながら、それでも、まだ安全性リスクは完全に拭い去ることはできない。このため、リチウムイオン電池では充放電の性能評価とは別に、実際の使用環境で発生する安全性リスクから様々な安全性評価が要求される。

表1に示すように、リチウムイオン電池の安全性評価では、発火、破裂および漏液が合否の主な判定基準となっている。試験項目も温度、振動、衝撃、気圧といった外的要因から、過充電、逆充電(強制放電)、短絡といった誤使用によるアクシデントや、圧壊、釘刺しといった物理的なストレスまで、多岐にわたった評価が行われる。

なお、表1に示す評価項目は携帯用電子機器に搭載されるリチウムイオン電池の安全性評価を前提としているが、最下段の釘刺し試験は、非常に厳しい試験であり、携帯用電子機器では要求がなく、電気自動車の駆動用バッテリに対して要求される試験である。

これらの厳しい評価に合格しても、市場における様々なストレスや初期不良、経年劣化などにより、発火や破裂といった事故が発生しているのが現実である。米国では、電動スクータ用リチウムイオン電池の充電中に発火し、尊い人命が失われる事故も発生している。こういった事故を完全になくすためには、発火危険性が高い電解液を使用しない全固体電池の実用化が必須となる。

表1 リチウムイオン電池の主な安全性試験

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