はじめに
前回は『発表技法』について紹介した。今回は『調査技法』についてのお役立ち情報を紹介する。
何かを調査するにあたり、情報技術(IT)が進化する以前は大変な労力を要するものであった。開発技術者であれば、文献調査するのがもっとも一般的な手法ではないかと思う。
著者が入社した頃は、社内で『科学技術文献速報』や『特許公報』『公開特許公報』などが各技術部門に回覧されていた。 文献速報では日本のみならず世界で発表された技術の紹介が抄録形式で掲載されており、その情報を元に、さらに詳細を知りたい場合には文献の本文を取り寄せて内容を吟味していた。取り寄せた文献で疑問があれば、さらに深く調べる必要があり、これぞと思った文献に遭遇すれば、さらにその文献に引用された文献にもあたることになる。
筆者は、入社当時、樹脂の合成を担当し、油変性技術の確立が急務となっていたが、中国産桐油を、どのようにフェノール樹脂の骨格に取り込むかが技術的な大きな課題であった。そこで、科学技術文献速報で調べて、文献複写サービスを使い、まず国内に所蔵されている文献をあたった。 このおかげで、戦後に入手ができるようになったアメリカのPBリポートを含め、ヒントなる文献が得られ、高温で触媒下のもとでクッキング反応を実施して、二重結合の消失を追えば良いことがおぼろげながら判明した。これは、樹脂の合成のヒントとするためにまずは文献調査に多くの時間を使っての調査であった。
しかし、数ヵ月後、予期しないことが起きた。部門の図書委員から複写サービスの支払い金額が膨大になっていることが指摘された。なんと当時の初任給の約5倍の金額を使っていたのである。新入社員としてヘマをやってしまったな……と反省しつつ、これは上司から指摘されて大変なことになるなと覚悟していた。会社にも行きたくない、という心境にもなっていた。
上司から呼ばれて、「いろいろと文献を収集しているようだが、役に立つような文献は見つかったかね?」と聞かれ、「はい!ヒントになる文献を見つけ、現在、合成方法を検討しています」と回答したところ、複写経費については幸いにも不問にふされた。頭に重くのしかかったものが取れ、実験に励むことがでたのはいうまでもない。上司は経費よりも貴重な情報を取ったことが大事だ、と判断してくれたものと思う。
油変性の合成技術は、その後、新しい分析装置も開発されたことにより、反応の進行度を正確に調べることができ、触媒と反応温度を検討することによって、反応して高分子化していることが確認できた。そして新製品に適用して低温打抜性にすぐれる紙フェノール銅張積層板を商品化することができた。文献調査の重要性を肌で感じた例である。
一つの事例として文献の調査の重要性を紹介したが、実装関係であれば、エレクトロニクス実装学会誌、エレクトロニクス実装技術、学会の学術講演大会の予稿集、JPCA ShowやINTERNEPCONなどの展示会で開催されるシンポジウムやセミナー資料などが有効な資料となる。
調査には、この文献・資料のみならず特許公報を調べたり、他にも多くの方法があり、順番に身近なものから紹介する。
2.特許公報で調査する方法
特許について調査したい場合には、今は、特許庁のウェブ (http://www.jpo.go.jp/indexj.htm)で閲覧することにより、様々な調査が可能となっている。特許は、新しい技術を既存の技術と比較してどこが新しい技術であるかを述べているため、技術背景を容易に理解することができる点にある。
まず、特許電子図書館にアクセスして、特許検索を実施する場合には、FAQを参考にしながら検索すると良い。初心者向けの検索サイトも用意されているので比較的楽に利用できるのではないかと思う(http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl)
3.企業のカタログで調査する方法
情報誌によっては、特別にカタログコーナーを設けて企業のカタログを紹介しており、手続きすることによって入手することができる(写真1)。最近は、企業で発行している、たとえば環境報告書・CSR報告書なども一括手続きで入手することも可能となってきた(写真2)。
写真1 カタログコーナーの利用
写真2 入手した環境・CSR報告書
以下のサイトにアクセスして一括請求で要求すれば2?3日で入手が可能である。筆者はこの方式で年間、約200社程度の報告書を入手してチェックをしており、大変、便利で各社の動きを知ることができる。
●エコほっとライン
http://ecohotline.com/
●IRほっとライン
http://www.irhotline.com/
●CSR図書館
http://csr-toshokan.net/
- 会社名
- NPO法人 日本環境技術推進機構 横浜支部
- 所在地
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