ビジネスコミュニケーションを加速する
BtoB ニュース専門サイト | ビジコムポスト

テクニカルレポート
2024.04.24
バイオプラスチックをめぐる世界の規制動向と、各国の認証システムについて
(株)ケミトックス
藤岡 博明

②バイオプラスチックをめぐる各国の規制動向

(1) 欧州

まずは環境対策が世界的に見ても最も進んでいると思われる欧州の動向を見ていきたい。

欧州では、まず2018年発行の「欧州プラスチック戦略」や、翌2019年発行の「欧州グリーンディール」において、その中でバイオプラスチックの使用を拡大した場合に想定される利益とリスクの両面が指摘され、適切な運用のための規制枠組みを作ることが政策目標として明言された。

さらに2020年発行の「循環型経済アクションプラン」という文書においても、生分解性プラスチック、バイオベースプラスチックが実行的に環境負荷を低減するための要件や、消費者の誤解を生まない適切なラベリング方法に関する規制枠組みの作成が謳われている。

このように、欧州ではバイオプラスチックが、環境負荷低減のための重要なツールとして位置付けてられており、その使用拡大も推奨されているが、本当に効果を発揮するためにはより明確なルール作りが必要という立場を採っている。

こうした考えを基本に、より具体的な施策を作るための準備として、2022年に「バイオベース、生分解性、堆肥化可能(Compostable)プラスチックについての政策枠組みに関するコミュニケーション」という文書が発行された。これらのプラスチック材料の適切な管理、使用方法に関する理解を促進し、政策の方向性を提案する目的をもった文書で、現状法的拘束力はないが、今後のEUの動きを見定めるために有用な文書と言える。文書の要点は下記の通りである(図3も参照)。

図3 欧州 : バイオベース・生分解性・堆肥化可能プラスチックについての政策枠組みに関するコミュニケーション(2022)

 

第一に、バイオプラスチックの使用は、製品用途を限定し、かつ回収・処理システムを確立した上でないと、経済・環境いずれの面でも効果を発揮しないという立場が採られている。

第二に、短寿命・使い捨て用途(Single-Use)の食品容器や包装資材などにおけるバイオプラスチックの利用には必ずしも積極的な姿勢ではないという点に注意が必要である。ただ、これはEU内でも様々な意見があり、おそらくバイオプラスチックの業界団体などは、むしろ使い捨て用途におけるバイオプラスチックの使用を拡大したいという立場と思われる。そうしたステークホルダーの意向も踏まえて今後政策形成がされていくと考えられる。

第三に、現在民間主導となっている試験・認証・ラベリング制度について、EUレベルでの強制力のあるシステムの確立が求められている。認証取得について、現在は各企業の自己判断という側面が強いが、今後は何らかのかたちで義務化される可能性がある。

 

(2) 米国

米国では民主党政権になってからプラスチック汚染に関する対策検討が本格化し、米国環境庁(EPA)が主導するかたちで、2023年夏に「プラスチック汚染を防ぐための国家戦略ドラフト」という文書が公開された。連邦全体におけるプラスチック汚染対策の方針を定めるための最初のアクションという位置づけで、現在は収集したパブコメのレビュー中である。

この文書の中において、数ある対策候補の1つとして、認証された堆肥化可能製品に対する、より効率的な堆肥化、分解プロセスの確立、という項目があり、今後堆肥化可能プラスチックの普及、認証取得拡大の動きが出てくると思われる。

ただし、現状はあくまで今後の戦略に関する提案という段階で、バイオプラスチックの使用について、連邦レベルにおける具体的な指針や基準は今のところ確立していない。

 

(3) 日本

日本はプラスチックの消費量が世界的に見ても非常に多いという状況もあり、政府としての対策検討が積極的に進められている。

2019年に「プラスチックの資源循環戦略」という文書が策定され、その中で3R+Renewableの基本原則の下、再生材・バイオプラスチックの利用拡大を目指す方針が明言された。

その流れを受けて2021年に「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」が成立し、付属文書の「バイオプラスチック導入ロードマップ」において、原料多角化、国内製造拡大、製品開発、リサイクル調和性の考慮などが謳われている。またその文書の中で同時に、生分解性プラスチックとバイオベースプラスチックのそれぞれに適した用途例が示されている。基本的な方向性は欧州の動きと重複する部分も多く、例えば生分解性プラスチックについては用途を限定した上で普及促進をすべきとされている。一方、容器包装類について、欧州では慎重な立場の見解も見られるが、日本は政策としてもバイオベースプラスチックを推奨する方向性が表明されている。

 

(4) 中国

中国は世界最大のプラスチック消費国ということで、プラスチック汚染は対外的な評価に直結することから、近年かなり真剣に対策が検討されているようである。

2020年に「プラスチックの汚染管理のさらなる強化に関する意見」という文書が公開され、一部のプラスチック製品について段階的に製造、販売、使用を禁止または制限する方針、及び使い捨て買い物袋や食品包装フィルム、農業用マルチフィルムなどでの生分解性プラスチックの使用拡大を目指す方針が提案された。

それを受けて2021年には「プラスチック汚染防止行動計画」というアクションプランが策定され、前年の提案を踏襲する形で、プラスチック製品のリサイクル性を高め、使い捨てプラスチック製品の使用削減を継続的に推進することが明確に打ち出されている。

全体として、生分解性プラスチックへの代替は積極的に目指されており、実際、中国企業による生分解性材料の認証取得件数は世界的に見ても非常に数が多い状況である。また、規格や認証制度の整備も検討されており、関連するISO規格の中国GB規格化といった具体的なかたちで進められている。

会社名
(株)ケミトックス
所在地