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テクニカルレポート
2025.04.23
デジタル式音響コム型AEセンサ(QDセンサ®)の開発と そのインフラへの適用について
第3回 リバーエレテック社製の デジタル式音響コム型AEセンサ(QDセンサ®)の開発について (その3)
(株)武藤技術研究所
武藤 一夫

⑧従来型AEセンサと試作QDセンサ®(第3世代)との特性確認試験

従来型AEセンサと試作したQDセンサ®(第3世代)の特性確認試験として、ここではFace-to-Face法を用いて両者の特性確認試験を行う。

図9は従来型AEセンサと試作したQDセンサ®(第3世代)の特性確認試験のブロック図を示す。センサと媒体との間は信越化学のシリコンオイルによる湿式で行っている。使用した主な装置の仕様は下記の通り。

図9 従来型AEセンサ(NF回路ブロック社製AE-901U)とQDセンサ®(第3世代)の特性確認試験のブロック図

 

1) 信号発生器

アンリツ製MG2502B、出力 : 正弦波+20dBm(インピーダンス50Ω)

 

2) 送信側センサ

富士セラミックスAE-503S(共振型AEセンサ、共振周波数kHz : 50±20%、感度dB(0dB=1V/m/s): 77±3、使用温度範囲℃ : −20〜+80、形状mm : 直径φ20×高さH20mm、質量gm : 30)

 

3) 受信側センサ ① 

QDセンサ®(第3世代)

 

4) 受信側センサ ② 

NF回路ブロック社製AE-901U(共振周波数kHz : 70、出力形式 : 不平衡(片線接地)、感度不記載、形状mm : 直径8.5×高さ 22、使用温度 : −20℃〜+80℃)

 

ここでは、周波数を掃引して出力レベルがどの程度変化するのかを測定し、確認した。ただし、ここではあくまで傾向を見るために行った実験であるので、送信側と受信側の位置関係と万力による押し付け力は厳密ではないないことを付言しておく。

図10は、送信側と受信側AEセンサの特性図を示す。

図11は、図9で示した装置で測定した受信側NF設計回路社製AEセンサAE-901Uの特性図を示す。これは、図9の装置で測定したQDセンサ®(第3世代)の特性図である。

図10のグラフは表4中のCH12〜CH22のピーク電圧 ・ Q値に対応する周波数をプロットして1つのグラフにしている。

感度の落ち込みが激しいのは、パッケージなどの設計の影響でQDセンサ®(第3世代)が不得意とする周波数だったと考えられる。

図10 送信側(富士セラミックス社製AE-5035)と受信側(NF回路ブロック社製AE-901U)の特性図

図11 図9の装置で測定した受信側QDセンサ®(第3世代)の特性図

 

表4は、今回のQDセンサ®(第3世代)の中心周波数などの特性表を示す。

表4 QDセンサ®(第3世代)の中心周波数などの特性表

 

ここで、表4に示した用語の説明をする。中心f[kHz]とは、中心周波数で、QDセンサ® (第3世代)の検出電力がピークになる周波数である。Q値概算とは、Q値=中心周波数÷半値幅の式で求められる値で、その値の大きい方が他の周波数の選択性がいいことを示す。±Δfとは、検出電力がピーク時の半分になる周波数の幅 (半値幅)である。出力Vp-pとは、ピーク周波数での電圧[V]のことで、正弦波形のPeak-to-Peak値である。レベルとは、隣接CHがクロストークして出力する電圧[V]である。倍率とは、クロストークノイズの出力電圧/本来の信号からの出力電圧の値である。[dB]とは、倍率の表記方法の違い、20×log10(倍率)[dB]である。感度については表1の出力が大きいものが良い。また、Q値については、周波数に依存しない仕上がりとなっている。

図12は、表4に示した今回のQDセンサ®(第3世代)のCH12からCH22までの各チャンネルの中心周波数における波形とその周波数範囲内のNF設計回路社製AEセンサAE-901Uの周波数の波形とを対比した周波数特性図を示す。各図の横軸は周波数、縦軸は出力電圧を示す。赤線がNF設計回路社製AEセンサAE-901Uの周波数波形で、青線がQDセンサ®(第3世代)の周波数波形である。

図12中の破線は、AE-901Uで発生したAE信号を示す。実線は、QDセンサ®(第3世代)の出力で、各CH設計付近の周波数でピークをもっている。▲印、×印は、それぞれ隣のCHのセンサの出力で、クロストーク(漏れ)を示す。

図12 QDセンサ®(第3世代)のCH12からCH22までの各チャンネルの波形と
NF設計回路社製AEセンサAE-901Uの波形とを対比した周波数特性図

 

またここで、図13は、チャンネルCH14を例にとって、表4と図12(c)との関係、及び図12(c)の見方について示す。 まず、図13の上部図12(c)を見る。半値幅(±Δf)については、検出電力が中心周波数のピーク時の半分になる周波数の幅で、Ch14の場合では中心周波数41.648kHzの±0.04、つまり±1.66592kHzで、39.98208kHzから43.31392kHzまでの信号を検出するということで、検出精度を表すものと考えて良い。

図13 表4と図12(c)との関係および図12(c)の見方

 

AE901Uの場合、フラットになっていることから、検出精度の判定ができない。

出力Vp-pについては、ピーク周波数での電圧[V]のことで、正弦波形のPeak-to-Peak値で、これは検出感度と考えて良い。CH14の場合は1.14Vの電圧出力で、AE901Uの場合は0.04Vである。レベルと倍率及び[dB]については、上述した通りである。

以上、まとめると図12の波形から、QDセンサ®(第3世代)の各チャンネルにおけるピークは設計時狙った中心周波に±0.04の程度の範囲で一致しており、また出力Vp-pの電圧値も良いことがわかる。たとえば、図12(c)では、従来のAEセンサよりも出力電圧が0.9Vも高いことから、検出感度は1.14/0.04=28.5倍良いことがわかる。また、周波数の検出性精度は、比較できないが、従来AEセンサのAE901Uセンサよりも新規開発したデジタル式音響コム型AEセンサのQDセンサ®(第3世代)の方が優れていることが理解できよう。

また、図12の図(a)から(k)までに示したように、QDセンサ®(第3世代)のCH12からCH22までの各チャンネルのピークは表4に示した中心周波数、Q値概算、半値幅、出力Vp-pに一致しており、ほぼ設計値通りにできていることがわかる。一方、NF設計回路社製AEセンサAE-901Uの波形は周波数特性図から共振周波数が70kHzとなっているが、図12(k)から共振のピークは77.95kHz以上にあるようである。

次回は、その新しいデジタル式音響コム型AEセンサであるQDセンサ®(第3世代)の進化の過程について見ていく予定である。 

 

<参考文献>

1)リバーエレテック社Webサイト、

https://www.river-ele.co.jp/ja/

2)武藤一夫、図解わかる機械加工、共立出版,2012

3)武藤一夫、図解わかる機械計測、共立出版,2016

4)エヌエフ回路Webサイト、

https://nf-netshop.jp/product.php?id=307

5)富士セラミックスAEセンサ、共振型AEセンサWebサイト、

https://www.fujicera.co.jp/wpkanri/wp-content/uploads/2023/11/Resonance-model-AE-sensors_2023.11JE.pdf

会社名
(株)武藤技術研究所
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