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テクニカルレポート
2025.04.23
デジタル式音響コム型AEセンサ(QDセンサ®)の開発と そのインフラへの適用について
第3回 リバーエレテック社製の デジタル式音響コム型AEセンサ(QDセンサ®)の開発について (その3)
(株)武藤技術研究所
武藤 一夫

①はじめに

第1回は、リバーエレテック社とその技術について、従来型アナログ式AEセンサの概要とその問題点について報告をした。第2回は、水晶発振子の専門メーカーであるリバーエレテック社と共同開発したデジタル式音響コム型AEセンサ(QDセンサ®)の開発、特に試作第1号QDセンサ®について報告した。

本稿では、QDセンサ®の開発の過程として、今回は特に第1世代から第3世代までについて報告する。

 

② QDセンサ®の開発の過程の様子

図1は 、今回開発しているQDセンサ®の第1世代から第3世代までの開発過程の様子を示す。前回の記事の第1次試作では、図1中の第1世代の設計製作の様子を示した。ここで、図1中のQDセンサ®の各項目を見る。

図1 QDセンサ®の第1世代から第3世代までの開発過程の様子

 

1. 検出感度の方向につい

第1世代から第2世代までは水平方向で、第3世代以降から垂直方向である。

 

2. 素子設計について

カンチレバーの振動FEMシミュレーション解析は、第1世代から実施している。対応周波数については、第1世代から第3世代までは4kHz〜300kHzの周波数範囲を、全65CHで検出する。その内訳として、4kHz〜20kHzまでは4から2kHzおきに6、8、…、18、20、そして25kHz〜300kHzまでは、25から5kHzおきに30、35、40、…、300kHzを検知する。

 

3. 1素子のCH数について

第1世代では22CHで、4kHz〜300kHzの周波数範囲を3つの素子で検出し、第2世代〜3世代では1素子22CHで、4kHz〜300kHzの周波数範囲を5つの素子で検出する。

 

4.素子サイズについて

第1世代〜3世代では5×5.6mmというサイズとなった。

 

5. パッケージについて

第1世代では封止なしで最終サイズ : 32×25mm、第2世代〜3世代では封止なしで最終サイズ : 32×30mmである。

 

③カンチレバーの振動FEMシミュレーション解析

上記2.で述べたカンチレバーの振動FEMシミュレーション解析について、簡潔にみておく。

本QDセンサ®の開発にあたっても、試作とテスト(実験)を繰り返す開発から、積極的にシミュレーションを活用し試作とテストを減らし、開発期間やコストを削減しようとしている。

特に第3世代から、現場からの要求でQDセンサ®の振動方向を人間の直感に合わせて水平方向から垂直方向に変更した。振動問題では、固有値(固有振動数)、減衰、固有モードの3つが重要であるが、本開発の場合、設計する固有値(固有振動数)が明らかであるので、対象となるカンチレバーの周波数が何Hzで振動するのかがわかっている。

また、減衰からは、どれだけ振動が持続するか、あるいは、どれだけで振動が収まるかもわかる。

そして固有モードからは、カンチレバーがどのように振動するかがわかる。

図1の第3世代のQDセンサ®の基本設計におけるカンチレバーの振動FEMシミュレーション解析の一例を図2に示す。

図2 第3世代のQDセンサ®の基本設計の一例

 

カンチレバーの左片端に固定条件の境界条件を適用している。FEMシミュレーション解析によって、共振時の変形や変位分布、応力分布などを解析結果として見ることができる。ここでは、振動FEMシミュレーション解析から、目的の検出周波数に対するカンチレバーの長さ、厚み、幅、溝幅、溝深さといった形状の最適な諸元を決定している。

こうしたFEMシミュレーション解析によって、表1に示す第3世代のQDセンサ®の基本設計数値を求めてゆく。今回の第3世代のQDセンサ®のCH数は1から55までである。周波数はE12系列に従って、それぞれのカンチレバーの長さ(µm.1/1,000mm)を設計している。

表1 第3世代のQDセンサ®の基本設計数値

 

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