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テクニカルレポート
2019.06.21
シリーズ・さまざまな研究所を巡る(第7回)
鉄道総合技術研究所(その2)
厚木エレクトロニクス

 

 

2.早期地震警報の高度化

 巨大地震が発生した場合、走行中の列車はすぐに止めなければならない。

 気象庁から緊急地震速報が配信されているが、それとは別に鉄道総研でも速報を出すための技術開発が続けられている。

 鉄道の地震計でP波を捉えて、それより遅れて来るより大きなS波を予測するわけである。

 従来のシステムでは、通常、初期微動2秒間分のデータに基づき地震諸元を推定している。

 より早く・正確に警報を出すために、P波初動1秒間の上下動加速度データに1次関数をフィッティングさせ、その傾きから震央距離を推定する手法(C-Δ法)を開発した。

 また、新しい震央方位推定手法としてP波変位波形の最初の半波長分のデータ(可変長データ)に対して主成分分析を行なう手法(可変ウィンドウ法、図4)を開発した。

 


図4 新しい震央距離推定手法:可変ウィンドウ法(資料は鉄道総研提供)

 

 これらの手法を組み合わせ、最短1秒のデータで警報を出力することが可能となった。

 さらに、システムの信頼性向上を目指したノイズ識別手法も開発され、これらの新たなアルゴリズムを実装した地震計が現在、鉄道で活用され始めている。

 

 

3.地震対策ダンパ

 地震対策ダンパは、常時は通常の左右動ダンパと同様、乗り心地の向上のために機能し、地震時には極端に大きなピストン速度に応じて、より大きな減衰力を発生し、地震動による大きな車体の振動を減衰して脱線に対する安全性が向上する。

 この地震対策ダンパでは、特別な制御装置などは必要なく、現行の左右動ダンパとの容易な置き換えが可能である。

 電磁弁付きと電磁弁が付いていないタイプの地震対策左右動ダンパの写真を、それぞれ図5に示す。

 

図5 2種類の地震対策ダンパ 地震対策ダンパの外観(フルアクティブ制御用電磁弁付き) 地震対策ダンパの外観(パッシブ型)

 

 大型振動試験装置による実台車加振試験(図6)の結果、地震対策ダンパを装備した場合には、現行のダンパを装備した場合に比べ、大きな加振振幅まで輪重がゼロにならない(=車輪が飛び上がらない)ことが分かり、脱線に対する安全性が向上することが確認された。

 また、新幹線車両に実装し最高速度320km/hまでの走行試験の結果、フルアクティブ振動制御に対し正常に動作すること、現行の左右動ダンパを装備した場合と変わらない乗り心地を実現できることが確認された。

 

図6 大型振動試験装置による実台車加振試験の様子

 

 

4.地震の被害の軽減

 地震が起こった場合の被害を軽減することも重要で、そのための研究が行われている。

 一例として河川橋脚や店舗利用高架橋などで、一般的な耐震補強の実施が困難な場合、地震エネルギーを吸収する制震ダンパを適用する事例が増加している。

 橋脚上部に対する部分的な工事のみで大幅な耐震性の向上が可能である。

 図7のような制震ダンパによる補強を行う際に必要となる設計法と設計手引きを作成した。

 

図7 制震ダンパによって大幅に耐震性が向上する(資料は鉄道総研提供)

 

 

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厚木エレクトロニクス
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