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テクニカルレポート
2019.06.21
シリーズ・さまざまな研究所を巡る(第7回)
鉄道総合技術研究所(その2)
厚木エレクトロニクス

 

 

 鉄道総研では、列車の安全運転をさらに高める技術や、乗り心地を良くする技術など非常に多くの研究が行われている。

 とてもすべてを紹介できないので、そのうちのいくつかを取り上げてみる。

 鉄道総研の非常に大きな業績は、リニアモーターカーの技術の開発であることはいうまでもない。

 今回の最後にリニアモーターカーを取り上げることにする。

 


1. 乗り心地の改善

 

 列車の速度が高速になるほど、左右、前後、上下への振動が多くなってしまう。

 そこで、これらの振動を軽減して乗り心地を良くするため、車体の床下にはバネやダンパが使われており、その構造を図1に示す。

 

図1 車体の振動を防ぐバネとダンパ

 

 これらの改善には種々の研究が行われているが、一例として上下制振制御システムを示す。

レールの継目通過にともなって発生する1~2Hzの上下方向の車体剛体振動が乗り心地に大きな影響を与えている場合がある。

 このような振動に対して、台車枠と車体の間のばね系(2次ばね系)に制御技術を導入することにより上下の振動を抑制するシステムを開発した。

 可変減衰機能を持つ上下方向の油圧ダンパを空気ばねと並列に取り付け、このダンパの減衰力を加速度センサで測定した車体の振動に合わせて制御し、振動を抑制する(図2)。

 

図2 上下制振制御システムの構造(資料は鉄道総研提供)

 

 

2. 安全運転に関連した研究

 

 列車を安全に走らせることは、最重要な研究テーマである。

 昔から各種の安全対策が行われているが、まだまだ研究テーマが多い。

 そのいくつかを紹介する。

 

1.橋梁メンテナンスのIoT化

 橋梁を列車が通過する時、振動発電を利用してセンシング結果の無線送信を行うモニタリングシステムが開発された。

 無線で送信されたセンシング結果は、橋梁上を通過する列車で受信する。

 疲労き裂などの異常が発生していれば、センシング結果の無線送信を図3のように受信して対策を取ることができる。

 


 

図3 振動発電を利用したセンシングデータを無線で橋梁を通る列車に送るシステム(鉄道総研提供の資料を元に筆者が作成)

 

 試作したプロトタイプシステムを実際に橋梁に設置し、列車通過時の動作を検証した。

 振動発電で得られた電力は、電気二重層キャパシタに充電することで、得られた電力のみで、2年以上にわたり測定が継続して行われることを確認した。

 現在、一般社会でもトンネルや橋などの社会インフラのIoTによるメンテナンスが話題となっているが、エネルギーハーベスティングを用いた今回の研究は、その先駆けといえる。

 

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厚木エレクトロニクス
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