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スペシャルインタビュー
2022.07.01
技術伝承や自動化へのニーズにも対応するアイトラッキング
〜機能をアップしたグラス型第三世代モデルを新たにリリース〜
トビー・テクノロジー株式会社
代表取締役社長 蜂巣 健一 氏

アイトラッキング技術を活用したマーケティングなどで、事業を展開するトビー・テクノロジー株式会社。最近では、技術伝承や自動化へのニーズにも対応する同社の概要や事業展開、新製品を含む製品群の特徴などについて、代表取締役社長 蜂巣 健一 氏にお話しを伺った。

 

■御社の概要などについてお聞かせください

 

蜂巣 : 当社は、スウェーデンに本社を置くアイトラッキングメーカーの日本法人で、2008年4月に設立しています。アイトラッキングとは、センサを使い「人がどこを見ているのか」を測定する技術で、具体的には2つの眼球の場所と向きを測っています。

この技術は、元々学術研究の分野で強く、世界規模で年間約3000本のアイトラッキングに関する論文が発表されており、現在も増え続けている状況です。その理由の1つとして、「角膜反射法」が開発されたことが大きな要因となり、それにより益々手軽なものとなって使われる論文が増えているようです。分野としては、医学/神経科学/心理学などの眼球そのものに関する分野もあれば、眼球の動きから「人が何を認識しているのか」を可視化する分野や、その他にも運転、リーディング、マーケティングなど多岐に渡っています。

「角膜反射法」という技術は、端的に説明すると「眼球に近赤外線を当てて、瞳孔点の位置を認識し、眼球の様子を撮影して解析する」という技術になります。そのため、いきなり黙って視線を撮ることができないので、近赤外線を発光するLEDと眼球の動きを撮影する赤外線カメラといったハードウエアが必要とされます。

アイトラッキングには、「角膜反射法」以外にも色々な方法論があり、よく聞かれると思いますが「画像解析」もその1つで、その他にも「強膜反射法」などがあります。その中で「角膜反射法」は、当社を含めたアイトラッキングの上位メーカーが採用し、アイトラッキング市場の約90%で使われており、現時点では市場の主流となっています。

アイトラッキングが活用されている分野としては、大きく分けて“リサーチ”と“インタフェース”といった2つの分野があります。

調べる“リサーチ”に関しては、先程お話しした学術研究の分野で強く、日本国内だけでも国公立大学や私立大学、研究所を含め、のべ300機関ほどの大学、研究所で使われており、世界規模ではのべ2500機関ほどの大学、研究所で使われています。また、学術研究から派生し、消費者行動の分野でも幅広く使われています

さらに、最近ホットなところでは、技能伝承といったことにも使われるようになっています。これは、色々な分野で熟練者の方と非熟練者の方がいらっしゃいますが、視線でその違いを抽出して熟練者の技能を可視化または数値化し、それに基づいて非熟練者の方を評価/教育していこうという流れになります。そこからさらには、「自動化していくためには何に気を付けていけばよいのか」など、様々な分野の自動化への取り組みにも派生している状況です。そして“インタフェース”に関しては、視線で操作をするといった「マウス代わりに視線を使おう」という分野になります。

これは以前から福祉機器で利用されており、現在はマスマーケットにも派生しています。マスマーケットでは視線だけでなく、モーションや音声、タッチなどと組み合わせた利用方法で使われており、PC/VR/スマートフォンなどに実装されています。

その中で当社は、“リサーチ”と“インタフェース”の両分野で事業を展開しています。

 

■日本市場での事業展開などについて、もう少し詳しくお聞かせください

 

蜂巣 : 設立当時は、“リサーチ”についてはほぼ学術研究のみで、“インタフェース”については福祉に特化した事業展開で、これは日本市場だけでなく、グローバルでほぼ同じような流れになっていました。

そして2011年頃からは、第一世代となる自社のグラス型製品をリリースし、ここで初めて消費者行動に火が付き始めてきます。それまでは、モニタ用製品を使って画面にパッケージの写真を映したり、棚の写真を映したりして行っていたので、リアリティがあるのかないのか判断が付きにくい状況でした。それが、グラス型になったことで、「実際のコンビニエンスストアで実証を行ってみようか」など、消費者行動が盛り上がっていきました。

それと同時に、消費者行動のお客様の中には、あまりデバイスには興味がなく、答えだけが知りたいというケースもありますので、そういったお客様には分析支援といったサービスの提供をスタートさせています。

また“インタフェース”は、設立当時から長きにわたり福祉分野に特化していましたが、2015年頃からゲーム用のPCに当社のアイトラッキング技術が搭載されるようになり、少しずつ広がりを見せ始めていきました。

そして、2017年には当社のアイトラッキング技術が、VRメーカーであるHTCのヘッドセットに搭載されるようになり、これが1つのきっかけとなって「VRにアイトラッキングは必須」といったことが市場に流れていきました。そこから、当社のインタフェース事業が花開くようになっています。ゲーム機のプロトタイプをスタートに、VRとゲームが合体して火が付き現在に至っています。

それから、日本市場が優位に立って展開している分野としては、日本発となる技能伝承になります。これは我々がやり始めて、いま我々が海外法人の方々に色々と教えています。その中で、特に盛んなのが自動車であり、自動車産業は日本の製造業の3、4割を占めているので、そこで技能伝承を育みながら、我々が世界に広めている状況です。スタートは自動車産業でしたが、最近ではエレクトロニクス産業/インフラの保守/鉄道の運転手や車掌の育成/サービスの接客など、幅広い業界で技能伝承のニーズがあります。

また、エンドユーザーのスマートフォンや業務端末、ATM、券売機などの使い易さを調べる取り組みなども行っており、インタフェースの改善に繋げています。

あとは、自動化への取り組みも進めています。自動化する前提で、「どのように自動化すればよいのか」といったテーマをもったお客様に対して、我々は人と自動化の役割分担をコストや品質の両面から提案できるようなことを行っています。

会社名
トビー・テクノロジー株式会社
所在地
東京都品川区