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スペシャルインタビュー
2023.11.15
セキュリティ関連機器で培われた技術力を活かしロボット台車を開発
〜自社生産により低コストで耐久性に優れた製品開発を目指す〜
株式会社 三矢研究所
代表取締役社長 古澤 利夫 氏

電子機器の研究/開発、防犯機器/システムの開発製造などで事業を展開する株式会社 三矢研究所。最近では、セキュリティ関連機器で培われた技術やノウハウを活かし、ロボット台車の開発をスタートさせた同社の概要や事業内容などについて、代表取締役社長 古澤 利夫 氏にお話を伺った。

 

■御社を設立された経緯や沿革などについてお聞かせください

 

古澤 : 当社の創業者である私の父は、元々大手電機メーカーにエンジニアとして勤務しており、当時はあまり世に出ていなかった留守番電話や電動歯ブラシといった、未来志向の製品開発に携わっていました。

そのような中、オーディオ機器の対米輸出の視察に訪れた米国で、経済の発展ぶりや人々の豊かで自由な暮らしにカルチャーショックを受け、これが起業を後押しするようなきっかけになったようです。

そして1965年4月に、当社の前身となる有限会社三矢電気を創業し、父と母と父の元同僚の3名で始めたことから、それが社名の“三矢”に由来しているようです。また創業当初は、対米輸出のカーオーディオ開発を依頼され、それをビジネスの柱にしていました。

1968年4月には、社名を有限会社三矢製作所に変更しています。そして、大手商社からカーオーディオ関連機器の大型受注をいただき、色々と苦労もありましたがその大手商社からの支援もあり、何とか会社の経営を軌道に乗せることができました。

そして1970年11月には、現在の株式会社三矢研究所に改組しています。また、当社にとってメインの得意先となる、大手警備会社との取り引きをスタートさせました。当時、人的警備から機械警備に移り変わる過渡期で、「火報盤の警報をリアルタイムで入手できる方法はないか」という依頼を受けたのがきっかけになります。

当社では、カーオーディオ関連機器の開発/設計/製造に従事してきた実績があるので、そのノウハウを活かした火災通報装置『ソノリレー』を開発し、全国規模で得意先の大手警備会社に普及していきました。そして、これが当社初のヒット製品になりました。

また当社では、父の方針により製品化から納品まですべて自社内で対応しており、それを実現できたのは当社の製品は「壊れない」という実績があったからだと思います。実際に、50年前に納品した製品が、今でも稼働しているケースもあります。

しかし、カーオーディオ関連機器の事業とともにセキュリティ関連機器の事業を進めていく中で、小型製品の量産が急務となり、元々自社内には量産に必要なラインやスペースがなかったので、量産化に対応する新たな製造拠点を確保する必要性が生まれてきました。

そのため、家族で話し合いを行った結果、北海道苫小牧市で親族が経営していた旅館の廃業を決断しました。そして1976年3月、その跡地にグループ会社となる三矢電子工業株式会社を設立して、旅館を経営していた親族が同社の社長に就任し、当社の量産工場として機能していきました。

また私自身は、父の意向で大学を卒業した1979年4月に当社へ入社しています。他に選択肢がなかったというのが実情ですが、小さい頃から父の開発作業を見ていたので、機械や電気への関心は非常に強くありました。

そして、警備業界の発展拡大期とも重なり、セキュリティ関連機器の事業が好調に進み、1986年7月に川崎北税務署より優良法人の認定を受けています。さらに1988年1月には、本社ビルの新築が完成しました。新社屋の地下には、セキュリティ機器製造に欠かせない検査機器を配備し、高度な開発依頼に対応できる体制を整備しました。

また同年11月には、共同出資の子会社として株式会社エフ・プランニングを設立しています。同社は当社の直系子会社という位置づけで、当時は防犯/警備の要となる「鍵」の設計/製造などを行っていました。

そのような中、取り引き先の大手警備会社がホームセキュリティへの事業展開をスタートさせ、それに伴い当社にもホームセキュリティ関連機器の開発依頼があり、新製品開発に力を注いでいきました。そして、1998年4月に当社最大ヒット製品となるホームセキュリティ『S-761』を開発しました。

これにより、新たな市場開拓が進んでいき、会社自体も飛躍を遂げていきました。そのような好調期の中、父が病気で他界し、当時技術部長であった私が1999年2月、社長に就任しています。

そして、セキュリティ関連事業も少しずつ落ち着きを見せ始め、次世代のセキュリティシステムに目を向けるようになっていきました。私の考えでは、それまでのセキュリティシステムは壁などに設置するケースが多く、時代が変わるとこれが動いたり、飛んだり、這いずったりするようなロボットになるとイメージしていました。

しかし、いきなりロボット開発を始めるのは、ノウハウもないので難しいと判断し、ロボット開発への布石としてまずは大きなラジコンカーの開発を始めました。基本的には、エンジン以外すべて自社で設計し、そこで色々とノウハウを蓄積していきました。

また、ドローンの開発にもチャレンジし、こちらはセキュリティ関連ではなく測量用途で開発しましたが、こちらでも色々とノウハウを蓄積することができました。さらには、セキュリティ機器開発で培った技術力を応用し、高速道路のサービスエリアに設置されているトイレの改革に関連する機器開発なども手掛けていきました。

そして、2020年11月には設立50周年を迎えています。最近では、ロボット開発の布石として開発した大きなラジコンカーなどが、どちらかというと我々の名刺代わりになり、「これができるならこれもできるのでは?」といった感じで、幅広い分野にビジネスの幅を広げている状況です。

 

会社名
株式会社 三矢研究所
所在地
川崎市麻生区