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スペシャルインタビュー
2024.02.15
環境負荷の低減を目指した 試作品/製品づくりを推進
〜金型設計から射出成形まで一貫してサポート〜
株式会社 ミヨシ
代表取締役 杉山 耕治 氏

プラスチック射出成形金型製作、射出成形、治工具製作で事業を展開する株式会社 ミヨシ。今回は、同社の概要と事業内容、手掛けられた製品や現在力を入れている取り組みなどについて、代表取締役 杉山 耕治 氏にお話を伺った。

 

■御社の沿革や概要などについてお聞かせください

 

杉山 : 当社は1972年に、創業者である私の父が前身となる杉山彫刻所を設立したのが始まりになります。当初は、工業関連の彫刻加工を生業に個人事業として一人でスタートしましたが、その後2名の技術者と共に1982年に有限会社三善工業を設立しています。

当時は、主業務としてプラスチックなどの試作品をモックアップでつくっていましたが、それと同時に量産用の金型ではなく、試作用の金型を様々な材質で研究開発していました。色々と試す中、一番良かったのはアルミ型だったようですが、その当時アルミ型でつくる金型メーカーはほとんど存在しなかったようで、ノウハウなどもなく最初は苦戦したようです。材料メーカーと金型材質に適したアルミ素材とその加工方法を開発し、日本でアルミ型をつくったのは、当社が最初の方だったというように話を聞いています。

そして、アルミ型で射出成形の金型をつくることで、イニシャルコストを抑える取り組みを始めていきました。最初は、自動車の電線などを保護するプロテクターと呼ばれるものなどをつくっていました。このような試作用金型の需要は徐々に増えていき、そのノウハウや技術が今の当社のベースになっています。

1986年には現在の所在地に新規の工場を建設し、1996年に現在の社名である株式会社ミヨシに改組しています。“ミヨシ”という社名は、3人で会社を始めたので「3人で良い会社をつくろう」ということと、近江商人の経営理念を表現する「売り手によし、買い手によし、世間によし」を示す『三方よし』と、あとは当家の祖先に“みよし”という苗字があるのでそれにあやかり、これら3つの理由から付けられたようです。

また、私自身は以前、プラント関連の会社に勤務しており、主にプラントの補修工事に携わる現場監督や施工管理などをやっていましたが、事業継承を目指すため、2003年に当社に入社しています。入社してからは、社内で最も技術のノウハウをもっているベテランの方に色々と教えていただき、主に現場で機械加工を担当し、始めて1〜2ヵ月でものづくりの楽しさに気づきそこからのめり込んでいきました。

ただ、2年後にそのベテランの方が退職することになり、そこからは文献などを参考に金型づくりを独学で始めていきました。しかし、独学でやっていくにも限界があり、近所に金型屋が4社ほどあったのでそこに教えてほしいとお願いに行ったのですが、同業ということもあり断られました。それでも、自分でつくったものをもって行くとダメ出しをしてくださり、いわれた通りに修正したものをもって行くと、「次はこれをやってみろよ」と徐々に色々なことを教えていただけるようになりました。

そのため、私には師匠が4人いるような感じですが、みなさんリーマンショックの時に仕事がなくなり廃業してしまいました。その中で、1人だけすでに隠居していますが、たまに顔を出して色々とアドバイスしてもらっています。そして、2012年に代表取締役に就任してからは機械加工を行うチャンスは減りましたが、今でも少し現場に出る機会はあります。

それから、父の代では自動車関連の仕事がメインになっていましたが、私の代になってからは業界の分散化を図っています。これは、リーマンショックの時に自動車関連の仕事が激減し、今度このような事態が起こったら会社を維持できないと思い、我々の技術で対応できる分野を探してお手伝いするよう取り組んできました。

それにより現在では、自動車電装部品をはじめ、IoT機器、機械部品、家電、医療機器、生産設備の製作補助、研究/分析機関向け評価用部品の製作などに実績をもっています。

また私は、「捨てられないものづくり」「人の役に立つものづくり」の2つを企業理念に掲げています。ものづくりの中でも、「環境に配慮したものをつくりましょう」ということなのですが、きっかけは私が前職で担当した東京都の不燃ごみ処理センターの補修工事などが影響しています。資源の利用とごみの問題は非常に深刻な状況なので、企業として我々にできることをやっていこうという思いから、この2つの企業理念を軸に進めています。

それから、代表交代5年前の2007年から「エコアクション21」に取り組み、社内の環境マネジメントシステムに取り組んでいます。その成果として、2017年に「平成28年度省エネ大賞 省エネ事例部門 中小企業庁長官賞」に受賞しています。

最近では、デザイナーやベンチャー企業とのビジネスをスタートさせるなど、新しいことにも色々とチャレンジしています。

 

■御社の事業内容や技術などについてお聞かせください

 

杉山 : 当社では、プラスチックの射出成形品をメインに製作しており、またその射出成形で使われる金型も自社で製作しています。金型自体は鉄でつくることもありますが、我々はアルミでつくる技術をもっており、その技術は日本においてかなり早い段階で確立していたと認識しています。現在は、アルミが7割、鉄が3割の割合で金型を製作しています。

その中で当社の強みとしては、金型の設計から金型の加工、そして射出成形まで行い、製品を納品するまで一貫してサポートできることです。金型と成形が別々の会社というケースが多いですが、我々は一貫体制を構築しています。

さらに、事業の7割ほどが試作品開発になっていますが、小ロットであれば製品の量産にも対応しています。数量は1ロット100〜100,000個まで可能であり、現状では1ロット100〜1,000個の依頼が最も多い状況です。

また、プラスチックの素材についても、近年では石油由来のプラスチックから、バイオマス系のプラスチックに切り替えたいというニーズが増えてきています。そのため当社でも、バイオマス系の素材を使用したプラスチックで、試作品や製品づくりに取り組んでいます。基本的にはBtoBでの事業展開がメインでしたが、最近ではBtoCでの事業展開も行っており、自社のECサイトを起ち上げて販売も行っています。

それから当社の技術については、さらなるレベルの向上にむけて色々と取り組んでいます。その1つが「ミスメモ」の作成です。ミスをした場合これに記入し、ミスの内容をみんなで共有する仕組みになっています。

水平展開することで他の作業者が同じようなミスをおこさないようにしたり、ミスしたことを報告する習慣をつくり、「うそ、いつわり、隠蔽」をしない体制つくりを目的としています。ミスを減らすだけでなく、ものづくりにおいて「うそ、いつわり、隠蔽」などを行うと、あっという間に信用を失うので、そのようなことをなくそうという取り組みでもあります。

この「ミスメモ」は、私を含めすべての作業者が記入することになっており、ミスに対して叱ったりすることは厳禁になっています。次に同じようなミスをしないために、みんなで建設的に話し合っていくようにしています。実は、ミスしたことは非常に大事で1つの財産だと捉えており、それを共有しないのはもったいないと思うので、必ず改善策や対策などを出し合うようにしています。

その他にも、新人教育で必要とされる教える側と教わる側のコミュニケーションがしっかり取れているのかを確認する目的で始めた、新入社員が担当する作業手順書を自分自身で作成する「新人教育でマニュアル作り」や、スキルの見える化などを目的に始めた、自分のスキルを自己評価しそれに対して上司が評価の修正を行う「スキルマップシート」の作成などを実施しています。

また、これらは評価制度に使用しておらず、技術錬成をするためのコミュニケーションツールとして活用しており、当社の技術力向上に寄与していくと考えています。

会社名
株式会社 ミヨシ
所在地
東京都葛飾区