本稿では、基板要因による実装不良について述べる。まずはじめにパッド表面処理方法『無電解Ni/Auめっき』『はんだレベラ』『水溶性プリフラックス』の違いを、その次に基板の保管劣化による影響を記す。
1.無電解Ni/Auめっきでのはんだ付け不良
無電解Ni/Au(以後、Ni/Auと表示)は、はんだ付け性にすぐれた表面処理方法である。図1にリフロー後のはんだ広がり状態を示す。Cuと比較し、Ni/Auの広がり面積は明らかに大きいことがわかる。
図1 無電解Ni/AuとCuパッドのはんだ広がり状態比較
Ni/Auの問題は、突発的に発生する接合強度の極端な低下にある。この現象は20年近く前から指摘され、多くの研究もされてきたが1)-4)、現在も当社で扱う不具合の上位を占める。発生原因を以下に示す。
●P濃化層の過剰形成(図2)1)
●Niめっき腐食(図3)2)
●マイクロボイドの形成3)
●Auめっき厚4)
図2 P濃化層の過剰形成
図3 Niめっき腐食
1.P濃化層の過剰形成
無電解Niめっきには、還元剤として次亜リン酸が使用されているためNi膜中にPが存在する。はんだ付けにより、はんだとNi界面にNi/Snの金属間化合物層が形成され、その直下に 取り残されたPの濃化層が存在する1)。図2のように過剰なP濃化層が形成されると極端な接合強度低下を招く。
対策として『はんだ付け時の加熱抑制』『Niめっき中のP量コントロール』などが考えられるが簡単に対策できることは少なく、めっき、実装工程の確認を含めた個別対応で改善を進めることが多い。
2.
Niめっきの腐食(図3)によるはんだ付け不具合は今でも多発している。Niめっき、Auめっきのどちらも関与していると推測され、それに加えて基板配線、パッド寸法、めっき処理条件なども影響していることから、問題を複雑にしている5)。
Ni/Auの突発的な接合強度低下はロット不良に繋がる大きな問題となる。中国の基板メーカーへの依存が強まっていることもこの問題を長引かせている一因であろう。
原因が判明しても対策できないことも多い。改善のためには、実際のめっき工程を観察して、材料、水、工程、条件、管理方法などを細かく確認し、各基板メーカーに指導することが必要となっている。また、対策後に同じことが繰り返されることも多く、定期検査も必要となる。基板のロット不良が発生すると大問題になるため、当社ではセットメーカーの依頼を受けて、多数の中国基板メーカーにおける改善や工程管理の活動を続けている。
- 会社名
- (株)クオルテック
- 所在地
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