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2014.01.28
『松の木』から始まる技術
ちょっと途中下車 202駅目

 ところで、この松に多量に含まれる樹脂の不揮発成分が松脂(まつやに)、別名ロジンである。松脂は旧約聖書のノアの箱舟の話にもでてくるように、紀元前より水漏れ防止剤に使われたり、古代ギリシャでは照明や宗教的儀式に使用されるなど古来から人々の生活にさまざまな形で広い分野で利用されてきた。

 松脂は松の枝、芽などを折ったり、幹に傷を付けたりした際に出る水飴状の液体の樹脂で、その液体は樹脂道という特殊な組織であり、主に昆虫の幼虫の寄生を妨げる目的で合成され、テルペンなどの揮発成分を大量に含んでいる。透明から淡黄色で流動性に富む液体であるが、揮発成分が減少するにつれて粘り気が増し、固化する性質を有する。

 他の木材と比べ可燃性の樹脂を多く含み、他の木材と比較して単位重量あたりの燃焼熱量が高いことから、特に赤松は陶器を焼き上げる登り窯など窯の燃料として珍重された。

 自然の恵みである『松』を最大限に活用する化学が『パインケミカル』である。パインケミカルのパインは『松』、ケミカルは『化学』であり、パインケミカルは、松の木から採れるロジン(松脂)、トール油、テレピン油などの有用な化学物質を扱う『松の化学』のことである。1本の松の木の松脂から始まるテクノロジがある。松脂化学として、ロジンを使った接着剤、粘着剤、塗料、印刷インキ、製紙のサイズ剤、合成ゴム乳化剤など広範囲に利用されている。この分野で永年にわたって蓄積してきたハリマ化成(株)の研究成果は、塗料、インキ、油脂、合成ゴムなどの産業で利用され、大きな役割を担ってきた。 ハリマ化成は1947年(昭和2211月、兵庫県加古川において、現名誉会長の長谷川末吉が創業した企業である。トール油という今まで未利用であった資源を有効資源として利用することに成功し、日本国内において確固たる地位を築くまでになった。

 松は石炭や石油と違い、自然との調和の中で植林により約20年のサイクルで再生可能な、尽きることのない資源でもある。

 松から松脂(ロジン)を採取する方法は

 ①松材よりクラフトパルプを製造する際に副生する粗トール油からロジン(トールロジン)と脂肪酸を分離する方法  ②松の幹に傷をつけ、分泌する生松脂を採取し、蒸留してテレピン油を除き、ロジン(ガムロジン)を得る方法  ③松の切り株をチップ状にしたものを溶剤抽出し、蒸留して溶剤を除き、ロジン(ウッドロジン)を得る方法

3通りがある。

 現在、もっとも工業化が進んでいるのは、粗トール油から精製する方法であり、この分野ではハリマ化成が日本国内で唯一の製造メーカーとして精留プラントを完備しているという。

 こうして得られたロジンや脂肪酸は、様々な誘導体を経て、その機能を有効に活かし製品化されている。ロジンは製紙用サイズ剤、塗料、印刷インキ用合成樹脂、接着剤、電子材料さらには化粧品、医薬品などの原料として、また脂肪酸はアルキド樹脂、界面活性剤、ダイマー酸などに利用され、それぞれ幅広い業界において欠くことのできない役割を果たしている。

 さらにハリマ化成では、粗トール油を精製する段階で生じる副生成分はバイオマス燃料として利用し、蒸気を発生させて発電に利用し、資源を余すことなく活用もしているという。

会社名
Gichoビジネスコミュニケーションズ株式会社
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