はじめに
無線情報伝達機器の進化が目覚しく、PCやPDAの機能が備わり、電子メールやWebブラウザを内蔵し、インターネットに接続することができるスマートフォンが急激に伸びてきた。最近ではアプリケーションを追加して機能強化やカスタマイズできるようになった。それに伴い実装技術も進化し、実装設備も高精度の設備が開発されてきている。
しかし、最先端実装の革新的な技術が必ずしもものづくりの現場で利益と結び付くわけではない。たとえば、ファインピッチのCSPやシールドケースの実装などは、リフロー後の外観検査で品質状態を管理することが難しく、X線検査では時間を要するわりには、接合状態がわかりにくく、検査コストが高くなる。また印刷工程、部品装着工程に外観検査を入れて品質管理をしても、不良を流さないことで最終品質は向上できても、本質的な改善が行われない限り管理コストが高くなるだけである。
そこで実装現場からの要求が強くなった『儲かるものづくり活動に寄与する実装システム』の開発が注目されるようになってきた。当社はこれらの背景から良品生産システムの開発を進めているが、本稿では工程分析ツールとAPC実装システムを中心にその取り組みの一端を紹介する。
儲かるものづくり活動とは
究極の儲かるものづくり活動とは、ものづくりの仕組みを品質、コスト、生産性の指標で向上させる活動のことで、最小限の工数で100%良品を造ることである。そのためにはこの活動により得られたノウハウをいかに技術として完成させ、設計から購買、ものづくり現場まで浸透させるかである。したがって、儲かるものづくり活動を定義すると、蓄積されたすべてのノウハウを技術に還元させて関連部門に情報として流し、無駄を徹底的に排除することになる。
これをSMT実装工程に置きかえると、プリント回路板の総合的な技術を向上させて、情報として流し、滞留させない仕組みをつくることになる。
しかし、プリント回路板の総合的な技術といっても、回路板の設計技術、プリント配線板、SMD、はんだペーストを代表とする接合材料などの材料技術、各工程設計技術、実装設備技術、検査、信頼性評価技術、各管理技術など多岐にわたる。
ここではSMT実装工程の中で材料供給から実装基板の検査工程までに絞り込んで記述する。
検査と品質の造りこみの成長過程
図1 検査と品質の造りこみの成長過程
検査と品質の造りこみの成長過程を図1に示す。儲かるものづくり活動で定義したように、究極は、技術情報の完成度が100%であれば検査しなくても100%良品を造ることができる。従って、次第に『技術情報の流れ』の発信源にさかのぼって不良を防止することが重要になる。しかし、技術の蓄積がなければ技術の完成度を向上することができないので、図1のような成長過程をたどるのである。無検査でのものづくりは不良品が顧客に渡るので、たとえば出店などで顧客が商品を検査して納得したら購入する商品のことである。
出荷検査を行えば顧客に不良品は渡らないが、不良品の数を減らすことはできない。次に受入検査と工程後検査を行った場合のフロー概略図を図2に示す。SMT実装工程の技術情報として『材料情報』『実装情報』『作業情報』『検査情報』の4つと考えると、これらの情報が各工程に流れる。
図2 受入検査・工程後検査の場合
受入検査工程には材料情報と検査情報が流れ、それに基づいて検査を行えば、材料起因の不良を減らすことができる。
また、印刷後検査、装着後検査、リフロー後検査を行うことにより、不良品を後工程に流さないことができ、出荷検査での不良率を減らすことができる。しかし、各工程検査での不良率は減らすことはできないので、各工程で不良は造り続けることになる。現在のSMT実装工程のほとんどがこれにあてはまる。検査装置メーカーも検査機能にはこだわるが、なぜ不良が発生するのかというものづくり本来の本質にこだわるメーカーは少ない。
- 会社名
- パナソニック ファクトリーソリューションズ(株)
- 所在地
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