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テクニカルレポート
2016.04.07
LED照明商品と実装技術
ソルダーソリューション(株)

 

温度プロファイルと基板洗浄

  表面実装型LEDの実装でもっとも重要な検討項目のひとつが、はんだクリーム中の活性剤の特徴を生かした温度プロファイルを構築することである。特に、直管型LED照明用の基板は細長いため、温度プロファイルの設定には十分な検証実験を行った上で決定されるべきである。

 一方、フロン規制以降、実装後の基板上に残ったフラックスを洗浄して除去しない『無洗浄実装』が定着されて久しい。実装基板の無洗浄化でもっとも影響を受けたのが、活性剤である。従来は、強力な無機塩素系活性剤を使用して、部品表面及び基板表面の酸化膜を除去することで、拡散反応をスムーズに遂行することができた。しかし、無洗浄化では基板上に残った活性剤が腐食の原因物質として作用するため、活性剤の活性力を低下せざるを得ない。その結果、酸化物を除去する能力が低下し、はんだ接合そのものが不完全となる事例が見られるので、部品、基板の保管方法をこれまで以上に管理することが求められる。特に、高温・多湿の海外の実装工場で実装した基板で、はんだの濡れ不良による不具合が散見される。

図7 チップ部品のクラック

熱衝撃試験

 実装基板の信頼性を評価する方法として熱衝撃試験(温度サイクル試験、冷熱衝撃試験)を実施する。

 しかし、アルミ基板に直接LED部品を実装した基板を熱衝撃試験すると、図7のように、チップ部品のはんだ接合部にクラックが発生する。これは、アルミ基板は放熱特性にすぐれているものの線膨張係数も大きいため他の部材間で線膨張係数に差が生じ、基板周辺に繰り返し応力が発生した場合、接合力の弱いはんだ界面でクラックが生じるのである。したがって、アルミ基板に直接LED素子を実装することを禁じている場合もある。

通電サイクル試験

 LEDを搭載した実装基板の信頼性を評価する際、可能な限り市場での使用実態を加速した試験条件を選択することが望ましい。LED照明商品では点灯時にLED周辺で局部的に温度が上昇し、消灯時には室温まで温度が低下するので、その温度変化による繰り返し応力が発生する。

 また、LED搭載商品が使用される雰囲気温度を想定して、試験温度を変更できる恒温槽内で通電サイクル試験を実施することも有効である。通電サイクルの時間はジャンクション温度がほぼ一定となる時間に設定するが、一般的には点灯時間として5~10分、消灯時間は5分程度である。しかし、LEDは消費電力が異なるため、工業会等で試験基準を統一されることが望ましい。

白色LEDの構造解析事例

  照明用に使用されている白色LEDの構造を解明するためには断面方向から光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡を使用し、各部材の材質を調査するためには電子線マイクロアナライザを使用する。市場から調達した照明用白色LEDの構造解析結果の一例を表1に示す。

LED照明用鉛フリーはんだ合金

表1 分析結果

  LED素子を実装するはんだは、当然、RoHS指令を遵守した鉛フリーはんだ合金であると共に、LED素子周辺の温度変化を考慮したはんだ合金を選択する必要がある。現在、家電分野で一般的に使用されているSn-Ag-Cu系鉛フリーはんだ合金は従来のSn-Pb系共晶はんだ合金と比較して固くてもろい特性をもつ合金であり、照明用LEDの急激な温度変化に対応するための最適な合金とはいえない。照明用LEDの実装には点灯時⇔消灯時の急激な繰り返しの温度変化を吸収できる柔らかな合金が望ましく、In入り鉛フリーはんだ合金が有望である。しかし、家電量販店で調達した照明用LED電球を解析した結果(図8を参照)、Sn-Bi系鉛フリーはんだを使用しているものを発見した。この合金は融点が低く且つ安価な合金であるが、Sn-Ag-Cu系鉛フリーはんだ合金よりもさらに固くてもろい性質を有しており、国内では限定された環境下で稼働する製品(常時一定温度に空調でコントロールされており、製品自身を一度設置すれば移動することがない)にしか実績のない合金である。したがって、本合金を温度変化の大きい照明用LEDの実装に使用するためには、十分な検証が必要と思われる。

図8 LED素子の解析結果

図9 ボンディングワイヤの剥離

不具合解析事例

■ボンディングワイヤの剥離

 海外で生産した表示用LEDの不点灯品を解析したところ、ボンディングワイヤが剥離しているものを確認した(図9参照)。日本製のLED部品では、このような不具合を発生することはなく、国内で生産された部品の品質は高い。

まとめ

 青色LEDを用いた白色LEDの開発は、我々に『半導体の灯』をもたらした。この『灯』には電力事情に厳しい日本の現状を救う救世主として期待されている。この新しい灯が『ものづくり日本』復活の旗手として、国内産業発展の一助になることを期待する。

 

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