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テクニカルレポート
2026.09.29
AI時代を支えるシリコンキャパシタ(Si-Cap)­­
―市場要求・技術・主要メーカーの動向­­―
特定非営利活動法人 サーキットネットワーク
梶田 栄

⑧今後のシリコンキャパシタ

今後の技術開発には、大きく四つの方向が考えられる。

第一は容量密度の向上である。Deep Trenchの高アスペクト比化、3D構造の高密度化、Multi-MIM化、High-k誘電体、ALDなどによって、同じ面積により大きな容量を形成する技術が進む。

第二はさらなる低ESL化である。AIプロセッサの電流変化がさらに高速化すれば、コンデンサそのものの性能だけでなく、端子配置や配線構造を含めた寄生インダクタンス低減が重要になる。

第三はEmbedded化である。基板表面へ実装するのではなく、Si-Capをパッケージ基板、インターポーザ、あるいは半導体直下へ内蔵する方向が進む。

第四は電源回路との一体化である。Si-Cap、IVR、インターポーザ、パッケージ基板を個別部品として考えるのではなく、Power Delivery Network全体として設計する考え方である。

 

⑨おわりに

Si-Capは、単に「シリコンで作った新しいコンデンサ」ではない。その本質は、半導体微細加工技術を利用して、コンデンサを半導体そのものへ近づける技術にあると考えられる。

これまでコンデンサは、完成した電子回路基板の上に実装される「受動部品」であった。しかしSi-Capでは、基板上の部品から、パッケージ上の部品、そして、パッケージ内部の部品へと、その位置が半導体へ近づいている。AI/HPCではさらに、Si-Cap、インターポーザ、HBM、GPU、IVR、パッケージ基板を一つのシステムとして設計する必要が生じている。その意味でSi-Capは、「電子部品と半導体の境界がなくなりつつあることを象徴するデバイス」といえるのではないだろうか。そしてこれは、日本の電子産業にとっても重要な意味を持つ。Si-Capの製造には、Deep Trench加工、DRIE、ALD/CVD、薄膜形成、フォトリソグラフィ、CMP、ウエハ薄化、ダイシング、TSV、基板内蔵など、多くの半導体・実装技術が必要になる。

これらは日本企業が強みを持ってきた材料、製造装置、精密加工、電子部品、実装技術と重なる。AI半導体そのものだけを見るのではなく、その周囲に必要となるSi-Capや先端パッケージまで視野を広げれば、日本の電子産業が活躍できる領域はまだ大きい。Si-Capは、その新しい可能性を示す一つの電子部品なのである。

 

<参考資料>

1)SEMCO

Si-Cap:https://samsungsem.com/jp/product/passive-component/silicon-capacitor.do

2)村田製作所

Si-Cap:https://www.murata.com/ja-jp/products/capacitor/siliconcapacitors

3)ローム

Si-Cap:https://fscdn.rohm.com/jp/products/databook/white_paper/passive/common/silicon_capacitors_btd1rvfl_wp-j.pdf

4)AP Memory

Si-Cap:https://www.apmemory.com/en/product/SiCap

5)Empower Semiconductor

Si-Cap: https://edn.itmedia.co.jp/edn/articles/2603/30/news041.html