ビジネスコミュニケーションを加速する
BtoB ニュース専門サイト | ビジコムポスト

テクニカルレポート
2016.11.04
電磁場再構成法と走査型トンネル磁気抵抗効果顕微鏡の開発
電子部品内部の非破壊検査への応用
神戸大学/木村 建次郎、美馬 勇輝 大阪大学/木村 憲明 京都大学/大藪 範昭 (株)村田製作所/稲男 健

 

■デモンストレーション1:

樹脂内部の鉄棒周辺の磁場分布を再構成

図5 透明樹脂内の鉄棒周辺の磁場分布

  非磁性体の基板上に鉄棒2本を図5(a)に示すように配置し、1つの鉄棒の一部を腐食させた試料を透明樹脂に埋め込み、鉄棒から3.0mm離れた領域にて測定した(図5(b))。測定点は64ピクセル×64ピクセルでTMRセンサをXY方向に走査させながら各点の磁場を取り込んだ。走査速度は20mm/secで行なった。TMRセンサにはマイクロマグネティックス社製『STJ220』(素子部分のサイズ典型値:幅0.80mm、高さ0.70mm、厚さ60 nm)を使用した。鉄棒表面から0.20mmの樹脂内部の磁場分布を再構成した結果を図5(c)に示す。図5(b)の測定データでは、腐食の状態を判定するのは困難であるが、図5(c)の再構成データでは腐食箇所の状態を明瞭に判定することが可能である。

■デモンストレーション2:  プリント基板上の電流経路の可視化

図6 プリント基板上の電流経路の可視化

 測定に用いたプリント基板の外観の一部を図6(a)に示す。図中のスルーホールAとBの間に電圧を印加して電流を矢印のように流すために途中のパターンをはんだで短絡した。電圧印加のためのリード線はビアホール経由で基板背面より引き出した。定電流電源を用いて60mAを通電した。プリント基板から2.5mm離れた領域で測定し、プリント基板から0.20mmにおける磁場分布を上述のEM-FRMにより再構成した(図6(b))。図6(b)のコントラストは磁場ベクトルZ成分の強度分布に相当する。測定点は64ピクセル×64ピクセルでTMRセンサをXYの方向に走査させながら各点の磁場を取り込んだ。走査速度は20 mm/secで行なった。TMRセンサにはマイクロマグネティックス社製『STJ220』(素子部分のサイズ典型値:幅0.80mm、高さ0.70mm、厚さ60nm)を使用した。プリント基板の電流経路が明瞭に可視化されていることがわかる。


■デモンストレーション3:

 Si基板上に形成した配線 パターンの可視化

図7 Si基板上に形成した配線パターンに流れる電流の可視化

図7(a), 図7(b) に示すSi基板上に配線パターンを形成した基板を測定試料として用いた。測定条件として配線パターンに100 mAを通電した。測定点は128ピクセル×128ピクセルでTMRセンサをXY方向に走査させながら各点の磁場を取り込んだ。走査速度900 μm/secで行なった。TMRセンサにはマイクロマグネティックス社製STJ020(素子部分のサイズ典型値:幅4.0μm、高さ2.0μm、厚さ60nm)を使用した。

 得られた磁場分布を図7(c)に示す。明瞭に配線パターンが可視化されていることが分かる。

 以上のデモンストレーションにおいて、磁場発生源近傍の磁場の再構成により、磁場発生源の構造、電流経路を正確に非破壊検査することが可能であることが示された。

結論

  本研究では、電子部品内部の電流経路や磁性体などの磁場発生源を高分解能で映像化する再構成法EM-FRMの開発および、EM-FRMで必要となる磁場分布データマトリックスを自動取得可能なTMR顕微鏡装置の開発を行った結果について述べた。さらに、磁性体、プリント基板、Siウエハ上に形成された配線パターンの観察において、明瞭に磁場発生源を可視化することに成功した。

Future work

 今後、本手法を太陽電池、リチウム電池、燃料電池、液晶モニタの駆動電極、大容量メモリデバイス内の配線などさまざまな製品の非破壊検査に応用する。また、現在進めているマルチアレイ磁気センサによる非破壊検査の高速化を早期に実用化し、産業応用する予定である。

 以上は、独立行政法人科学技術振興機構 研究成果最適展開支援事業(A-STEP)フィージビリティスタディ 可能性発掘タイプ シーズ顕在化における成果である。

 

 

 

会社名
神戸大学/木村 建次郎、美馬 勇輝 大阪大学/木村 憲明 京都大学/大藪 範昭 (株)村田製作所/稲男 健
所在地