⑥高信頼大気圧プラズマプロセス
最後に大気圧プラズマプロセス処理のプロセス信頼性について触れておきたい。
大気圧プラズマでは、大気圧環境下での高周波放電とガスによってプラズマ生成を行うが、処理対象にある回路に電圧を印加してしまっては素子破壊に繋がってしまう。
対策として高速の表面改質力は担保したまま、電位を与えないポテンシャルフリープラズマを生成できるノズルが開発されている。図8に電子・半導体デバイス処理のために特別に開発された、ポテンシャルフリープラズマを生成するプラズマノズルによる電位を測定した結果を示す。プラズマノズルからプラズマビームの中に、ノズル先端から6〜14mmの距離の間に電圧計のプローブを差し込んで測定したもので、いずれも1v以下を測定していることが確認できる。
ただし、プラズマの生成において昇圧電圧による高周波放電を使用している中、瞬間的な電圧印加が発生していないことの記録が欲しい。
これまで長らくの間、大気圧プラズマ装置のプロセス監視は、消費電力によるモニタリングに終始しており、この要望に対応できていない状況であったが、Plasmatreat社が開発したPCU(Plasma Control Unit)では昇圧後の瞬間的な印加電圧をリアルタイムで測定し、関連パラメータの経時的なログも可能である(図9)。さらにプラズマガスの流量の管理制御も行っており、これにより大気圧プラズマ処理は、高信頼性が要求される半導体・電子機器製造プロセス工程の要件を満たしたといえる(図10)。
また、前述の大気圧プラズマによる酸化被膜除去のプロセスは再酸化ストレスによる処理むらなどに対する対策が必要となる。チップの大型化あるいはシステム化によって、酸化還元を一度に行いたい面積も増加傾向にあり、処理の均一性の技術的な難度は高くなっている。このニーズに対して、Plasmatreat社がドイツ・ミュンヘンの見本市Productronica2023にて公表したREDOX-Toolユニット(図11)は、大気圧プラズマによる酸化還元力を対象表面に均一に行き渡らせながら再酸化ストレスを最小限に抑えることに成功している。同ユニットはパッケージレベルにおける高信頼プロセスとしてはんだバンプおよびリードフレームの酸化膜除去用途において既に量産実績を積んでいる。
⑦まとめ
自動運転や生成AIといった革新的な技術が約束する未来は、半導体・電子機器のさらなる能力アップを必要としている。同時にそれら機器の信頼性のさらなる向上と、機器の駆動・監視・補助を行うパワーデバイスの省電力化・高効率化が要求される。上述した通り、各機器を構成するデバイスとデバイス同士の接合信頼性が鍵であり、大気圧プラズマ処理は接合の高信頼化をサポートするプロセスとしての導入実績を重ねている。
<参考文献>
1)Uwe Pape :「Reduction of Voids in Solder Joints an
Alternative to Vacuum Soldering」、APEX EXPO IPC
2012、
https://www.ipc.org/system/files/technical_resource/E5&S04_01.pdf (2012)
2)清水章良、木島一広、中村卓、石田正文、中込広幸
「超音波振動を援用したはんだ実装の信頼性に関する研究(第2報)」
https://www.pref.yamanashi.jp/documents/86909/report_h29_15.pdf(2018)
3)菅沼克昭
「ワイドバンドギャップパワー半導体のダイアタッチ技術」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj/69/3/69_94/_pdf (2018)
- 会社名
- 日本プラズマトリート(株)
- 所在地
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