①はじめに
私達の生活を支える半導体デバイスやモジュール、PCBAでは様々な有機無機の絶縁材料、導通・半導体材料が組み合わされて、それら機器の所望の機能を達成している。そのため、基材の様々な界面の接合の信頼性が、製品寿命において確保されることが必要である。そこで重要となるのが表面処理の技術である。ここでは大気圧プラズマによる表面処理プロセスが、それらの接合点の信頼性の向上にどのように寄与しているかを紹介したい。
②プラズマによる洗浄および表面改質効果
後述するようにプラズマの応用例は多岐に渡るが、本稿では大気圧プラズマと大気圧プラズマによる洗浄効果および表面改質と機能化の効果に注目する。
まずプラズマは表面の有機的なコンタミを除去することができる。
図1は大気圧プラズマによる洗浄効果を示す。5つの測定結果はアルミサブストレート表面のFTIRの反射法による分析結果で、一番上が清浄なアルミ表面状態(アルコールによる洗浄済)、次に意図的に表面にオイルを塗った状態、その次の3つが、処理強度の異なる大気圧プラズマ処理後の表面状態を表している。一番下の最適化された大気圧プラズマ処理後の測定結果によって、有機コンタミを表すピークが検出されず、一番上の清浄なアルミ表面に似たスペクトルとなっている。
さらに、図2は大気圧プラズマ処理の前後で表面の濡れ性が向上していることを、水を表面に滴下して示している写真である。この濡れ性は大気圧プラズマによって生成される各種イオンやラジカルによって表面に様々な官能基が形成(図3)されることにより、発現している。この効果は、接着の前処理として活用されており、例えば接着特性の低いプラスチック材料であっても汎用的な接着剤で高信頼の接着接合が可能となる。
このように、大気圧プラズマによる表面処理には対象表面を清浄な状態にし、さらに官能基形成を行うことで表面の接合性を向上させる効果がある。なお、これらの効果の発現に必要なイオン化ガスが、単なる圧縮エアであることも付言しておきたい。
2-1. 低圧プラズマ
低圧プラズマは、減圧させたチャンバー内に、通常は500kHz以上のRF周波数を印加し、低圧ガスによるプラズマ生成を行う。
半導体や電子デバイスの製造においては既に多くの工程でこの低圧プラズマが活用されている。通常の表面親水化用途に加え、例えばスパッタリング成膜ではターゲット材料へアルゴン等の不活性ガスイオンを衝突させて、ターゲットから飛び出してきた粒子を堆積させて薄膜形成を行う。ウェハへ塗布したレジスト除去(アッシング)や薄膜除去をドライエッチングにて行う場合はプラズマを用い、微細配線の回路板製造ではビア形成後のドライデスミア処理でも活用される。
低圧プラズマは長い実用化の歴史をもつプロセスであるため信頼度が高い反面、デメリットも抱えている。
①処理がバッチ処理となる、
②対象物のサイズが比較的小さなものに限定される、
③電解液が充填された一部のコンデンサ部品など素子が破壊されてしまうため実装後基板には使えない、
④真空機器の装置やメンテナンスコストが大きくなる、といった点が挙げられる。
2-2. 大気圧プラズマと低圧プラズマの比較
大気圧プラズマでは、大気圧環境下での放電とガスによってプラズマ生成を行う。ここでプラズマを生成する目的は、イオン化したガスの反応性を活用することを主眼とするが、イオンの材料となるガス分子の数は常圧化において当然圧倒的に多く、その結果、一部の大気圧プラズマの処理能力は極めて高いものとなる。
これらのメリットによりまず、連続したインライン処理が可能となる。
また大気圧プラズマは、ガス分子がひしめき合っている状態でガスを励起または電離しているため、イオンの平均自由行程(Mean Free Path)が減圧下と比べて短くなる。結果、低圧プラズマにて有効活用されていたスパッタリング効果が抑制される。このことは、微細化が進む電子回路機能が実装されたデバイスの表面処理においては、むしろ回路機能を損なうことなく表面の機能化処理を施すことができることを意味する。さらに、雰囲気減圧下に置かれては破壊されてしまうような素子が含まれるモジュールの処理にも適している。
これらの理由により、大気圧プラズマが低圧プラズマを代替できるプロセスはもとより、大気圧プラズマを活用することでより良い結果を得ることができる用途や、これまでにプラズマを活用しようにも活用できなかった用途でも、大気圧プラズマ技術の採用が進んでいる。
- 会社名
- 日本プラズマトリート(株)
- 所在地
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