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テクニカルレポート
2015.06.18
進化する外観検査技術
(株)サキコーポレーション

 

はじめに

  今日、電子機器製造の拠点は中国をはじめアジア、東欧、北アフリカ、中南米へと広がっている。こういった新興国では、目覚ましい経済発展を遂げる一方で、特に都市部では賃金の上昇が物価上昇に追い付かず、現場で働く人々は生活のためにより高い給与を求めて転職を繰り返す状況に陥っている。生産現場での中核エンジニアの平均勤続年数ですら、数年前の8?10年から、昨年は3年を切るという状況に至り、安定した品質で大量生産を行うことが難しくなっている。

 長年にわたってSMT実装工程向けの検査装置の開発に携わってきた我々にも、90年代の日本の自動化要求よりも数段上を狙うより高いレベルの自動化が要求されている。本稿ではこれらの要求にこたえるべく開発を進めてきた装置の概要を紹介する。

図1 2次元外観検査装置『BF-10D』

次元外観検査装置『BF-10D』の開発 (図1)

 (株)サキコーポレーションの外観検査装置には独自開発技術であるラインスキャンテクノロジを採用している。これは、コピー機のように高速で基板全面を一括撮像する、当社の検査装置の基幹技術である。

 一般的な検査装置で採用されているFOV方式は、部品の配置や基板サイズによって検査のタクトタイムが変わる。また、微細な部品をより細かく検査しようと高解像度の光学設定にすると、検査時間が大幅に増大してしまう。そこで当社では、高解像度のラインセンサカメラによる一括撮像方式を採用し、高速な検査を実現してきた。

 この撮像系と合わせて開発したのが、完全同軸落射照明である(図2)。これはラインセンサの光軸と同軸に、すべての位置で検査部品に対して真上から光を照射する当社の独自技術である。これにより、隣接部品の影響を受けずに、はんだ面などの角度のある対象物を捉えることが可能となった。この照明で作成した検査ライブラリは、基板間および装置間で共有することができる。

図2 完全同軸落射照明イメージ図

  さらに、大型視野をカバーするテレセントリックレンズの開発により、視野内の視差をなくしたことで、視野の中央から端にいたるまで、すべての位置で検査部品に対して真上から撮像することが可能になり、同軸落射照明の性能を視野内の全域で保証している。さらにこの光学系をつなぎ合わせることで、Mサイズ基板を一括で読み込むことが可能である。

 これらのベース技術に加えて、2013年モデルではさまざまな新技術が追加されている。まず撮像系を全面的に見直した。新システムでは撮像速度が約2倍高速になっており、Mサイズ基板を5.5秒で撮像する。これに加え、LED照明の光スペクトラムの最適化により演色性が向上している。また、広い視野を一括で読む場合に問題となる検査照明の輝度むらやレンズの周辺減光などの画像の明るさの不均一性を、ソフトウエアで補正している。これはCPUの高速化により可能になったことであり、従来のハードウエア補正に比べて均一性もSN比も大幅に向上した。

 さらに、光学系の小型軽量化を進めて基板の上を光学系がスキャンするフライング撮像を実現した。新たに開発した高剛性ガントリにより、スキャン長27インチにおよぶ広い範囲で高速かつ高精度な撮像を実現している。シンプルなメカニズムは、シングルレーンでもデュアルレーンでも従来機と同一の装置幅のコンパクトな筺体を可能にし、高い面積生産性を実現している。超高速タクトのスマートフォン、タブレットなどの生産に最適なソリューションである。

 振動のないラインスキャンのメカニズムは故障発生率が低く、10年以上経ったインライン装置の多くが現役で稼働している。多くのシステムがお客様ごとに最適化されたCAD/CAMデータ自動変換やバーコード運用、SPCシステムと連動している。

 これらの機能を保持しつつ、システム全体に最新テクノロジを導入することは非常に困難な仕事であったが、2013年版のソフトウエアでは、撮像部分とデータ編集部分、演算検査部分を分離することで、最新テクノロジの導入と旧機種のサポートを両立させるハイブリッド構造を実現した。ラインスキャン独特のフルメモリ構造の軽快な操作性を守り、稼働中のマシンをサポートしつつ、大容量画像の一括撮像とマルチコアに対応した高速演算を実現している。自動領域識別などの新アルゴリズムを追加して、最新の装置に搭載すると同時に、従来のハードウェアにも対応しているため、旧装置のバージョンアップも同時に行うことができるユニークな構造である。また、複数生産ラインを統合する検査ライブラリ構造やリアルタイムの遠隔データ編集などの新たな機能を追加して、データ作成工数の削減と、迅速な生産立ち上げが可能である。セレクティブソルダリング後の表裏面同時検査や、紫外線によるコンフォーマルコーティング検査など、様々な応用検査もサポートする次世代プラットフォームとなっている。

 

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(株)サキコーポレーション
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