鉄道車両や輸送機などの部材に使われる、ハニカム構造体をベースにした防音材で事業を展開する株式会社静科。“世に残せるオリジナル製品をつくりたい”という夢を実現させるため、下請けを柱にしていた町工場から起業して、防音材に特化した企業へと変貌を遂げた同社の概要と技術、防音材『一人静』シリーズの特徴などについて、取締役専務 高橋 俊二 氏にお話しを伺った。
御社の概要についてお聞かせ下さい
高橋:当社は元々、大手メーカーの下請けとして、鉄道車両やヘリコプターなど高速輸送機の部材を製造する町工場でした。当社を起業するきっかけは、下請け時代の2003年頃から私の父にあたる先代の高橋社長と経営企画室の武室長が、“世に残せるオリジナル製品をつくりたい”という思いから、現在当社の主力製品となる防音材『一人静(ひとりしずか)』シリーズの開発を行い、この製品を世に普及させるために2006年1月に設立しました。社名の「静科(しずか)」は、“静かさを科学する”という意味から付けられています。また、製品名の「一人静」は、先代の高橋社長が「人間だれでも一人で静かになりたい時があり、しかし音は自分の意思とはうらはらに一方的に入ってきてしまい、そういう時にこういう部屋があったら」という思いから付けられています。
この製品は、鉄道車両や輸送機などの部材に使われるハニカム構造体という蜂の巣に似た構造がベースになっています。当初、断熱材として販売を行おうと考えていましたが、低価格と競合他社が多いことから視点を変え、他の性能を調べるうちに防音効果もあることがわかり、そこに着目していきました。開発を始めた2003年には、現在展開しているシリーズのベースとなる技術の特許を取得し、起業した2006年には民営化した東日本高速道路株式会社(NEXCO東日本)が公募するTIネットワーク(技術提案/共同研究の募集)に応募し、民間企業の第一号として採用されました。
その後、高速道路部分への実用化に向けた共同開発の契約を行い、高速道路にある橋梁の接合(ジョイント)部分で車が通過すると発生する突発騒音に対し、製品化試作試験/共同特許出願/現場試験を重ね、橋梁伸縮装置の防音構造体を開発しました。2008年12月に、苦情発生現場となる関越道大泉高架橋ジョイント部に施工し、苦情処理に成功を収めています。また、この製品は土木学会に発表され、「土木技術・システムを開発・運用し、環境の保全・創造に貢献した画期的な業績およびプロジェクト」に贈られる環境賞(平成22年度Iグループ)を受賞し、現在も少しずつではありますが、全国の高速道路の橋梁に設置され始めています。
このように、防音材に取り組むようになって7年が過ぎましたが、色々と特許も取得してようやく技術なども分かってきました。以前の下請けを柱にしていた町工場から、防音材に特化した企業へと事業転換するまでは非常に苦労もしましたが、最初は口コミなどで当社を知ってもらい、その後は展示会出展やメディアなどでの紹介により認知度を上げていき、少しずつシェアを広げられるまでになりました。先代の高橋社長は、今年の2月に他界してしまいましたが、高橋社長の意思を引き継いで防音材『一人静』シリーズの開発を進めており、最近では若い人材も入社し、彼らの意見なども取り入れながら新製品開発を行うことで、事業展開の幅も広がりを見せている状況です。
- 会社名
- 株式会社 静科
- 所在地
- 神奈川県大和市
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