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テクニカルレポート
2021.04.16
画像でひも解くクリーンルームでの発塵
クリーンサイエンスジャパン

 

9.モップ掛け清掃時の発塵

 

 ●図9に床面のモップ掛けを行ったときの塵埃の舞い上がりを示す。

 図中モップ掛けは左から右方向へ吐き出した。

 このとき、進行方向側のモップ先端上側で塵埃の舞い上がりが見られた。

 通常床掃除は比較的強い力で往復させながら清掃することが多いが、この方法では塵埃の舞い上がりが多く汚染につながり逆効果となることがある。

 モップかけはゆっくりと進行方法に押していくのが基本で、ゴシゴシと往復させてはいけない。

 また、乾式よりも許せる範囲で水を軽く含ませる程度の湿式が塵埃の舞い上がりが少ない。


図9 モップ掛け清掃時の発塵

 

10.無塵靴表面からの発塵

 

 ●図10に作業室内で約1か月着用した無塵靴表面からの発塵を示す。

 図中矢印部に発塵が見られるが、これは靴底やつま先部分からの発塵ではなく、くるぶしから上側のゲートル部分からのものである。

 床面に塵埃が堆積していた場合、歩行によって塵埃が舞い上がるが、纏わりつくのはくるぶしから上部である。

 床面に接触するのは靴底であり踏みつけられて吸着し黒く汚れるが、踏みつけ部の周りに塵埃は気流によって舞い上がり無塵靴のかかとから上に吸着しやすい。

 運搬台車も同様で車輪に近い軸受けコロ部に塵埃が吸着する。


図10 無塵靴表面からの発塵

 

11.ポンピング現象

 

 ●図11にポンピング現象による発塵を示す。

 ポンピング(Pumping)とは無塵服の内側の塵埃が開口部となる顔面周りや首周りから気圧差によって外側に吐き出されることを言う。

 あたかも「ポンプ作用」に見えることから名づけられた。

 作業者が胸元を軽く叩くと顔面部から発塵していることが分かる。

 マスクを着用していても顔面周りに隙間が大きいと作業動作によって無塵服内側主に衣服の繊維が放出されるので注意が必要である。

 なお、無塵服の内側で最も気圧差が発生するのは脇の下部分である。


図11 ポンピング現象

 

12.無塵手袋装着時の発塵

 

 ●図12にニトリルゴム製無塵手袋を装着時の発塵を示す。

 無塵服手袋自体の発塵は少ないが、装着や脱着時には、無塵服の袖部から相当な発塵が見られる。

 これは無塵服内部の作業者のシャツやセーターからの脱落繊維等が無塵服袖の絞り部に蓄積しており、これが脱着や装着動作で一気に放出されるからである。

 作業室内での手袋の脱着や装着は禁止行為である。

図12 無塵手袋からの発塵

 

13.不織タイプの拭き取り材からの発塵

 

 ●図13に不織タイプの拭き取り材からの発塵を示す。

 この拭き取り材は低価格であることから、非クリーンルーム作業室で低価格であることから広く用いられている。

 この拭き取り材を軽く擦り合わせると多量の繊維屑が放出されることが分かる。

 不織タイプの繊維には他にもコピー紙、ノート、ティッシュペーパー、段ボール紙などがある(●図14、●図15)。

 これらのすべては基本的にクリーンルームへの持ち込みは厳禁である。

 発塵が少ないクリーンルーム専用の拭き取り材を用いるべきである。

 無塵紙や無塵ノートは繊維間に樹脂を含侵させて繊維の脱離を防いでいるので当然ながら使用可能である。

図13 不織タイプの拭き取り材からの発塵

図14 普通紙からの発塵


図15 不織布からの発塵

 

 

3. まとめ

 

 今回紹介した発塵の動画からの画像は一例であるが、基本的な現象は取り上げている。

 また、基礎知識に加えてクリーン化の考え方を随所に書き示した。

 これらの画像がヒントとなり、実際に現場で見直してみる動機となれば幸甚である。

 今回、紹介しなかったが、靴下・セーター・段ボールなどの発塵や、作業動作や静電気関連の可視化について、まだまだ興味深いものが多くある。

 機会があれば紹介したい。

 

 

 

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