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テクニカルレポート
2015.05.11
最近のプリント配線板技術の動向
髙木技術士事務所

 

3.平滑面による接着

  絶縁基板の上の導体は信号の高周波化で表皮効果が顕著となり、平滑面での接着が特性向上のために重要となる。これについて2つのことが考えられる。

(1)導体(銅箔)への樹脂の接着

 銅張積層板は樹脂が溶融して導体(銅箔)に接着している。多層プリント配線板の内層においても導体である銅のパターンに樹脂が溶融して接着している。接着力を向上させるために、いずれも、導体表面を粗面化していた。しかし、高速、高周波化により平滑面の接着が求められ、低粗化面の処理法、平滑面の処理法が開発され、性能は向上している。

(2)樹脂面への無電解銅めっきの析出

 平滑な樹脂面に無電解銅めっきを密着性よく析出させることは困難で、次のような多くの開発事例がある。

a.樹脂表面を紫外線、オゾンなどで改質し、めっきをする方法(関東学院大学)6)
b.ポリイミドの化学的活性基生成によるめっき密着性向上の方法(甲南大学)7)ポリイミドの改質によるめっき方法(JCU)8)
c.樹脂内にナノ粒子を分散し、粒子の溶解で微細凹凸を形成する方法(ハリマ化成)9)
d.金属捕獲層を有するプライマー処理(微粒子界面)を行う方法(富士フイルム)10)
e.ポルフィリン骨格でめっきとの親和性ある層をコーティングする方法(Zetta Core)11)
f.フィラー入りポリイミド系の膜を樹脂面に形成し、親和性を向上させる方法(PI技研)
g.樹脂面に薄膜の活性基を形成、無電解銅めっきとの親和性を得る方法(日本ペイント)
h.S、Nを含む分子間接合剤処理によるめっきの密着性向上方法(メイコー)12)

 これらについて、一部で、製品への適用例もあるが、大規模の実用化は今後と考えられる。

(3)開繊ガラス布とレーザー対応ガラス布の開発 13)

 この処理は十数年前より実用化したものであるが、日本の独特の処理で、この方法により、ガラス繊維と樹脂の密着性が向上し、穴あけ性、絶縁性が飛躍的に改善された。さらに、前述の銅張積層板を用いたビルドアップ法の普及で、ガラス繊維の均一な分布が求められ、図9のようなレーザ加工に対応した極薄の開繊したガラス布が開発されている。

図9 ガラス繊維の均一な分布を持つガラス布(旭化成イーマテリアル)

おわりに

  以上、最近のプリント配線板についてビルドアップ法を中心に、概略を記述した。いろいろな意見があるが、筆者は技術開発に当たり、製品がユーザーに出た後、十分な信頼性をもつことが大切と考える。したがって、信頼性のある技術開発が重要であり、信頼性を保証する製造体制が企業にとって重要なものと考えている。

<引 用 文 献>

1)髙木:よくわかるプリント配線板のできるまで、日刊工業 新聞社、2011、P.54
2)髙木:よくわかるプリント配線板のできるまで、日刊工業 新聞社、2011、P.222
3)髙木:よくわかるプリント配線板のできるまで、日刊工業 新聞社、2011、P.243
4)髙木:よくわかるプリント配線板のできるまで、日刊工業 新聞社、2011、P.238
5)髙木:よくわかるプリント配線板のできるまで、日刊工業 新聞社、2011、P.240
6)清田、井上、田代、渡辺、本間:UV照射を前処理として用いたエポキシ系樹脂へのメタライゼーション、第22回エレクトロニクス実装学会講演大会講演論文集、18C-07、2008 
7)青木智美、赤松謙祐、縄船秀美、柳本博「フォトリソグラフィーおよび表面改質によるポリイミド樹脂表面への微細 銅回路形成」、マイクロエレクトロニクスシンポジウム予 稿集、2006
8)君塚:樹脂の表面改質によるめっき密着性向上のためのアプローチ、SURTECH & Coating Japan 2006.04
9)ハリマ化成:同社カタログ 
10)富士フイルム:同社カタログ
11)S.Shi、T. Wei、Z.Liu、W. Liu、B.Lita、C.Rhodine and W.Kuhr : Molecular Modification of PCB Substrates for Fine Line Patterning、Proc. MAP Conference 2008、2A1-4、Fukuoka、Japan、2008 12)宮脇、道脇、工藤、松野、森:ポリイミドフィルム上への直接メタライジング法による両面フレキシブルプリント配線板の開発、MES2012予稿、2A1-4、2012 13)髙木:よくわかるプリント配線板のできるまで、日刊工業新聞社、2011、P.236

 

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