4. 高速・低遅延を実現する通信インフラ
どれほど高性能なサーバがあっても、ネットワークが遅ければ意味がない。データセンターは高速・低遅延の通信インフラによって支えられている。
中心となるのは光ファイバである。光信号を用いることで、大容量データを高速に伝送できる。さらに、データセンター同士やインターネットの主要拠点を直接接続することで、通信経路を最適化している。
また、「インターネットエクスチェンジ(IX)」と呼ばれる接続点では、複数の通信事業者が相互接続し、効率的なトラフィック交換を行っている。これにより、無駄な経路を通らずにデータを届けることが可能となる。
通信において重要なのは「遅延」である。例えば、物理的距離が長くなるほど、信号の伝達時間は増加する。そのため、ユーザーに近い場所に小規模なデータセンターを配置する「エッジコンピューティング」が広がっている。これは自動運転やリアルタイム処理など、遅延に敏感なサービスに不可欠な技術である。
AIサーバに使用されるプリント配線板は、伝送損失を少しでも小さくするための工夫が実施されている。表1はプリント配線板に関係する伝送損失に関する式である。伝送損失は、大きく分けて”導体損失”と”誘電損失”の総和で表される。

表1 プリント配線板の伝送損失の式
導体損失は、主にプリント配線板の銅箔による抵抗が想定され、引き剥がし強度を出すために銅箔面を粗しているが、これが導体損失の要因となる。
一方、誘電損失は周波数があがれば大きくなるため、少しでも誘電損失を小さく抑えるために材料の比誘電率や誘電正接を小さくすること必要となる。
とりわけ高周波領域では、導体損失の比重が増大し、銅箔表面の微細な粗さが波形劣化や反射損失に直結する。つまり、AIサーバ用プリント配線板の性能向上は、単に樹脂の低誘電率化や低誘電正接化だけでなく、銅箔表面の平滑化をどこまで進められるかにかかっている。
誘電損失は材料樹脂の特性、すなわち誘電正接(Df)に依存し、材料選定によって大きく左右される。2)一方、導体損失は配線金属、すなわち銅箔の表面状態に強く依存する。
高周波電流は表皮効果により導体表面の数μm領域に集中して流れる。このため、銅表面の凹凸が大きいと図2に示すように電流の経路が細かく折れ曲がり、実際の伝送距離が長くなる。

図2 プリント配線板の断面(銅箔と基材の状態)
これが抵抗成分の増大、すなわち導体損失の主因である。特に、銅箔表面の粗さは導体損失を大きく左右し、AIサーバのバックプレーンや高速インターコネクトにおいては「1dBの違い」が性能ボトルネックになる時代である。
30GHz帯以上では、表面粗さRaの違いが数dB単位の挿入損失差として現れる。この影響はAIサーバや高速通信機器のバックプレーン配線では無視できず、性能限界を決める重大因子となる。
5. 運用とセキュリティ
データセンターは単に設備が整っているだけでは成立しない。高度な運用管理が不可欠である。目に見えない技術が重要である。
近年では「DCIM(Data Center Infrastructure Management)」と呼ばれるシステムが導入され、これはサーバなどのIT機器と、電力・空調などの施設設備を統合的に可視化・管理し、最適化するシステムである。
電力、温度、機器状態などをリアルタイムで監視しており、異常の予兆を早期に検知し、トラブルを未然に防ぐことが可能となる。
さらに、AIを活用した運用最適化も進んでいる。例えば、負荷状況に応じてサーバ配置や冷却を自動調整することで、効率と信頼性を両立する。
セキュリティも極めて重要である。サイバー攻撃への対策はもちろん、物理的な侵入防止も徹底されている。入退室管理、生体認証、監視カメラなど、多層的な防御が施されている。データセンターは「データの要塞」とも呼ばれる所以である。
6. 拡大する需要と今後の方向性
データセンターの需要は急速に拡大している。その最大の要因の一つが生成AIである。AIモデルの学習には膨大な計算資源が必要であり、それを支えるために大規模なデータセンターが求められている。
一方で、電力消費の増大は大きな課題である。そのため、再生可能エネルギーの活用や、省エネルギー技術の導入が進められている。寒冷地にデータセンターを設置し、外気を利用して冷却する取り組みもその一例である。
さらに、都市近郊に分散配置されるエッジデータセンターや、モジュール型の小規模データセンターなど、多様な形態が登場している。これは、用途や地域に応じて最適なインフラを構築する流れといえる。
データセンターは、私たちの目には見えにくい存在である。
しかし、その内部では高度な技術が緻密に組み合わされ、24時間365日、止まることなく稼働し続けている。電力、冷却、通信、運用など、それぞれの技術が支え合うことで、デジタル社会の基盤が成り立っている。
今後、AIやIoTの進展により、データセンターの重要性はさらに高まるであろう。見えないインフラでありながら、社会のあらゆる活動を支える存在でもある。それがデータセンターの本質である。
<参考資料>
1)東京電力パワーグリッド株式会社,“世界を魅了するINZAIの激増する電力 需要を支える挑戦”
https://www.tepco.co.jp/toudenhou/pg/1668074_9043.html
2)青木正光,“データセンターが牽引するプリント配線板技術の転換”エレクト ロニクス実装技術 Vol.42 No.6 pp24〜pp28(2026)
- 会社名
- 特定非営利活動法人 日本環境技術推進機構
- 所在地

-
真空リフロー、N2リフロー、エアリフローのことなら、エイテックテクトロン(株)にお任せください。フラックスレス真空リフロー装置販売開始!エイテックテクトロン株式会社
-
独自の加工技術とノウハウで様々な材料にチャレンジ 〜色々なアイデアを生み出して研究者をサポート〜 ムソー工業株式会社 代表取締役 尾針 徹治 氏Gichoビジネスコミュニケーションズ株式会社
-
話題のGlass PKG実装技術の動向 〜先端電子部品への応用と 最新のCuダイレクトめっきGWCについて〜 Grand Joint Technology Ltd 大西 哲也(T. Onishi)Gichoビジネスコミュニケーションズ株式会社











