3.食品中の放射性セシウム検査法
1.分析方法の概要
放射性セシウム(Cs-134及びCs-137)を対象とした、その前処理方法は『文科省編放射能測定法シリーズ24緊急時におけるガンマ線スペクトロメトリーのための試料前処理方法』、定量にはゲルマニウム半導体検出器(及び同等機種)を採用した方法である。
ゲルマニウム半導体検出器はエネルギー分解能が高く、核種判定が確実に実施できることから、誤検出などを防止し、放射性ヨウ素、セシウム以外のγ線核種分析も可能な装置である。なお特徴は次の通りである。
●γ線のエネルギー分解能が非常に高い(約2keV)
●γ線スペクトルによる核種同定に有効
●大がかりな遮蔽体を使用することでバックグラウンドを大幅に低減した低濃度分析が可能
●液体窒素による検出器の冷却によりノイズの少ない分析が可能
装置の外観は図1の通りで、本体上段の鉛の遮蔽体の中に試料を入れ、下部にある検出器で測定する。下段は、ノイズを抑え感度良く分析するために、検出器を冷却するための液体窒素用の容器となっている。なお、一般的な試料容器としては、検出部を覆うような特殊な逆凹型をした2Lのマリネリ容器(図2、図3)、1Lの密閉式タッパー容器、直径50mm(100mL)のU-8容器(図2)の3種類が用いられることが多い。校正は、それぞれの容器で標準を作成して行われる。得られるスペクトルは図4の通りで、横軸がエネルギー(keV)またはチャンネル、縦軸が信号強度(CPS)となっている。図4の結果は、Cs-134及びCs-137が約1500Bq/kg、70Bq/kg程度のK-40のピークもあることがわかる。測定時間は要求される検出限界にもよるが、10Bq/kg程度であれば、1000~1500秒程度である。比重が軽い試料は、容器への充填量が少なくなるため時間を要する。なお、食品の種類により試料調製が必要で、牛乳などの液体物であればマリネリ容器に直接入れることができるが、葉菜であれば20秒程度の水洗後、包丁などで細切りにして容器に充填する。均一に充填されないとばらつきの原因になるので注意を要する。
図1 Ge半導体検出器装置と検出部
図2 U-8容器(左)と2Lマリネリ容器(右)の外観
図3 試料を充填した状態
図4 Ge半導体検出器によるスペクトルの例
2.暫定マニュアルから新マニュアルへの主な変更点
①前処理法について
媒体による方法の指定が追加された。お茶は10倍量の熱水(90℃)で60秒間抽出し、40メッシュ相当のふるいなどでろ過した浸出液を測定する。乾燥きのこなどについては、できるだけ飲食に供される状態で検査する観点から、乾燥状態ではなく、日本食品標準成分表などの水戻しによる重量変化率を参考して有姿の状態にて測定する。
②検出結果の取り扱い
測定結果がND(Not Detected、不検出)であった場合は、Cs-134とCs-137の検出限界値の和が基準値の1/5以下であることを確認する。また結果が、基準値の75~125%の範囲で検出された場合は、X/√(σ2134+σ2137)≧10を確認し、満足できない場合は測定時間を伸ばし再測定する。
③検出結果の取り扱い
有効数字は2桁で表示し、NDとなった場合は検出限界を明記し、<20Bq/kgのように表示する。その場合、定量/検出下限などの言い方ではなく、検出限界に統一する。
- 会社名
- 日本環境(株)
- 所在地
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