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テクニカルレポート
2025.05.26
手軽にプラズマ処理を評価 『PLAZMARK』大気圧プラズマ用マーカータイプ
(株)サクラクレパス
津村 清子、 大城 盛作

③大気圧プラズマ用マーカータイプの特徴と利点

新たに開発したマーカータイプは、ペイントマーカー形状をしており、評価したい場所に直接インキを筆記 ・ 塗布するという点で使用方法が試験紙と大きく異なる。マーカータイプは、微細部や曲面、狭小隙間への塗布が容易であり、現場でのオンサイト評価に適している。例えば、複雑な形状をもつ部品の表面処理効果や、装置内部の特定個所のプラズマ照射状態などを簡便に評価することができる。マーカータイプは、手軽に持ち運びが可能であり、その場で塗布してすぐに評価できるため、研究開発や製造ラインにおけるトラブルシューティングなど、迅速な対応が求められる場面で特に有効である。試験紙タイプが広範囲の分布評価に適しているのに対し、マーカータイプは局所的な評価に強みを発揮する。

ただし、マーカータイプは手書きであるため、塗布の均一性においては試験紙タイプに劣る場合がある。そのため、評価は目視によるゼロイチ判定が主となる。マーカータイプは、PET、銅、ポリイミド、ガラスエポキシ基板、テフロンテープ、硬質塩ビ、ガラス、アルミ、PP、PE、PC、アクリル、PS、ABS、ナイロンなど多様な基材に筆記可能であり、インキには下地の色の影響を受けにくいよう隠蔽剤が配合されているため茶褐色のポリイミドや黒色部品上でも視認性が確保されている(図5)。試験紙タイプのように色差計を用いた厳密な数値管理は難しいものの、簡便さと携帯性がマーカー型の最大の利点である。

図5 種々の基材に筆記した時の発色と変色見本

 

④『PLAZMARK』とダインペン(濡れ試薬) 

4-1. ダインペン(濡れ試薬)

プラズマ処理の効果を評価する代表的なツールとして、ダインペンが使われている。これはペイントマーカーの容器に、特定の表面張力値をもつインキが充填されたペンである。様々な表面張力値のペンがセット販売されており、評価したい表面張力の範囲に合わせて複数種類を使い分ける。

使い方は、評価したい固体表面に線を筆記し、線が所定の時間(概ね数秒)内に液滴状にならず線を保っているかどうかを目視で確認する(図6)。

図6 ダインペン

 

線を保っていれば、その固体の表面エネルギーは使用したダインペンの表面張力値以上と判断され、線が液滴状になった場合は、使用したダインペンの表面張力値未満と判断される。この作業を複数の異なる値のダインペンで繰り返すことで、対象物の表面エネルギーのおおよその範囲を絞り込んでいく。

ダインペンは、簡便に表面エネルギーを推定できるため、接着性やコーティング性の向上を目的とした表面処理の効果確認目的で広く用いられている。濡れ試薬は、このインキがボトルに封入されたもので、刷毛等で塗布して同様の評価を行うものであり、本質的に同じものである。

このダインペン(濡れ試薬)での評価は、インキのはじき具合を作業者が判断するためある程度の熟練が要求され、測定結果にばらつきが生じやすいという課題がある。また、インキが乾燥しないため曲面上で流れたり、吸収性の材質に浸透して評価できないという課題もある。

 

4-2. 『PLAZMARK』とダインペン(濡れ試薬)の違い

『PLAZMARK』の試験紙タイプおよびマーカータイプとダインペンを比較したとき、まず大きく異なる点が評価対象である。ダインペンは、正確に言えばプラズマ処理とは無関係に固体の表面エネルギーを評価しているのに対し、『PLAZMARK』はプラズマ中のラジカルが起こす変色によりプラズマ処理工程を診断・評価する。すなわち『PLAZMARK』は、プラズマが実際に照射されたかどうか、その時の照射強度がどうだったのかというプロセスのモニタリング ・ 評価を目的としたツールである。

これを身近な料理で例えると、ダインペンや濡れ試薬による表面エネルギー評価は、調理後の目玉焼きの半熟具合や焦げ具合といった焼き加減の評価ということができる。対して『PLAZMARK』は、フライパンの温度や加熱時間といった調理工程の評価に例えられる。

『PLAZMARK』の試験紙タイプおよびマーカータイプとダインペンで異なる点として、設置可能個所がある。ダインペン(濡れ試薬)で評価できる表面が水平な面のみであるのに対し、『PLAZMARK』試験紙タイプは平面であれば水平でなくても貼り付けて評価が可能であり、『PLAZMARK』マーカータイプは平面だけでなく曲面や試験紙タイプが貼り付けられない微細部でも筆記して評価が可能である。

このように、『PLAZMARK』とダインペンは、見た目や筆記 ・ 塗布するという使い方は同じであるものの、それぞれ目的や設置可能個所が異なる評価ツールであるため、一概にプラズマ処理の管理ツールと言っても利用する際には特徴に応じた使い分けが必要となる。固体の接着性やコーティング性が実際に向上したかどうかを評価したい場合にはダインペンが適しており、プラズマ処理工程自体の評価、いわゆるプラズマ診断として照射範囲や分布、処理の均一性や安定性を評価したい場合には『PLAZMARK』が適している。

さらに、気になる場所に自由にインジケータ線を描いて迅速・簡便な評価を重視する場合は『PLAZMARK』マーカータイプが最適であり、色差計で数値評価して解析する場合は試験紙タイプの『PLAZMARK』ロングラベルやシート型が適している(表1)。場合によっては、これらを複数併用することで、より包括的なプラズマ処理のモニタリング ・ 評価が可能になると考えられる。

表1 『PLAZMARK』とダインペン(濡れ試薬)の比較

 

 

会社名
(株)サクラクレパス
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